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あしたのジョー、それから。

金竜飛を語るにはまず大佐をぶん殴るところからはじめなければいけねえ、大佐、歯を食いしばれ。
戦うコンピュータ。コンピュータみたいな男なんて存在するわけないだろ。大事な心を凍らせているから機械のように動いてる。金竜飛はPTSD。喫茶店での矢吹とのやりとりを見て、物腰の柔らかい男だと思った。執拗に手を水で洗う姿が思い出される。金竜飛は優しさに伴う感情をまるごと凍らせてしまっている。行動がちぐはぐすぎる。戦争を語る目が戦火で燃えている。ご飯を食べないのではなく食べれないのです。拒食症です。朝鮮戦争で経験した強烈なトラウマからPTSD状態にあり、拒食状態にある。戦争を語るときだけ、ガラス玉のような瞳が戦火で燃える。金竜飛お前はなにをしたかったんだ。何もしたくなかったんだ。ボクシングをおままごとだとおもってる、こんなものっておもって、だから矢吹のこともナメてる。
俺の力石と俺のために世界から下ろされた金竜飛。
金竜飛が執拗に手を洗うの、自分がその手でした全部を水で流したいから。でも染み付いてしまってもう絶対流れることはないから。これからも手を洗い続けるしかない。血を見て発狂する人間をリングと戦場に向かわせ続けるなよ。矢吹の体温の高さは、金竜飛のことファイティングマシーンになりきろうとしたって表現した時に感じられる。
矢吹丈この男は嵐、黄金、煌めき、高い体温。あしたのジョーを見ている間、ずっと背中を追いかけている。早すぎて誰も追いつけない。ジョーを煌めきにしてるものは前に立ちはだかってしまう(丹下段平や白木葉子など)みんなジョーを見ている。追いかける。丹下段平目線であしたのジョーをみてるんですけど、リングの眩しさなのかジョーのまぶしさなのかわからない。力石徹を追いかける矢吹上に我々が追いつけるわけがない。他人に力石徹を見ているとき、誰のこともパンチ込みで語っていない。さびしい。西が複雑骨折でリングを降りる時、ボクシングとったらなにも残らないって西に食ってかかるんですけど、それはお前の事だろ。ボクシング至上主義なので男じゃないとか、死を意味するような描かれ方をする。ボクシングに打ち込んでいた日々は確かにあるじゃねえか。同じ体重と同じ時間を設けて、命の比べっこをしている、その文脈でボクシングにしがみつくのか。生きてる実感をリングでしか味わえない人間。目がキラキラしていて、むきだしの生命を見つめている。ジョーは自分を信じているわけではなくて、おれの力石徹を信じてる。戦ったものの何もかもをひきずりだしてしまうのは、力石徹とそういう戦い方しかしてこなかったから。

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