疲労骨折
under25の2回戦。出番までの待ち時間に、前出番のとある学生芸人が「そうだった。この賞レース待ち時間めっちゃ長いんじゃん。次はSwitchとか持ってこよって去年言ってたのにね。」といいながら、外に消えていった。なんだか、心が折れる音が聞こえた。
別に彼らが悪いわけじゃない。彼らは彼らなりのお笑いの楽しみ方、やり方をしているだけなのだ。ただ、自分の要領が悪すぎただけで、心のどっかで、苦しくないと面白くなれないとか、限界まで詰めて限界まで考えてそうしてやっと人並みに面白くなれるかもしれない。それだけやってもつまらない人間のままかもしれない。そう自分を追い込んでお笑いをやってたからこそこうやって荒れ果て、持病も悪化し、雲隠れしてしまったのである。
2年間お笑いを端くれながらやって、辞めたあとも決心がつかず少しずつやり続けてた中で、心が折れた瞬間は、いくらでもある。
賞レースでエリート学生芸人に出番が挟まれ、聞いたことない音圧の笑い声が聞こえたこと。血反吐吐きながらようやくたどり着いた2回戦の出番直前で、学生芸人上がりのプロが大爆発していたこと。大喜利の大会で、手も足も出ず、敗退コメントが何も出てこないくらい自分の弱さに絶望してしまったこと。ほぼ同期の学生芸人仲間がバトルライブで結果を残しナルゲキの舞台を踏んだこと。同じ舞台に立っているのに、そのコンビが遠く離れて見えたこと。自分より結果を残してる学生芸人が自分より遥かに楽しんでお笑いをやってることを目の当たりにしたこと。
結局は自分が弱いだけで、自分の弱さがなければ何も感じなかったかもしれないし、そもそもメンタルが強い人間ならこんなの気にせずに自分の強さを極めていくことができたのかもしれない。そう思うと、どんどん自分の向いてなさに追い込まれてぶち壊れていってしまった。
思えば、この約3年間。お笑いをやることが楽しかったことなんてなかった。そりゃウケて良かったなぁってライブもあるし、なんとか成立して耐えたなぁとか、あの人の平場面白かったなぁとかはあるけど、1から10まで楽しかったことなんて一つもない。
初めのうちは、 自分がやりたいネタとかをやるようにしてたけど、いずれライブに迷惑かけないようにできるだけウケそうなネタ、バトルライブで勝てるであろうネタ、0票を避けるためのネタ、賞レース一回戦を突破するためだけのやっててなにも楽しくないネタ。そんな毎日を繰り返すうちに、自分も全く楽しんでないし、お客さんや共演者、スタッフさんを楽しませられてるという自信もないし、とはいえこれは仕事じゃなくて、自分が勝手にやってることで、それでこんなにも病んで、苦しくて、身体も悪くして、心も悪くして、気づいたら治る目処が立たないまま少しお笑いを休んで、無理やり一ヶ月で復帰して、間もなくお笑いを辞めてしまった。
バトルライブにしか出ていなかったし、とはいえ好きなネタをできるようなライブには出られないし、そうやって一人で沈んでるうちに、自分が憧れてる人たちと自分が一緒にやってた人たちが共演したり、賞レースで結果をどんどん残したり、初舞台を見てた後輩が初めてのM-1で一回戦突破したり、どんどんどんどん元に戻れなくて、壊れたまま壊れ続けて今に至る。
就活もうまくいかないし、ゼミでやってるプロジェクトもうまくいかないし、お笑いはすることすらできなくなってしまったし、頼れる人は少なくて、少ない頼れる人たちにも申し訳ない気持ちで一杯で。
僕は何をすればいいのだろうか。
何ができるのか。いや何もできない。
苦しい疲れた。また日付が変わる。
嫌な日々が続く。助けて。