水面カーテン
カーテン越しに染みる凄艶-サイエン-よ
ここは白夜
今宵 絹滑りの水面-ミナモ-を泳げ
浮かぶ小舟ひとり 揺れない湖 逆さ月 どこまでも波紋 続く
光 窓辺へ降りて こちらへ腕を伸ばす
触れる指先 白綿-ハクメン-の表面は音を立てず波打つ
私は祈るように 両手を掲げる
アナタ 微笑んだ
美しき永遠の手をとり こちらへと招き入れる
空中の湖 出逢う表裏の惑星
小舟へ腰掛ける深愛は 夜の水中へすぅ…っと手を浸かり遊ばせている
布へ染み笑むと いっそうの輝きを増す
今宵 闇を怖れる者はいない
瞬きの幸せに呼応するかのごとく 布 一面に輝く流星群
パドルを漕ぎながら 白波に身を委ねる貴方を眺めた
泳がせる手の光を 飽きずに見つめた
染まる闇と共鳴する貴方
嗚呼、闇を統べる灯台守よ
月明かりは煌々と ふた想いの光と影を照らす
誰もいない白布の波 揺れて淡い幻へ誘う
さぁ、どこまでも漕ごう
望む月よ 逃避行なら どこまでも…
砂漠をさ迷う旅人のように
刹那を見上げれば 愛しさを連れ去るかのように 透き通る身体は雲に隠れて
部屋一面を なぜる生きた右腕
動かないのは 2人の今
海に潜るラクダのように 夜の砂漠を泳ぐ
届かぬ想いに眼を閉じて
水面 映る幻と遊べ
水肌の奥 浸かれば
月光の刹那 抱けば……!
揺れた 揺れた 仄かに揺れた
いっそ 溺れてしまおうか
触れられるのなら
手を伸ばせば 届くと信じ
今にも消えそう明星 見つめ
月代-ツキシロ-の空へ キスをして
溺れぬように両手を離した
東から南東へ泳ぎ 夜明け前に消えた
変わらぬ永遠を 照らしながら
私を残して……