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【全史】第13章 区切りの80年、前期Vへ/1980(昭和55)年


(1)前評判は「打線は上々、投手陣は…」

 1980(昭和55)年がやって来た。オリオンズファンにとっては「0」がつく、大切な大切な区切りの年である。今までオリオンズの歴史にお付き合いいただいた方は、お気づきになるだろう。
・1950(昭和25)年…毎日オリオンズとしてリーグ優勝&日本一
・1960(昭和35)年…大毎オリオンズとしてリーグ制覇
・1970(昭和45)年…ロッテオリオンズとしてリーグ制覇
西暦で「0」、元号昭和で「5」の年は、リーグ制覇を果たしているのである。プロ野球ファンはひいきチームの「我田引水」で期待してしまうことをご理解いただきたい。1974(昭和49)年に優勝しているから、このジンクスは破れている…という声もあったが。

 1月10日、川崎球場での若手主体の自主トレーニングから始動した。山内監督が注目したのは、若手の打者陣だった。「新ミサイル打線」の陣容は固まりつつあるが、張本40歳、白37歳とフルシーズンの活躍には不安がある。加えて飯塚35歳、有藤34歳、高橋博34歳とベテランの域に達してきていた。リーも32歳、弘田と井上も31歳。レギュラーで20代はレオン(28歳)と水上(23歳)の二人だけだった。
 「こんなに若手に打撃センスが良いのが揃っているのか」と就任時に驚いたという山内監督。水上の他、6年目の28歳芦岡、2年目の27歳落合、8年目の26歳新谷、そして巨人から移籍した27歳庄司らに期待を寄せ、自主トレから指導に入った。山内監督は「この若手の中からレギュラーを争うような選手が出てくれば、新ミサイル打線も完成する」と話した。

 15日から主力も自主トレに加わり、2月1日には川崎球場でキャンプイン。6日に鹿児島へ移動し、6日から鹿児島鴨池球場で二次キャンプが始まった。
 キャンプの注目は、前人未到の3000本安打にあと39本と迫っている張本だった。前年読売で77試合の出場に終わっていたが、左眼が中心性網膜炎にかかり、視力が落ちたことと右足太ももを痛めたことが原因だった。キャンプでは、大事を取って全力では走らないように注意している状態だった。それでも、精力的に体を動かし、若手にもアドバイスを送った。日本ハム時代は「リズムが狂う」と断固として拒否していた指名打者も受け入れるつもりだ。
 球団は「劇的瞬間はいつか? 3000本安打達成記念クイズ」を実施し、達成日を当てるクイズを企画するなど後押しした。

 オープン戦に入り、山内監督は芦岡、落合、庄司ら若手を積極的に使った。そんな時、アクシデントが発生した。守備中、落合が得津と衝突したのだ。落合は「左ヒザ打撲」で全治1ヶ月だった。ただ、山内監督は落合に対しては「インコースが打てない」と判断し、二軍行きを決断していたタイミングだった。開幕一軍には、芦岡と庄司の2人が登録された。

 やはり、不安があったのが投手陣だった。山内監督もキャンプでは、ブルペンに足を運ぶ回数が増えていた。17勝12敗のエース村田の他、先発は昨シーズン9勝11敗と負け越したものの一本立ちした仁科、9勝4敗の奥江、7勝11敗の水谷の4人に安木、巨人から移籍した小俣、社会人で経験豊富な2年目の福間の左腕トリオが先発の穴とリリーフを務める。抑えは6セーブの倉持でメドは立った。若手では、一昨年高卒ルーキーながら一軍で11試合に登板した広木と昨シーズン4試合に登板した梅沢の3年目若手コンビや移籍組の望月、平田、田村らに期待が寄せられた。

 オープン戦を5勝7敗1分で終え、山内丸の2年目は張本の偉業へのカウントダウンとともに始まった。

(2)開幕直後の「ボール疑惑」

 4月5日、西宮での阪急3連戦で幕を開けた。オリオンズは先行したものの、5年連続開幕投手の村田が6回裏に逆転を許す苦しい展開。2-4で迎えた9回表、3点を奪って逆転に成功。9回裏も村田がマウンドに上がるもピンチを招き倉持がマウンドへ、しかし、同点タイムリーを許す。その後は断ち切ったものの、5-5の引き分けで終わった。張本に1号が飛び出した。
 翌6日の2回戦は仁科が先発。打線は前日に続くリーの2号などで中盤に加点。9回裏に1点を失ったものの、仁科が完投を飾り、5-2で今シーズン初白星を挙げた。続く7日の3回戦も6-6で引き分け。開幕3連戦は1勝2分スタートとなった。

 8日からは日生での近鉄3連戦。8日の1回戦で事件が起こった。初回、打線が3点を先行したものの、先発水谷が大乱調。2本の満塁弾を被弾すると2番手田村も3ランを浴び5回裏で5-13と大量リードを許す。その5回裏、守備中のオリオンズナインがボールに公認印が無いことに気づいた。

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