2つインフレの正確な理解と対策
■前置き
巷を騒がせるインフレですが、コストプッシュインフレ(以下CPインフレ)とディマンドプルインフレ(以下DPインフレ)を混同する、或いは簡単に「どちらもインフレには違いない」と言って区別しなかったり、と千差万別な反応がなされています。
ついこの間、我が国はデフレだったのですが、デフレには警戒感が無く30年以上放置したのに、「インフレにはこれほど一喜一憂するのか」と個人的には滑稽に感じてしまいますね。
さて、CPインフレとDPインフレを混同するとどのような判断を下すことになるのでしょうか?過去に何度か説明していますが、再度説明します。
以下の対策案は日本を前提としています。
■コストプッシュインフレ(CPインフレ)
CPインフレは、消費の拡大以外の要因、例えば輸入物価の高騰によって物価が上昇する現象です。具体例としては、戦争や災害により輸入石油が高騰し、その結果、石油製品の価格が上昇する現象を指します。
この状況では、可処分所得が変わらないまま物価が上昇するため、需要者の購買力が落ち、商品が欲しいのに買えない(需要が無効になる)状態、つまり貧困に陥ります。
○貧困層への問題を解決するには
貧困層への減税や給付金対策により、富裕層との金銭的格差を是正し、貧困層の購買力を上昇させる必要があります。
■ディマンドプルインフレ(DPインフレ)
DPインフレは、需要(消費)の拡大に伴う物価上昇です。需要が満たされることを有効需要と言います。これは、商品を躊躇なく購入できる、つまり購買力が上がっている状態を指します。そのためには、需要者の可処分所得が増大しなければなりません。
これは理想的な好景気状態ですが、一部問題もあります。それは、購買力が増大しない貧困層が存在し、物価上昇と共に彼らの生活が苦しくなるという点です。
○貧困層への問題を解決するには
貧困層への減税や給付金対策により、富裕層との金銭的格差を是正し、貧困層の購買力を上昇させる必要があります。
■貧困層への問題対策は同じ
CPインフレとDPインフレの貧困化問題の解決策はどちらも同じです。これが「どちらもインフレだから」と区別しない原因になります。
しかし、貧困層への対策が同じであっても、インフレ対策そのものは真逆になるため、CPインフレとDPインフレを混同することは大きな間違いです。
■CPインフレ下で、DPインフレ対策を行った場合
CPインフレ下での対策は利下げや減税が主ですが、DPインフレ下での対策は真逆の利上げや増税となります。CPインフレ下で利上げを行うと、企業は借金の返済利子をリスクと考え、銀行からの借入を控え、企業活動を縮小します。これは倒産や休業の原因となります。
■DPインフレ下で、CPインフレ対策を行った場合
DPインフレ下での対策は利上げや増税が主ですが、CPインフレ下での対策は真逆の利下げや減税となります。好景気な状態で利下げを行うと、過剰投機が起こり、バブル崩壊の危険性が生まれます。
■結論:貧困層対策と、CP・DPインフレの各対策
CPインフレとDPインフレを混同することは避けるべきです。
CPインフレとDPインフレの対策が真逆であること、
その一方で、貧困層へのインフレ対策はCP・DPインフレどちらでも同じであること、
これを忘れないでください。
これらの正確な理解が、経世済民として正しい政策につながるのです。