「埋み火 Fire's Out」を読んで(親子の苦悩と馬鹿の幸せに興味ある方にお薦め)
消防士である馬鹿な主人公(作中に馬鹿と呼ばれまくる)が、火事現場で遭遇する老人や少年の生い立ちに触れ、様々な家族の形を目の当たりにすることで成長していく物語。「生きる」をテーマに、”家族とは”を教えてくれる本である。
主人公が放火犯の現場を抑える場面から始まり、老人宅の失火火災の現場に疑問点を覚えるところから、物語が展開する。主人公のモノローグ描写が多く、主人公の考え方も深い。そんな本です。
気づきにくいが、体が大きく健康体というだけで、他人にないものを持っている。他の可能性を考えずに、現状に幸せを感じることは、馬鹿だけど、すばらしい。
「自殺を図る老人」「なんでも他人のせいにする男」「お節介な上司」「言いたいことを言い合える友」等々、登場人物の抱えている悩みや考え、そして成長をじっくり読ませ、頭に入ってくる文章で書かれている。
この作者が描く人物は、警察や消防士と堅い職業が多いが、人間味に溢れている。社会のルールにしばられながらも、ひたむきに生きることについて、教えてくれる。
人が働く事、生きていく事を簡潔にていねいに描写されていて、面白い。人はこうやって悩みながら成長するのかなと感じさせてくれる。
「親子」「生きる」「馬鹿の幸せ」に興味ある方にお薦めです。
出版社:講談社 タイトル:埋み火 Fire's Out 作者:日明恩 7/21読了