09「改札を超えて君を抱きしめたんだ」
槇原敬之初となる「提供曲セルフカバーアルバム」Bespokeの公式サイトにはそう記されている。音楽をこよなく愛した彼が、お客様となるアーティストの要望に合わせてメロディと歌詞をしつらえた。
そんなアルバム。全11曲の中で聞いた瞬間にこれはすぐに筆を走らせないといけないと感じた曲があった。
平井堅に提供した楽曲
「一番初めての恋人」
この曲は槇原が手がけた名曲の集合体とも呼べる歌詞が特に印象的だった。
まずメロディに関しては、クセのない槇原らしい/槇原が作ったと聞いてわかるくらいの王道をいっている。(『一緒にテレビでも見よう』や『悲しみは悲しみのままで』のような雰囲気を感じた)
それよりも注目したいのは歌詞だ。
歌詞についてはもっとすごい。
今歌詞を聞いて連想したのは、『ANSWER』『君の後ろ姿』『LOVELETTER』『ミタテ』といった曲のニュアンスを僕自身は感じた。
『改札を超えて君を抱きしめたんだ』なんて表現はまんまANSWERじゃないか。しかも振り返ったら手を振っていたという表現は君の後ろ姿にはなかったものだ。(『僕のものになればいいのに』の話は置いといて。これは端的に僕がその瞬間に感じた率直な印象の話だ)
正直聞いた瞬間、すごい曲があったものだと感じた。
この曲はこのアルバムでも特に際立ったものに見えた。
タイトルになっている「一番初めての恋人」
みなさんもそれぞれ思い当たる人がいるでしょう。
僕は高校1年生の春に初めて彼女ができました。
今から振り返っても懐かしいですが一生彼女なんかできないと思っていた自分にまさか彼女ができるとは!と感じたいことを覚えています。
(当時は野球部でもないのに坊主だったんでなおさら)
けど別れてからほんと思いますよね。
「あぁ、とても失礼なことをしたな」「迷惑をかけまくったな」とか。
そう思うなら初めからちゃんとしてろよって話なんですけど、そのときは全体を俯瞰して見れてないんでなかなかやろうと思ってもできてないんですよね。
そして最近その子が結婚したことを知ったんですけど(まずそもそもそれを知ること自体おかしいんですけど、まぁ結構異質な恋愛だったんで)、その時はただ単純にうれしかったな。「おぉ、おめでとう!」って心の底から思った。
だから今会いたいとかは全くないんやけど、自分の人生で一緒にいてくれた人にはほんとに幸せになってほしい。それが恋人かどうかは関係なく。今元気にしてるんかな。どんな環境にいるんかなっていうのはシンプルに気になる。
まさにそんなよくある気持ちを槇原の旋律と歌詞に載せた歌がラブソングの集大成として平井堅に送られたんだろう。