見出し画像

大東カカオ | 「豆」と「人」、チョコレートの可能性を広げていくために

「大事なのは、誰がつくったカカオ豆か。国や産地で判断してはいけないんです」

100年の歴史を持つチョコレート原料専業メーカー、大東カカオの研究開発部門を率いる春成麻未さんはそう語る。

食の世界には、様々なプロフェッショナルが存在する。
地域資源を活かし、実りの豊かさを伝える生産者。素材の価値を知り、加工することで可能性を広げる製造メーカー。素材を組み合わせ、手を加えることで背景にある思想と共に食べ手へと届けるシェフ。


今日の食産業を支えるのは、彼らプロの仕事に対するシビアな姿勢だ。そしてプロ同士の密接な連携によって、生産の場は醸成されていく。

「豆」の奥には「人」がいる

画像9

大東カカオのチョコレート製造は、豆の仕入れから始まる。

「仕入れの軸は昔と比べてかなり変わりました。ミルクチョコレートが主流だった時代には酸味の少ないエクアドル産やベネズエラ産のカカオ豆が中心でしたが、今の消費者はチョコレートを食べ慣れた世代。味覚も広がってきています。
最近の傾向で言うと、ドミニカやマダガスカルなど、豆の果実感がダイレクトに味わえるものへの関心が高まっている感覚がありますね」

画像8

でも、と春成さんは続ける。

味や香りを、国単位だけでとらえてはいけないと思っています。土地ごとの傾向はあっても、結局つくるのは人。傾向は傾向として、豆を選ぶ時には生産者単位で話をしていきたい」

今日の大東カカオには、良質で個性豊かなカカオ豆が数多く存在する。それらは、カカオ豆のプロである生産者一人一人と真摯に向き合ってきた彼らの歴史の証でもある。

研究開発部の挑戦

スクリーンショット 2021-08-25 10.18.44

大東カカオ研究開発部では、カカオマスの開発に力を注いでいる。

カカオマスとは、カカオ豆を発酵、焙煎、磨砕しペースト状、またはそのペーストを固形状に固めたもので、同じ豆を使っても各工程をどのように踏んでいくかでその特徴は大きく変化していく。チョコレートをつくる際にはカカオマスを数種類ブレンドしたものをベースに、砂糖・粉乳・植物油などを加えて味わいを形成する。つまり、カカオマスがチョコレートの最終的な味わいを左右すると言っても過言ではない。

大東カカオ_カカオマス

新たに仕入れたカカオ豆を元にした開発は勿論、手持ちのカカオ豆の可能性を広げるためにそれまでとは違うアプローチで再開発に着手することも。素材の力を信じる研究員たちの強い意志によって、プロジェクトは推進されていく。

「私たちがつくるのは製菓の原料としてのチョコレートなので、やはりシェフたちにインスピレーションを与えるようなものにしたいと考えています。そのためには、一つひとつが何かしらの個性を持ったものに仕上げていかないといけない。カカオマスはそのその土台にあたる部分ですね。

味や食感という目に見えないものを形にしていく上では、周囲とのコミュニケーションが必要不可欠です。“硬い”という言葉ひとつとっても、一人一人の考え方は当然違うもの。物理的に硬いのか、あるいは触った時にねっとりしてることを“硬い”と表現しているのか。現場のシェフ、そしてチームのメンバーとも日々根気強くやり取りを繰り返して、イメージをできるだけ具体的に共有していくことが重要です」

カカオマスの数があればあるほど、つくれるチョコレートの可能性は広がっていく。だからこそ、彼らは挑戦を続けるのだ。

画像7

2020年に開催されたInternational Chocolate Awardsのアジア・太平洋大会で銀賞を受賞した「Dominican Republic cacao68%」は、春成さんがリーダーを務めたチームが開発を手掛けたカカオマスでつくられたチョコレートだ。

International Chocolate Awards:2012年に設立されたチョコレートの国際コンクール。通称ICA。ブランドイメージや広告に惑わされることなくチョコレートの品質を公平に審査することで、それに携わるチョコレートメーカーや、カカオ農家を支援することを目的としている。味だけでなく、カカオ農家とのフェアトレードや支援も評価のポイント。
各国の著名なショコラティエ、パティシエも多く出品している世界的な大会において、原料メーカーである大東カカオの参画および受賞は大きな注目を集めた。

この時使用したカカオ豆は、ドミニカのとある生産家のもの。新たに仕入れたカカオ豆のなかから際立ってポテンシャルの高いものを発見し、その出会いに感銘を受けた春成さんたちは、豆の良さを最大限活かすカカオマスづくりを敢行。3種のロースターを使い分け、温度の微調整を繰り返すなど、計30回以上にわたり試作を行ったという。

「納得できるまでやり直して、正直すごく良いものを作れたなという自信がありました。なので受賞のニュースは本当に嬉しかったですね」

可能性を掴みにいく

画像5

しかし一方で、研究開発部が主体となり新たなカカオマスをつくっても、ユーザーのニーズと合致せず日の目を見ないままになってしまうケースも多かった。そこで2018年に新しく動き出したのが豆プロジェクトだ。

豆プロジェクト、通称「豆プロ」の中心となるのは研究開発部、営業部、購買部など各部門の代表者6名。プロジェクトでは部署を超えて連携し、「豆の仕入れから製造まで」よりもさらに踏み込んだ「豆の生産から」一丸となって取り組むことで、ユーザーのニーズに寄り添った新しいカカオ豆の獲得を目指しているという。

メンバーによる現地農園の視察も定期的に実施。過去には春成さんもインドネシアを訪問し、現地の生産者と交流を深めた。

同じ地域であっても、発酵や管理の方法は農園ごとに異なる。
一軒一軒の状態をチェックし、その土地や気候に合った生産環境を生産者と一緒になって整えていくのも、豆プロジェクトの重要なミッションだ。

file-4のコピー

栽培、発酵、乾燥、管理。豆プロジェクトでは、生産者はパートナーと捉えあらゆる工程を共に見つめていくことで、質の高い味と香り、そして安定供給の両軸が叶うカカオ豆の調達に挑んでいる。

それに加えて、営業部と購買部のメンバーが外から持ち帰った声と研究開発部の創作意欲がダイレクトに交わることによって、これまで以上に多角的な視点で開発が進むようになったのも大きな収穫だと春成さんは言う。

「良いものづくりのためには生産者の方々や社内の連携が欠かせません。私たち自身が心から「良い」と思えるものをつくって届けていくために、できることをこれからもっと考えていきたい。
求められたものをただ形にするだけじゃなくて、さらにその期待を超えるものをつくるのが、良い仕事だと思うんですよね」

■大東カカオ株式会社
〒153-0064 東京都目黒区下目黒2-3-23(本社)
HP:https://www.daitocacao.com/index.html
Facebook:https://www.facebook.com/daitocacao