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激動の冬のメルカートを終えて…ACミランのスカッドをおさらい

 昨季まで約5シーズンに渡ってチームを率いたステファノ・ピオーリ監督が退任し、今季より新体制となったACミラン。新監督として昨季までフランス・リーグアンのリールを率いていたポルトガル人のパブロ・フォンセカ監督を招聘したものの、セリエAでは低調な戦いが続き、2024年12月末に解任。後任としてポルトガルの強豪FCポルトで長きにわたり監督を務めたセルジオ・コンセイソンを招聘した。

 コンセイソン体制となって迎えたスーペルコッパイタリアーナでは、ユベントスとインテルを相手に2連勝でいきなりタイトルを獲得したが、リーグ戦での成績は好転していない。首位ナポリとの勝ち点差を考えると、スクデット獲得が現実的ではない状況だ。最低限の目標となるチャンピオンズリーグ出場権を獲得するべく、コンセイソン監督の意向も聞き入れた上で冬のメルカートで大きな動きを見せた。今回は冬のメルカートを終えたミランのスカッドをポジションごとに紹介していく。

ゴールキーパー

 このポジションは冬のメルカートで動きがなく、フランス代表マイク・メニャンをスタメンとし、マルコ・スポルティエッロが控えを務める形が続く。抜群のシュートストップと足元の技術を兼ね備え、リーグ屈指のGKでもあるメニャンは負傷癖が不安であるが、今季はリーグ戦フルタイム出場を続けている。ダビデ・カラブリアの退団により、新キャプテンに就任しており、更なる活躍が期待される。

 控えのスポルティエッロも実力十分であり、GKのポジションは負傷者が出ない限りは問題ないポジショニングであると言えるだろう。

センターバック

 冬のメルカートで大幅な入れ替えの可能性もあったポジションだが、結果的にスカッドの変更はなかった。放出の話が出ていたのが、フィカヨ・トモリとストラヒニャ・パヴロヴィッチの2選手。トモリにはトッテナムやアストン・ヴィラが獲得に乗り出していたものの、本人がミラン残留を希望。パヴロヴィッチにはトルコのガラタサライが獲得に乗り出しており、クラブ側は放出対象としていたものの、CLジローナ戦やセリエAパルマ戦で突出したパフォーマンスを見せて序列を大きく上げたことで残留することになった。

 上記2選手に、マッテオ・ガッビアとマリック・チャウを加えた4選手で2つのポジションを争うことになるが、4選手それぞれ特徴が異なるのが強みだ。スピードのトモリ、対人守備と空中戦のパヴロヴィッチ、ラインコントロールと安定感のガッビア、ビルドアップのチャウ。セリエAとチャンピオンズリーグの両立による過密日程が予想される中で、この選手層を維持できたことは大きいだろう。

右サイドバック

 大きく入れ替わりがあったのが、右サイドバックだ。ピオーリ体制では下部組織出身であるダビデ・カラブリアが長らく定位置を確保していたものの、今季は夏にトッテナムから加入したエメルソン・ロイヤルが先発起用されることが多くなっていた。途中就任のコンセイソン監督は両選手のパフォーマンスに納得していなかったようであり、エメルソンにはガラタサライ、カラブリアにはイタリア国内への放出の可能性が報じられていた。

 そんな中、クラブは右サイドバックの新戦力としてマンチェスター・シティからカイル・ウォーカーを獲得。2017年夏にシティに加入して以降、長らく右サイドバックの主力を務め、プレミア4連覇やチャンピオンズリーグ初優勝など数々のタイトルを獲得してきた実力者だ。ウォーカーの加入により、エメルソンとカラブリアの序列は下がった。エメルソンはCLジローナ戦でシーズン絶望の負傷を負い、移籍は立ち消えたが、カラブリアはボローニャへ放出されることになった。ウォーカーはデビュー戦となったミラノダービーでその能力の高さを見せつけたが、ウォーカーの控えがアレックス・ヒメネスやフィリポ・テラッチャーノといった経験の浅い若手選手であることが不安材料だ。

左サイドバック

 左サイドバックはテオ・エルナンデスが不動の存在となっており、テオのバックアップをアレックス・ヒメネスとダビデ・バルテザーギの若手選手が務める形が続く。失点に絡むミスが多くなっているテオだが、ミラノダービーでは持ち味の攻撃参加から先制点を演出するなど、復調の兆しを見せた。バルテザーギもテオに代わって後半から出場したパルマ戦で正確なクロスから決勝点を演出するなど成長ぶりをアピール。更なる成長を見せて、テオの座を脅かすことができれば、チーム全体にとっても良い効果が出るはずだ。

ボランチ

 多くのミラニスタが冬のメルカートで補強を望んでいたポジションであったが、クラブはティジャニ・ラインデルスとユスフ・フォファナの2選手に絶大な信頼を寄せており、補強の優先順位が低くなっていた。キャリア最高のパフォーマンスを見せ、リーグ屈指のMFとなったラインデルスと新加入ながらすぐにチームにフィットしたフォファナの存在感は絶大だが、彼らを休ませることが出来ていないのは大きな懸念材料であった。

 そんな中、冬のメルカート期限ギリギリのタイミングでボランチの一人だったイスマイル・べナセルをマルセイユへ放出。代わりにモンツァからウォーレン・ボンドを補強した。べナセルはミラノダービーで交代となった際にコンセイソン監督と口論になったとのことが移籍のきっかけではないかと報じられている。直近はラインデルスのトップ下起用により、中盤の層が薄くなっていたが、攻撃陣の補強も成功したことでラインデルスはボランチ起用が増えるだろう。フォファナに新加入のボンド、右サイドとの兼任となるユヌス・ムサも含めて最低限の選手層を揃えることはできただろう。

右ウイング

 昨季加入のクリスティアン・プリシックが不動の地位を築いている右サイドのポジションは、冬のメルカートでの動きはなかった。プリシックの控えであるサム・チュクウェゼが放出候補となっており、プレミアリーグのフルアムが獲得に乗り出してしたが、移籍は実現しなかった。

 プリシックは今季も攻撃を牽引する活躍を見せており、替えの効かない選手となっている。控えのチュクウェゼも昨季から物足りないパフォーマンスが続いているとはいえ、ビジャレアル時代のプレーぶりを考えるとこんなものではないはず。実力のある2選手を抱えているという点では動く必要がなかったポジションと言える。

左ウイング

 チームの絶対的エースであるラファエル・レアオが君臨するポジション。昨季はレアオ欠場時、ノア・オカフォーが務めることが多かったが、コンセイソン監督から構想外とされ、移籍期限ギリギリにナポリへ放出された。今季はレアオ欠場時、プリシックやアレックス・ヒメネスを据えることが多かった中で、移籍期限ギリギリにフィオレンティーナからリカルド・ソッティルを獲得した。CL出場権を争うライバルチームの主力選手であり、自チームの選手層のアップに加え、ライバルの戦力を削ぐという点でも非常に大きな補強となった。今季はパフォーマンスの波が大きくなっているレアオにとってもライバルの補強は大きな刺激となるだろう。

トップ下

 ピオーリ体制の昨季はルベン・ロフタス・チークが起用されていたポジションだが、今季はロフタス・チークの負傷離脱が続いていることでやり繰りに苦慮していた。直近ではチーム内で最も器用なラインデルスのトップ下起用でやり過ごしていたものの、補強が必要なポジションであった。

 そんな中、移籍期限ギリギリのタイミングでチェルシーからジョアオ・フェリックスをレンタルで獲得した。アトレティコ・マドリードやバルセロナで活躍してきた実力者であり、足元の技術に長けたセカンドトップの選手。トップ下でのプレーも得意としており、コンセイソン監督も高く評価していた選手ということからも大きな補強と言える。デビュー戦となったコッパ・イタリアのローマ戦でいきなりゴールという結果を残した。チームの救世主となれるか。

センターフォワード

 右サイドバック同様に大きな動きがあったのが最前線のポジション。昨季まで主力として活躍していたオリヴィエ・ジルーが退団した今季は、アトレティコ・マドリードからアルバロ・モラタ、ローマからタミー・エイブラハムを獲得。フォンセカ体制では、モラタの起用が多くなっていた。

 しかし、モラタはコンセイソン監督と合わなかったことで冬のメルカートでガラタサライへ放出。入れ替わる形で加入してきたのが、昨夏にも獲得に乗り出していたフェイエノールトのエースであるサンティアゴ・ヒメネスだ。フェイエノールトでは2シーズン半の在籍で公式戦65ゴールと大活躍。CLでの実績もあり、23歳という年齢からも新エースとして期待される。

 今後はヒメネスをファーストチョイスとし、控えにエイブラハムという形が基本となるだろう。16歳の怪物フランチェスコ・カマルダの成長にも期待が高まる一方で、ジルーから背番号9を受け継いだルカ・ヨビッチはコンセイソン体制でも序列が上がっておらず、厳しい状況が続くだろう。


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