創作スタイルの変化~エンタメから文芸へ
ようやく秋らしく、ずいぶんと涼しくなりましたね。
さて、今回は自分の小説の創作スタイルの変化について、最近気づいたことがあったので、それについて書いて行きたいと思います。
私の以前の創作スタイル
私は学生時代からずっと小説を書いて来ましたが、当時から40代ぐらいまでは、まずキャラクターありきの創作スタイルでした。
キャラクターを最初に作って、そこから物語が展開して行く形で、作品は常にキャラクターのためにありました。
キャラクターたちは、いつも勝手に私の頭の中で動き回っていて、私はただそれを文字にして行くだけでした。
もちろん、長い物語にはそれなりにプロットはありますが、書いて行くうちにキャラクターたちの細かい行動は変わって行き、中には私がどれだけ生かしてやりたいと思っても、自ら死に突っ込んで行くような人物もいたりしました。
けれど、その当時はお話を書き進めるのがとても楽しく、パソコンなどない時代に手書きでルーズリーフに書くという、今ならなかなか大変な作業も、全然苦にはなりませんでした。
創作スタイルの変化
そうしたスタイルが変わったのは、たぶん『神の眠る星』が完結したころ――ですから、40代半ばぐらいからでしょうか。
いえ、『神の眠る星』を始める前にも、少しその兆候はありました。
それ以前の物語では、キャラクターをイラストにして、髪や目の色を決めて、名前も設定も、まるで水が湧き出るようにどこからともなくやって来ていました。
ですが、『神の眠る星』では、イラストを描くのが面倒で描かず、ざっくり髪や目の色を決めただけでした。名前を付けるのも、とても苦労した記憶があります。
それでも、このシリーズは楽しく書き進められ、読者さんたちの応援もあって、なんとか完結に至ることができました。
ですがそのあと、私はキャラクターを以前のように思い浮かべることができなくなりました。
物語自体は浮かぶのだけれども、以前のようにキャラクターを作ること、物語をキャラクターの意志で進めることができなくなり、それに対して熱意を持つことが、できなくなってしまいました。
そして次第に、創作そのものにも気持ちが向かなくなって行きました。
創作に対する情熱の変化を、私はずっと、作品が誰にも読まれなくなったからだと思っていました。
サイトが不定期更新になると、当然ながら訪問者の数も減って行きます。
しかもこのころ、オンノベ界隈は小説投稿サイトが増え、小説を発表したい人たちは皆、自分のサイトを作るかわりにそちらへ投稿するのがデフォルトな状態でした。更にいうとラノベの全盛期でもありました。
ですが、投稿サイトになんとなく苦手意識を持っていた私は、完全にそちらに移行することなく、一部の小説だけをそちらに投稿するといったことをやっていました。
そして、移行した小説たちは、まったく読まれず、感想や星・イイネをもらうこともなく、ただ埋もれて行きました。
そんなこんなで、私は次第にファンタジーなどの以前は活動の中心に据えていたジャンルを書かなくなりました。
また、毎日文章を書かなくなったことで、長編も書けなくなり……結局、短いホラーや、廃墟を舞台にした短編を、ポツポツとpixivや貸し本棚さんで公開するのみになりました。
更にそこから、「文章はもういい。私は絵をやるんだ!」とイラスト中心の活動に移って行くわけなのですが――まあ、それはおいておいて。
とにかく、「小説を活動の中心からはずそう」と決意するに至るのでした。
変化への気づき
自分の創作スタイルが、単にジャンルを変えただけなんだ――と気づいたのは、ごく最近のことです。
岡田斗司夫さんのYouTubeチャンネルで、『火垂るの墓』を解説するメンバー限定動画が、期間限定で無料公開されました。
面白そうだったので、私はそれを見たわけです。
動画は、『火垂るの墓』そのものに対する見方も、ガラリと変わってしまうような内容だったんですが、その中で、岡田さんが物語のジャンルについて、こう言っていたんです。
「キャラクター主体で見せるのがエンタメ、ストーリー主体で見せるのが文芸だ」と。
ここで私は、えっ?! ってなりました。
そんなふうに考えたことがなかったからですが、そもそも、私の視野には「文芸」というジャンル自体が入っていませんでした。
なんというか、「文芸=教科書に載るような、小難しい話」というイメージしかなかったのです。
ですが、岡田さんのこの発言で、「エンタメと文芸の違いって、そういうことなの?」という思いが湧きました。
動画を見終わって、改めて考えてみました。
実のところ、岡田さんのこの解説動画自体が、「世間一般はこの映画をエンタメ(キャラ主体)として見ているが、高畑勲は文芸(ストーリー主体)として描いて(演出して)いる」というものでした。
そして、「どこに主眼を置くかによって、物語の見え方が全然違う」ということを語った動画でもありました。
ああ、なるほど……と思いました。
私はずっと、エンタメを書き続けて来て、それがある時から自分でも意図しないままに文芸に変わったので、それが理解できずに、ずっと困惑したり苦しんだりし続けていたのだなあ……と、わかったのです。
今私が書きたいのは、キャラクターではなくて、物語の方なんだな、とも思いました。
もちろん、技術そのものが劣化してしまっているのも本当だと思います。
けど、物語を主体にしたいのに、キャラにばっかり着目していたら、そりゃあ、思うような形にならんわな、とも理解できます。
あと、これは私のいる場所がオタク界隈だから、というのもあるとは思いますが、なんとなく「小説はキャラを書いてなんぼ」的な考えが、私の中にはありました。
なので、たとえば「人物よりも廃墟の風景を書きたい自分は、おかしい。こんな話は、きっと誰にも受け入れられないだろう」とか、そんなふうに思っていた部分もあります。
てか、これはイラストに活動を移したあとも、けっこうありましたね。
たいていの人は、「イラスト描きたい」「絵を描きたい」というと、キャラ絵を描くじゃないですか。
私自身も、子供のころにイラスト描き始めた時は、キャラ絵、それも自分の好きなキャラを描いたりしてましたからね。
でも、この何年か、私が描きたいのは風景とかスイーツとか、そういうものなんですよね。キャラ絵はあんまり描きたくない。
けど、たとえばSKIMAとかだと、キャラ絵を描きたい人と欲しい人のマッチング、とかなので……キャラ絵を描くしかない……みたいな感じになってました。
まあ、そうやって無理して描いたキャラ絵なんて、誰も買ってくれないんですけどね(;^ω^)
ともあれ、岡田さんの動画を見たおかげで、いろいろ理解できました。
そして、なんとなく「小説を書いていてもいいんだ」という気持ちが湧いて来ました。
今後のことも、少しだけ。
今後についても、少しだけ考えてみました。
とりあえず、小説は細々とでも書いて行こうと考えています。
スキルという面でも、小説というか文章の方が書いている年数が長いし、実績になるかは微妙ですがPBWのGMやったり、エロ小説書いてお金もらったりしたことはあるので、絵よりはマシだろうか……とも思いますし。
今年の夏ぐらいからpixivで連載中の『追放された聖女は旅をする』も、少しずつでも続けて行きたいと思ってます。
一応昨日、小説投稿サイト「ネオページ」に登録して、そちらにも投稿してみました。
ネオページは、もしかしたら収益が付くかもしれないので、自分的には「これまで登録したことなくて、お金になるかもしれないサイト」と考えて登録しました。
なんとなく「絵か文どっちかに決めないと」と思い込んでいましたけど、考えてみれば、オタク界隈はどっちもできて、やっている人ってけっこういます。
いや、オタク界隈だけではなくって、小説家で占い師の方とか、占い師でカウンセラーで音楽家って方も、知っています。医師で小説家って方は、有名な作家さんでもお見かけしますよね。
結局、無理に一つに決めることはなくて、やりたいことをやりたいようにやればいいのかな……と、思ったことです。
そんなわけで、これからも、絵も文も自分に無理のない範囲で、やって行こうと思うのでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!