― 「ところかまわずナスかじり」第百六十六話 薬 ―

 私は『クスリート』である。
 『クスリート』とは、‟薬”と‟アスリート”を混ぜた和製英語であり、「クスレ競争(
薬の力でどれだけ走れるか)」というスポーツに従事する者の一般的な名称である。
 
 クスレ競争の人気は最近、とみに高く、その競技人口も今では老若男女合わせると全世界で700億人ほどいると云われている。

 競技自体は非常にシンプルで、薬品の摂取から5分以内に走り始め、どれだけ走れるか、その距離を競い合う。
 
 薬品の種類に特別の規定がないこともその人気の要因である。
 私の友人などは、大声で笑いながら15時間ものあいだ走ることができ、世界記録の樹立候補の一人と目されているが、残念ながら距離を測ることを毎回失念し、いまだにその記録が残されていないことはつくづく残念なことである。

 日本では使用できる薬品の種類が少なく、なかなか普及できずにいるが、アムステルダムなどではその競技人口も多く、学業、仕事、家族そっちのけでクスレ競争に没頭してしまうクスリートも多く、世界のその他の国々のクスリートへの励みになっている。

 ぜひわが国でもクスレ競争の普及、発展、ひいてはクスリート人口の拡大に努めたいところである。

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