所有する山林が東京都の自然公園区域内にあるので、自然公園区域でしてよい行為/ダメな行為を整理していく。
自然公園区域とは
日本には自然公園法という法律がある。この法律の目的は「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与すること」だ。簡単に言えば自然を守りながら利用していきましょうというものなのだが、国立公園は自然公園法の中で、都道府県の自然公園は各都道府県がその基準を条例で定めている。ここで定められた区域が自然公園区域である。
私のように山林を購入するとき、その土地が自然公園の区域に含まれていることは珍しくない。今回は都道府県立自然公園について示す。理由は国立公園は数が限られており、その区域内の制限を考える機会は一般にないと考えたからである。ただ環境省によると国立公園の約1/4は私有地なので、運良くまたは運悪く国立公園に指定された土地を入手される方もいるのかもしれない。そのあたりは別を参照されたい。(とここまで書いて記事を寝かせておいたら国立公園の区域内に建築物を建てる計画が湧いてできた。。)
都道府県立自然公園は、都道府県が自然公園の区域を指定する。さらに自然公園の区域内には特別地域を指定することができるが、特別地域以外の地域は普通地域となる。この地域は宅地だろうと山林だろうと地目が公園であるものに限らず指定される。都道府県立とはいうものの、実際約1/2の土地は個人が所有する土地だったりする。これは先の表でも確認ができる。私の所有している山林は都立自然公園区域のうち普通地域内にある。特別地域の方がより厳しい制限を受けることになるので、特別地域でできることは普通地域でもできると考えて良い。今回は東京都を例にして、してよい行為・だめな行為を整理する。
都立自然公園区域内で、してよい行為
東京都の自然公園
東京都には自然公園として3つの国立公園、7つの国定公園および都立公園が存在する。
東京都の西側はかなりの広い範囲が自然公園の区域となっていることがわかる。23区を除いたら半分以上が自然公園の区域になりそうだ。この中でも都立の自然公園についてみていく。
東京都立自然公園については、「東京都自然公園条例」「東京都自然公園条例施行規則」で基準が定められている。見出しを「してよい行為」としたが、届出をすれば基本的にしてよいことになるものが多い。なので届出を要しない行為について示していく。
A:普通地域
普通地域内において、条例第13条第1項に掲げられている行為は届出が必要な行為である。逆にこの条文に定める行為以外の行為であれば、届出は不要である。
上記の1から6号までが届出が必要な行為である。ただし、条例第13条第7項より、条例第13条第1項に掲げる行為であっても、届出が不要となる場合がある。
この中でも特に第3号の「通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であって、規則で定めるもの」とあるのは、規則第28条に具体的な内容が示されているので確認していく。
ここで、規則第25条を参照しているので抜き出す。
上記の行為は、「通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であって、規則で定めるもの」であって、届出が必要ない。掲げられている行為をみていくと多くの行為が届け出不要となることがわかる。
当然のことだが、ここでの届出不要というのはあくまで自然公園法上の届出が不要ということであって、自然公園法以外の法律や条例については必ず確認が必要である。
B:特別地域
同様に特別地域もみていく。まずは条例から。
上記の行為はすべて知事の許可が必要な行為だ。第1項の条文からわかるように、特別地域は普通地域よりも厳しい条件の地域となっている。
法律の基礎知識として、届出とは一定の事項を通知するもの、申請は許可/不許可の処分を前提としたもののとなるが、特別地域では行為の前に申請が必要となり、内容が厳しく審査される。審査を経て許可がおりたら初めて行為に着手できる。一般にこうした審査はうまくいって1ヶ月程度かかるとみたほうがよいだろう。また書類の不備などがあれば当然修正を求められるためさらに時間がかかることになる。つまり、なにか目標の期日があって行為に着手したい場合はこうした申請にかかる期間から逆算して計画する必要があるのだ。
特別地域にも普通地域と同様にただし書きがある。
再び規則をみていく。
普通地域では規則第25条からいくつかの行為を抜き出す形で軽易な行為が定められていたが、特別地域では規則第25条に掲げるすべての行為が軽易な行為となるようだ。特別地域は普通地域よりも厳しいのではなかったのか。これは具体的にみていけばわかる。
例えば普通地域では木竹の伐採はそもそも条例上で届出が不要である。対して特別地域では木竹の伐採に許可または届出が必要とされている。規則までいくと条例で必要とされている木竹の伐採のうち、例えば規則で定める「二十八 宅地内の木竹を伐採すること。」は許可または届出が不要であると読める。このように、規則第25条では条例で定めるもののうちの例外を示しているのであって、普通地域はそもそも条例で届出が不要であるため、例外を示す必要がないのである。
そのほか、特別地域では利用のための規制がある。
至極当たり前だが、ゴミを放置したり、悪臭や騒音を発生させたりすることはしてはならない。野生動物への餌やりも禁止されている。
まとめ
ここまで許可または届出が不要な行為について条例を読み解いてきた。しかし条例文を読んだだけではイメージするのが難しい。これを実際に絵にするとどうなるか一例を作成したのでみてほしい。
この絵では主に普通地域で届出が不要な軽易な行為の一部を示している。各要素に引き出し線で漢数字を記しているが、この漢数字は条例規則第25条の号数に対応している。
ここで示す行為はあくまで自然公園法で許可または届出不要とされる行為であって、その他の法律について必ず確認する必要がある。この絵で言えば、小屋を建てる際に建築確認の要否を確認する必要があるし、景観条例や屋外広告物条例についても許可や届出が必要な場合があるので、注意をしてほしい。
しかし改めてみていると大きな制限はないように感じられる。絵には表現しきれなかった行為も多くあるし、許可や届出を行えばさらにやってよいことのバリエーションは増えていく。もし購入しようとする土地が自然公園の区域内だったとしても特に普通地域の場合はマイナス要素として捉える必要はないのかもしれない。
余談:実際の許可申請
ここまで東京都自然公園条例および同条例施行規則から読み取った自然公園でやってよいことを整理した。
ここでは一旦自分の山から離れ、実際の申請について簡単に記す。仕事で国立公園の特別地域内の許可申請について扱う機会があったので実際の許可申請で知ったことを箇条書きでまとめる。
国立公園には「管理計画書」というものがあり、この管理計画書に細かな行為の制限内容が記されている。
建築行為に対する制限は厳しく、道路や隣地境界からの離隔距離がそれぞれ20m・5m求められたほか、敷地面積に対する建築面積の割合も自然公園法によって最大20%と厳しく制限を受けた。
また、自然公園法における「建築面積」と建築基準法における「建築面積」の扱いが異なることがわかった。自然公園法では屋根の投影を、建築基準法では(簡単にいうと)柱芯・壁芯で囲われた部分をそれぞれ「建築面積」という。(そのため先の20%は、建築基準法でいう建蔽率とは若干異なる)
建築物の形態にも制限があり、屋根は勾配屋根で切妻、軒の出は壁面から500mm以上となるよう求められた。
試算してみると例えば、自然公園法の建築面積が300m2(20.0%)のとき、建築基準法の建築面積は最大260m2(17.3%)になり、2.7%分損した気分になる。
色についても当然使用して良い色がある。
ほかにも造成をする場合は掘削量を計算して制限の範囲内であることを証明する必要があったり色々と面倒だった。
実際に申請手続きをしてみると法文や条例文を読んだだけではわからなかったことが色々と明らかになっていく。どのような手続きも実際にやってみてからわかることが多く初めから完璧に行くものではない。特に自然公園は各公園ごとに窓口(環境事務所)や管理計画書が異なっているため、申請や届出を行う場合には違った指摘や指導をうけることになるだろう。