豆知識⑦ 金本位制と管理通貨制度の国債の違い
さて、経済学では同じ用語ながら、時代とともに機能が変化しているものがあります。
例えば
国債
ですが、これは金本位制時代と管理通貨制度の現代日本とでは、示される機能が違います。
金本位制時代の貨幣とは
「必ず貨幣が金と交換される」から
その貨幣には金と同じ価値があると信用された、
ということは、以前の「『貨幣の信用』と『貨幣の価値』」のマガジンの連載時に述べました。
その時代、国債とはどういう存在だったでしょうか?
例えば、Aという人物が、自分持っている100万円紙幣を金貨に変えようと、B.銀行にやってきます。
しかし、B.銀行には100万円の金貨の準備がありませんでした。
50万円の金貨しかありませんでした(因みにこれが原初の準備預金です)。
そういう場合はC.政府に頼んで、その銀行に金貨を納入してもらう必要があるのですが、C.政府だって金の保有量には限界があります。
直ぐに引き渡せるわけではありません。
ですのでC.政府は金貨の代わりに、B.銀行に「金貨の代わりになる手形」を発行し、それをAに渡すわけです。
その手形にはこのように書かれているでしょう。
「残り50万円分の金貨は10年後にお渡しします。その時は待ってくれたお詫びとお礼に金利を10%付けて55万5千円分の金貨をお渡しします。」
と。
これが国債の始まりです。
そして、このように成立した国債は次にこのようなフェーズを見せることになるでしょう。
いずれ金貨になる国債を、今のうちに購入しませんか?
と。
もちろんお判りでしょう。
C.政府が金を調達できなければ国家財政は破綻します。
これが金本位制です。
さて、では現代日本の管理通貨制度では国債はどうなるでしょうか?
まず、
国債が「いずれ金と交換をする」代物ではなくなっています。
何せ、この世の中の流通貨幣に「金貨」という物質的貨幣自体が存在しません。交換しようがないのです。
なので、
金貨が調達できなくてもC.政府は財政破綻しません。
では、金の代わりに何を調達しているのか?
国債によって調達できる貨幣は「中央銀行当座預金(日銀当座預金)」であって、金貨ではないのです。
そして、その中央銀行当座預金は中央銀行が書くことで生み出す「万年筆マネー」であって、
一般国民から銀行預金資金を調達する必要はありません。
現代の管理通貨制度では「準備預金」とは「A.国民の預金の一部」でもなければ「C.政府の調達する金貨の一部」でもなく、
B.銀行に存在する「中央銀行当座預金」のことです。
それは書けばすぐに補填される万年筆マネーなわけです。
最近、国債を発行すると、国民から貨幣を吸い上げて、それから貨幣発行される、と言っている人がいました。
100万円の財政支出を行うために、
100万円を国民から吸い上げる、
とでもいうのでしょうか?
現代では、
国債とは「中央銀行当座預金」を発行させるための代物であって、
金貨と交換するものでも、
国民の銀行預金を吸い上げるものでもありません。
国債を金本位制時代の産物として否定的に考えるのは、
未だに国債は金本位的な機能を有しているに違いないという
虚妄
にすぎないわけです。
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