君と話すと、どん底ではないことがわかるんだ。
今日カフェで、信頼のおける友人とパスタを食べていた時の話だ。
自分だって考えすぎで、どうしたいのかすらわからず、うまく言語化できるかわからぬ悩みの種だったのだが、とりあえず目の前にいる友人に打ち明けてみることにした。
「あのさ、このままじゃ今の彼と結婚できない気がするんだよね」
「なんで?」
理由は「誰かと一緒になることの漠然とした不安感」だが口に出してみることにする。私は早口でまくし立てた。
「なんか、まだ社会に対して、地に足をつけてない気がするんだよね、必死になんとかはいつくばってついてってるって感じがする。一人でいるのとか行動するのもすきだから、結婚したらストレスたまりそう」
「なるほどね。」とカフェオレをすすりながらあいづちを打つ友人。
「そう、いまのままじゃ、彼に頼りっぱなしになっちゃう。結婚を前提って言われても、自分がいつなら結婚できるかわかんないんだよね。
しかもなんか、一人の時間つくりたすぎて自分ばっかりいっつもわがままいっちゃうし、ベット別にしてほしいとか、部屋も別がいいとか」
目線を落として話しながら自分に嫌気が差した。いや我ながらめんどくさい、めんどくさすぎる。「結婚を前提」という言葉を素直に喜べるかわいい女でありたかった。
友人は大好きなカフェオレから口を離し眉間にしわを寄せ、目をぎゅっとつむり、小さくうなった。そしてしばらく、探し物をどこにしまったか思い出したいかのように黙り込んだ。
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そして何かを見つけたようにゆっくりと目を開いて言う。
「え、でもさ、何ができなきゃ結婚できないみたいなルールなくない?なんか自分が勝手に作ったルールに縛られてる気がする」
結婚のルール・・。確かにそんなものはない。
「しかもたとえあったとしても二人の世界の話なんだから別にどうだってよくない?」
更に友人からの言葉が続く。
「別にかれもそんなの求めてないでしょ?社会的自立とか。それは自分の理想の話でしょ?
一人の時間を持ちたいっていうのも別に結婚したからって、全くなくなるわけじゃないし、そこは話し合いですり合わせて二人の正解を作っていくものじゃない?
しかもnoteに昨日「周りが求めてる自分と今の自分にギャップはないからありのままでOKってことがわかった」みたいなこと、書いてなかった?ぜんぜんわかってないよ!(笑)」
確かに。あんなに自信満々に書き上げたnoteの内容「理想の自分を追い求めすぎてする無理はしなくていいんだぜ」と全く別な思考になっていた。
「うわぁ、昨日悟ったことと全然別なことをしていた・・」
やはり長年こびりついた思考の型みたいなものは頑固である。幸せになるためには丁寧に取り除いていくしかない。何度でも。
「まあね、理想が高く持ちすぎちゃうっていうのはうちら共通だよね」
「確かに。うちらありのままで十分なんだよね」
そうなんだ、ありのままでいいんだ。ありのままで、話し合うしかないのだ。違う人間なんだからすり合わせるしかない。どちらか我慢していたらどちらも幸せになれない。
ふと携帯の画面をみると、LINEの通知が入っていた。
「ねえこれさ、さっきくれたラインいまきづいたんだけど、トイレがトレイになってるよ」
そこには「今、織田トレイだね!」の文字が表示されている。これは待ち合わせしているときに私が急に便意を催し、今トイレにいる旨を友人に取り急ぎ伝えた際の、友人からのラインの返信である。
私はニヤニヤしながらこう続ける。
「わたしトレイになった覚えないんだけど」
「ああ、ごめん、トレイなんて言葉あんま使わないのに、予測変換が余計な仕事してたわ」
なるほどね、と顔をみあわせ、そっと笑い合った。
◇ ◆ ◇
自分のことを理解し、同じ視点で考え、適切な意見をくれる友人たちがいることは素晴らしい。
人見知りと口下手を併せ持ってこの世に生を受けたが、この世界はこんな私にもそんな「友人」を準備して待っていてくれた。
多少トンチンカンな考えもまずは受け入れてくれる。そしてしっかりと理解をしたうえで、自身の意見も伝えてくれる。そしてくだらないことも笑いあえる。
君と話すとどん底だと思っていた場所も、実はそうでなかった、ということが分かったんだ。
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