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正月は逃げない

仕事始めである。さぁ稼ごう、社会人の化けの皮をかぶろう。しかしかぶったとたんブランクでびりっと破けてしまうのではないかと心配になってしまう。それが仕事始めである。物理的に正月太りだし。

あぁしんどい。実家に帰ってコストコで買ったサーモンをつまみに毎日酒のんで、惰眠を貪り、誰かにさそわれれば好きなだけ遊ぶ。しかしそんな日々は昨日あっけなく終わった。

実家から一人暮らしの家へ帰るの時の私は極めてナイーブで「出社しなきゃいけないなんて涙がでそう」「昨日までの5日間とこれからの5日間はまったく同じ人生だとは思えないんだが」と割と本気で思い、明日が来ないことをひたすら祈った。

しかし不思議なもので仕事に行き「あ、あけましておめでとーございまーす」「ことしもよろしくおねがいしますね!」とさっとあいさつは済ませ、
仕事に取り掛かれば、社会人の化けの皮のあっという間に強く張り付くことといったら。多分しばらくはがれないやつ。

他人を見ていても、自分を俯瞰で見ても「切り替え」って不思議だなと思う。まぁずーっと正月な人生もあまり面白くないだろうし、休みのない人生はきついだろう。だから切り替えというのが大事なんだな。慣れれば「正月」と「社会人」を行き来するのは全く別な人生を生きているようでスリルがある。

しかし、それでもなお正月は恋しいのだ。
私は往生際が悪く1月7日あたりまでは正月だと思っている。
もう休みではないのだが、正月特有の雰囲気にはせめて浸っていたい。
正月に執着している私スーパーに行ってはお餅を買ってきた。若干の混雑を見せるスーパーにいる人々はまだ羽を休めているように見える。
ゆったりとした空気を感じる。それは大勢が忙しなく動き出す前の早朝や真夜中の雰囲気のようで私は好きだ。少しでも長く味わっていたい。

あと、まだ仕事はじめがまだの正月気分の人もいるのになぜ私が一足先に抜け出さなければいけないのだろうか、というわがまま心も働いている。(中には年末年始は休みなしのかたもいるだろうに・・・。)働いている時は「正月は終わったのだ」という気概でいなければならないが、家に帰ればまだ正月である。信じれば正月はそこにいる。録画した特番でもみて、買い込んだおもちを食べよう。正月はまだ逃げない。まだ逃げないといってくれ。

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織田 麻(Orita Asa)
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