現代税論.1 信用創造を前提とした税
消費税はこの日本において、実に重い足跡を残す悪税として未来永劫語り継いで欲しいものです。
■「税は財源ではない」ということは「信用創造」から明らか
税を語る上で大前提としなければならないのは、現代は「税は財源ではない」という事実です。その事実は「信用創造」で理解できます。
上の図解は「信用創造で貨幣が創造され、徴税で貨幣が消滅する過程を示した図解」です。
・シーソーの右側で民間に貨幣+10兆円を発生させるためには、左側の政府に-10兆円の赤字を積み上げなければならない(図1.2.)。
・一方で、民間の+10兆円を徴税すれば、政府の-10兆円が相殺されて、0円となり、シーソーが水平になります(図3.4)。
この「信用創造」の仕組みと機能を知れば、「徴税」は「貨幣を消滅させる行為だ」ということは明白です。
そして、それは、「消滅させた以上の『貨幣発行・財政支出・信用創造』をしなければ経済成長しない」ということに他なりません。
日本の経済成長ができない「失われた30(40)年」の大不況は「消滅させた以上の貨幣を信用創造しなかった」為に起こった、人災です。
救い難いのは、政府はこの誤りに気付いている現時点でも「前例踏襲」と「己の無謬の証明」のため、誤りを認めず、「緊縮財政」をひた走って、多くの国民を消滅させています。
本来、死ななければならない消費税を政府が堅持しているがために、死ぬ必要が無い国民が「死んでいる」し「生まれてこない」わけです。
これが、消費税が絶対悪であるが所以です。
■過去と現在の税の相違
信用創造が前提でない時代、「金本位制」が当たり前の時代は「税」は勿論「財源」でした。そして、昔の政府も経済成長をさせるために財源以上の財政支出を行わなければならないわけです。
その手段が信用創造でないとするなら、その財源以上の富を生み出す方法は以下の通りになります。
・農業により無から富を生み出す。
・金鉱山で無から貨幣を生み出す。
そういったゆっくりとした経済成長以外に、国民の生活を豊かにする経済成長の方法がありました。
それが
・「他国からの略奪」であり「戦争」です。
「第一次・二次世界大戦」やそれ以前の「ナポレオン戦争」など。いや、それ以前の全ての戦争が大なり小なり、正にこの「経済成長」のために行われたのです。
「税財源論」の場合、経済成長は結局この「他国からの略奪・戦争」を肯定する理論に繋がってしまいます。
逆説的に「信用創造」という仕組み・機能は、(もちろん万全な仕組みなどありませんが)少なくとも「他国からの略奪・戦争」をせずに経済成長できる可能性に近づける仕組みと言ってもよいでしょう。
■現代の徴税は「市場の貨幣流通額のコントロールの手段」
さて、財源を税によって賄う必要が無い、ということは「他国からの略奪」で財源を賄う必要が無いということですが、ということは、信用創造をするなら、自国民からも税で略奪をする必要が無いのではないでしょうか?
もちろん、ここで無税国家を唱えるつもりはありません。税には別に役割があります。それは、「市場に存在する貨幣流通額コントロールの手段」です。
例えば、ある部門の市場は好景気になりすぎて、その市場で働く従業員の人材が不足して困る、という場合「増税」をしてその市場を敢えて不景気に誘導し成長を鈍化させることができます。
また、逆に鈍化した成長を再び活性化させるために減税したりすることもできます。これが税制度を利用した「政策」であり、国会で決められる「国家予算」というものなのです。
税制は社会を外からのパワー(外生変数)によってモデリングする、そのための制度なのです。国家にとって極めて重要な「権力」です。
■まとめ:消費税は「市場に存在する貨幣流通額コントロールの手段」としては最悪の税制
さて、では消費税はどんな社会を企図しているでしょうか?
それは
・消費をすると徴税される社会
・消費をしたいと思えない社会
・徴税されても懐に痛みを感じない富裕層は消費をする社会
・徴税されることが懐に痛い貧困層は消費をしたくないと思える社会
ということなります。
富裕層だけが豊かに消費をし、貧困層だけが消費をためらう社会。
そんな社会を作り出す消費税は悪税以外の何物でもありません。