箱庭

握る手のひら
こぼれだす月の雫
手作りの箱庭 いびつな 箱庭
咲き乱れる永遠の花

かたく かたく鍵をかけて
誰にも探られないように
花弁 落ちる夜を止め

2人だけの 秘密を
小さな箱庭に 詰めた

鍵をかけたのに
アナタは誰かに導かれ
ひっそり脱け出して2度と戻らず

庭は 終焉の鐘を鳴らし
愛し人の帰りを待つ幼子
現実は音もたてず 残酷に流れ
濁り水のように 渦を巻き 
巡り巡り 箱庭へ訪れた

このまま時が流れてゆくのに
少女のままでいたいの……と
土砂に埋もれ 崩されて

胸の扉も 壊れた
アナタは大人になった

別れること
 死ぬことの
  悲しみも
   愛しさも
    生きることを教える刹那

汗ばむ手のひらは硬く 硬く
  アナタ微笑む 月の光
蕾は閉じて 溢れだす涙 涙 涙

朽ち果てた庭園
思い出と身体から放つ花の微香
白鳥は水面-ミナモ- 郡をなして羽ばたいて
主-ヌシ-は それを眺めた
ただ それを独り 眺めた 

愛しさを忘れても
アナタが幻でも
繋ぎとめる思い出があるなら
両手で溢さずに すくって

拾い集め柔な白羽
握りしめる 優しい拳
くしゃくしゃに丸めた箱庭
元には戻らない 彼方へ…

両手には 壊れた箱庭と貴方の残骸
  覗けど霞む 幼い記憶

温もりも 忘れて……






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