秘密のヴェールに包まれた、国立印刷局の壁掛けカレンダー
先日、仕事先で来年のカレンダーをいただきました。
手渡された封筒には「国立印刷局」の文字。国立印刷局といえば、お札や旅券、印紙や切手などの印刷を行う独立行政法人です。
国の刊行物を印刷する機関のカレンダーって、珍しいよなあ。
封筒の中には、なめらかな質感で厚みのあるカレンダーが入っていました。
表紙をめくると、まずカレンダーの説明がありました。
このカレンダーにはエドゥアール・マネの『ベルヴュの庭の隅』(1880年) と『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』(1872年)の2作品が印刷されていること。
そして、この印刷物は、国立印刷局の「工芸官」と呼ばれる専門職員が凹版彫刻をおこない、日本銀行券に用いられている独特の印刷技術によって製造していること。
工芸官に凹版彫刻、日本銀行券。
聞きなれない単語がずらりと並んでいます。実際に、工芸官と思われる方が原版を作製している写真が載っていました。
また、カレンダーの使用後は額縁等に入れるなど、屋内装飾品としてもご利用くださいと書いてありました。
どうやらこのカレンダーは芸術性の高い作品のようです。わくわくしながらページをめくると……
(ここでみなさまへ)
ほんとうに素敵な作品だったので写真を載せようと思ったのですが、よくよく調べたら、カレンダーにも著作権があるようですね。あぶない、あぶない。
わたしの拙い文章だけでは伝えられそうにないため、カレンダーのかわりとして、原画のリンクを貼らせていただきました。少しでもイメージが伝わりますように。
1月から6月 エドゥアール・マネ 『ベルヴュの庭の隅』(1880年)
カレンダーは暦部分を切り離すようになっていて、1月から6月までは『ベルヴュの庭の隅』(彫刻 増田奈緒さん)。そして7月から12月は『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』(彫刻 元良隆一さん)が楽しめます。
最初に目に入ってきたのは、色鮮やかな緑色。
初夏を思わせる、緑豊かな庭園。
間近で見ると、1ミリにも満たない緻密な彫刻が施されています。明るい部分は点や短い線、そして暗い部分になるにつれて彫りは深く格子状になっていました。
また、作品を指で触ると微かな厚みがあり、インクの凹凸も感じられました。凹版印刷ならではなのでしょうね。
せっかくなので『ベルヴュの庭の隅』について調べてみます。
7月から12月 エドゥアール・マネ『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』(1872年)
7月から12月は、シックな肖像画でした。
カレンダーの作品はモノクロで、一本一本細かい彫刻が施されており、シンプルで、よりお札に近いものでした。
帽子についた飾りのうねるさま、髪の質感、顔の陰影。点と線だけで形作られていて、黒と白の境界が見えそうで見えなくて。じーっと見ていると吸い込まれそうになりました。
どうやって作られているのだろう。どうやって印刷されているのだろう。
なお『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』については次のとおりです。
国立印刷局の壁掛けカレンダーは、ググってもほとんど情報がありませんでした。うーん、これはもしかしたらヴェールに包まれた、秘密のカレンダーなのかもしれません。この記事もいつの間にか消えているかも。なんてね。
どうやら貴重なクリスマスプレゼントを頂いたようです。年が明けたら、リビングに飾ろうと思います。
おまけ
最後までお読みいただいた方へ、とっておきの情報を。
この素晴らしい技術をみなさんにもご覧になっていただきたい…! と調べたところ、国立印刷局のホームページで見つけましたよ!
2014年に東京駅開業100周年記念式典の記念品として採用された、100年前の東京駅と現在の東京駅の凹版画が公開されていました。
凹版画の画像にマウスのカーソルを合わせると、一部分を拡大して見ることができます。緻密な点と線だけで構成されていることがわかります。