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「地面師たち」では、なぜ大手企業が騙されてしまったのか?
昨年一大ブームとなった「地面師たち」。
多くの人はNetflixで見たのかと思いますが、私はNetflixに加入していないため、流行に乗れていませんでした。
そんななか、オーディブルの無料キャンペーンがあり、その中に「地面師たち」を発見!
興奮しながらすぐに聞き始めました!
あらすじ
辻本拓海は大物地面師・ハリソン山中と出会い、彼のもとで不動産詐欺を行っていた。メンバーは元司法書士の後藤、土地の情報を集める図面師の竹下、土地所有者の「なりすまし役」を手配する麗子の五人。彼らはハリソンの提案で泉岳寺駅至近にある市場価格100億円という広大な土地に狙いをつける。一方、定年が迫った刑事の辰は、かつて逮捕したが不起訴に終わったハリソン山中を独自に追っていた――。次々と明らかになる地面師たちの素顔、未だかつてない綱渡りの取引、難航する辰の捜査。それぞれの思惑が交錯した末に待ちうけていた結末とは? 実在の事件をモチーフに描いた新時代のクライムノベル。
ちなみに、元ネタとされているのは「積水ハウス地面師詐欺事件」です。
この事件、私は「地面師たち」が話題になる前からwikiで読んでいたので、前々から気になっていました。
以下事件の概要(Wikipediaより)
積水ハウス地面師詐欺事件(せきすいハウスじめんしさぎじけん)は、2017年6月1日に、積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた詐欺事件である[1][2]。
事件の舞台は、東京都品川区西五反田2丁目22-6、山手線五反田駅から徒歩3分の立地にある旅館「海喜館(うみきかん、かいきかん[4])」である[5][6]。不動産業界ではかねてより注目の案件だった[6]。積水ハウスは所有者を名乗る女と、約600坪の旅館敷地を70億円で購入する売買契約を締結。6月1日に売買の窓口となった「IKUTA HOLDINGS株式会社」(千代田区永田町)に所有権移転の仮登記、さらに同日、積水ハウスに移転請求権の仮登記がなされ、同日、売買代金70億円のうち63億円を支払い、直ちに所有権移転登記を申請した。 しかし、売買は成立しなかった。6月24日、「相続」を原因に都内大田区の2人の男性(所有者の実弟とされる)が所有権を移転。7月4日に登記。所有者は死亡していた[7][1]。
登記所が積水ハウスの売買予約に基づく仮登記を認めず、2人の男性に所有権の移転を認めた。この時点で、63億円を支払った積水ハウスは、地面師グループに騙されたことになる。なお、騙されたことを認め公表したのは8月2日だった[7][1]。なお、同時期に旭化成グループが正式な所有者から土地を取得しており、跡地には高層マンションが建設された[注釈 1]。
天下の積水ハウスが、70億円ものお金を騙し取られたということで、当時話題になったのを覚えています。
「地面師たち」のストーリー詳細は、原作小説やドラマ、オーディブルで追っていただければと思います。
さて、私が「地面師たち」から得た教訓は・・・
「思い込みって怖い」 です!
実際の事件では、以下のような経緯があったようです。
土地購入の承認を得るための稟議書承認の際、4名の回議者が飛び越され、予め現地視察をしていた社長が先に承認した。回議者全員が押印したのは手付金支払後だったとも報道された[7]。当時不動産部長だったKは、「この取引はおかしい」と言い続けたが、阿部俊則社長や東京マンション事業本部長の常務らは、取引相手のネガティブな情報を伏せ、最終的にKに捺印させた。Kの証言では、取引前の2017年5月10日に積水ハウス本社法務部宛に送られてきた内容証明郵便についても、怪文書の類とみなし、不動産部には伝えなかったという[11]。
積水ハウスが手付金支払いと仮登記を行った後に、真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」などと記載された内容証明郵便4通が届けられ、さらにその一通には印鑑登録カードの番号が記載されていたにもかかわらず、積水ハウスはこれらを土地売買を知った者による妨害行為と思いこんで、偽の所有者から内容証明郵便を送っていない旨を記載した確約書を入手する程度の対応しか取らなかった[7]。
真の所有者からの内容証明郵便を妨害行為と思いこんだ積水ハウス側は、これに対応するため、残代金の決済日を約2か月早めて6月1日にした。残代金支払日の6月1日には、真の所有者の通報により現地に来た警察官は、積水ハウス社員に対して警察署への任意同行を求めた。これは残金支払手続中のことで、連絡を受けた積水ハウス側はこれも妨害行為だと思い、そのまま支払手続を完了した[7]。
「地面師たち」でも全く同じではないですが、似たような展開がありました。
要するに、いち早く取引を成立させるために、不都合な情報も自分たちにとって都合よく思い込んでしまったんですね。
特に、「あなたは騙されてる」と情報があったのに、騙している本人に「『騙されてる』なんて言ってないですよね?」と確認している辺り、面白くてなりません。
これを心理学では「認知不協和」と呼びます。
認知的不協和(にんちてきふきょうわ、英: cognitive dissonance)とは、人が自身の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された。人はこれを解消するために、矛盾する認知の定義を変更したり、過小評価したり、自身の態度や行動を変更すると考えられている。
積水ハウスのような大企業で多くの人間が関わるような大プロジェクトでも、ハマってしまえばあっさりと騙されてしまいます。
考えてみれば戦時中の日本軍も、不利な情報はとことん都合よく解釈して、破滅の道を辿りました。
大企業や軍部のような社会的地位や知識があっても、あとから思えばなんで気付かなかったんだ、という事態になることがあります。
ましてや個人単位では絶対に正しい道を選択できる、なんてことはありえないと思いますし、「自分は間違わない」と思っている人こそ認知不協和の真っただ中にあるように思います。
今思えば、私が投資で失敗した流れにも少なからず認知不協和がありました。
投資でもなんでも、自分に都合よく解釈しがちです。
しかも自分では自覚無く、泥沼にハマっていくところが恐ろしいところです。
ただ、認知不協和自体は悪いものではなく、心の平穏を保つために必要なメカニズムでもあります。
客観的な資料で検証したり、信頼できる人に相談するのか認知不協和対策の第一歩です。
積水ハウス、バカだなあと笑うのではなく、明日は我が身として合理的な判断ができるように気をつけましょう!