コンセプトで表現活動を自由にコントロールする。vol.2
2020/9/16 初回
この記事は前回のコンセプトで表現活動を自由にコントロールできる!vol.1の続きになります。
⬇︎vol.1
今回はコンセプトの作り方、活用方法がメインの記事になります。
*作家としてのコンセプトになります。(あなたは作家として何をする人?)
コンセプトの作り方(考え方)
まず大きく分けて作り方は3つあります。
①今まで制作してきた自身の制作物から導き出す方法。
②情熱を向けたい方向がはっきりとある場合の方法。
③世の中のニーズや活動したいジャンルの文脈から考える方法。
*①、②、③を併用可能。
①今まで制作してきた自身の制作物からの考え方
まず、過去作から新作までをすべてじっくりと見てみて共通する事柄をピックアップしていきます。
例えば、色、形、素材、雰囲気、モチーフ、連想するもの、ワードなど、なんでも良いのでピックアップしていきます。
無意識だったとしても、作品には作家の心情が必ず潜り込むので共通項を見つけれればコンセプトに反映しやすいです。
共通する事柄が見つかれば、それらが作品を制作する動機やモチベーションであるはずなのでそれを使ってコンセプトを組み立てます。
共通する事柄(1つでなくても良い) + 他者(ターゲット)に興味をもたれる内容 + 世の中に公開する意味(あれば強い)
上記の形から言葉や文を調整します。
②情熱を向けたい方向がはっきりとある場合の方法。
例えば今まで生きてきた人生の中で生まれた「コンプレックス」が強烈にある場合、過去の自分を救うという考えを使ってコンセプトに反映できます。つまり自分が感じたコンプレックスと同じようなものを感じている他者に向けてのコンセプトになります。(それがターゲットになる)
どうやってそのコンプレックスと付き合ってきたか、または解決してきたかという考えが作家が作品を通して与えられる内容になります。
それがある場合はそのままコンセプトにしてください。
*言葉やニュアンスは調整してください。
③世の中のニーズや活動したいジャンルの文脈から考える方法。
世の中のジャンルにはそれぞれ独自(共通するところもある)のニーズや発展してきた歴史があるのでそれらを調べてコンセプトに反映します。
ニーズで言えば現在生きている人々は一体どんな生活をしていて、どんなものを求めているかということをリサーチすること。(時代によって人の生活習慣やスタイルは全く違うため)
ジャンルの文脈で言えば、例えば陶芸などは昔から産地によっての特徴があったり、土練から形成、釉薬までも機械で自動製造の仕組みまで現在はあります。釉薬や器の形の概念も過去に比べて更新され続けています。自身の制作のジャンルにおいて過去から更新されてきたものは一体何なのかを知る事がコンセプトにも活用できます。
それを自身の興味や展望と絡めてコンセプトにする事ができます。
*もちろん言葉やニュアンスは調整してください。
上記の限りではありませんが、3つ程紹介させていただきました。
コンセプトの活用方法
コンセプトが制作できたらそれをもとにして、自身の作品全般またステートメントに反映させるようにします。
コンセプトをそのまま公開しても良いですが、作家にはステートメントを公開できる機会が必ずあると思うのでここにコンセプトを反映した作家と作品の関係性を公開するのがやり易いかと思います。
なぜならコンセプトは抽象的なニュアンスを含みやすく、大枠としての作家像を表現する事になりやすいので、もう少し噛み砕いて鑑賞者に分かりやすくします。
●大事なポイントと気をつけて欲しい事
・あまり長くなりすぎないように。(長い文章は読まれにくい)
・分かり易さが大切。(理解が難しく高度な書き方は避ける)
・自身の歴史や大きな転機など、制作に関連している出来事をニュアンスとして取り込めると理想的。
・よくあるワードの使用や他の作家が使用しているコンセプトと絶対被らないようにする。ズラす。
*よく使用されるワードを盛り込んでしまうと他の方との同意性を感じさせようとしているように見え、空っぽの言葉として認識されやすいです。また他の方と被ってしまうとコンセプトの効果が減ってしまいます。
・自己満足なポエムにならない事。他者がステートメントを読んだ時に何を言っているかわからないということを出来るだけ避けたいので、言葉の選定や組み合わせには気を配ってください。
【例】近澤優@アーティストの場合
*最初で触れた①、②を活用しています。
私自身、田舎生まれ育ちの都会コンプレックス、あがり症で、怖がりで、好き嫌いが多く、言葉で伝えることが苦手で苦しい思いをした過去から
弱くても強く生きるための美しい打算の創造
を昔から意識しています。
*私の場合、この部分は特に公表するものではなく種の部分です。自分で意識しておく部分です。
そして絵画作品のテイストからボロボロ(枯れていくような雰囲気)、燻んだニュアンス、動植物、孤独などの言葉をピックアップしました。
⬇︎
・アーティストステートメント(作家と作品の関係性)
*作家と作品の関係性をもって文章を作ります。上記の弱くても強く生きるための美しい打算の創造は作家としての私自身のコンセプトであって、それに作品の特徴や要素を加えたものにします。
近澤優のステートメント
「生きているもの」はどうせすぐに死んでしまうからその瞬間が訪れる日までのお守り。
*ステートメントは一般の方々に公開するというよりか美術の関係者に見せる事が多いと思うので、一応そのことは加味しておきます。作品の雰囲気(トーン)と合わせるように意識しています。
*お客さんように公開するものはバイオグラフィーと言われます。
アーティストステートメントはあなたの作家活動と作品を包括して表現する文章作品という感じで制作するとうまくまとまるかと思います。
そして大枠としての作品のコンセプトは
枯れることができる
という言葉をテーマにして作品制作しています。
【追記】
コンセプトは一度決めてしまうと今後一切変更することが難しいように感じます。確かにまったく違うものに変える事には違和感を感じますが、同じベクトルの向き、または関連性があればコンセプトを変化させることは可能なはずです。
人間の人生にも一人一人にコンセプトがあって、その時々で変化したりするのが自然なはずで、どのような人生を歩みたいかやどんな人生にしたいかの答えがその人にとってのコンセプトになります。
≪例外≫無くて良い人もいる?
無くて良い人もいる(偏りがわかりやすい人)
外見やキャラクターが特徴的な人は、その人を見たり、少し接しただけで先入観が作られやすので、その先入観がコンセプトのようなものとして機能する場合があります。
まとめ
コンセプトとは作家として何をする人?または作家としてどんな価値観を世に提供しようとしている人?の答えです。
〈コンセプトの作り方〉
①今まで制作してきた自身の制作物から導き出す方法。
②情熱を向けたい方向がはっきりとある場合の方法。
③世の中のニーズや活動したいジャンルの文脈から考える方法。
〈コンセプトの活用方法〉
コンセプト→アーティストステイトメント。
” →作品。
” →全ての作家活動に反映させる。
コンセプトを種として考えることができると理想的です。
最後に
今回はコンセプトで表現活動を自由にコントロールできる!vol.2として記事を制作させていただきました。これはあくまで一例ですので、参考にしていただければと思います。
作家(アーティスト)は作品が一番大事であることは間違いないです。文章は二の次になりやすいですが、他者(特に美術関係以外の人)は意外と作家の作品には興味が薄く、表面的な解釈が多くなります。
にもかかわらず、あくまで私の見てきた作家の中に割と自身の作品に酔った言葉でコンセプトやステートメントが作られている事が多く、正直何を行っているかわからない、必要意義がわからない、あっても無くても一緒というようなものがまだまだあるように思います。
おそらくポイントは作家の人間性や作家としての活動や作品から、
何を鑑賞者に与える事ができるか、感じさせる事ができるか
をしっかりと分析する事です。
こういうことを思ってもらいたい!感じて欲しい!という事が先行しがちですが、自身の持つ理想は理想です。理想は他者に押し付けるものではなく、志(こころざし)として自身の心中にしっかりと持っていてください。
言葉は相手に刺さって初めて価値があると思いますので、効果的なコンセプトを持って、有意義な作家生活を楽しみましょう。
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。