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茶師十段の山口真也さんに聞いた、抹茶とお菓子のちょうど良い関係

お菓子づくりにおける抹茶選びについて、お茶の鑑識眼を競う「全国茶審査技術競技大会」にて最高の称号「茶師十段」を当時史上最年少となる32歳で取得した星野製茶園の山口真也さんにアドバイスをいただきました。

山口真也(星野製茶園)
福岡県八女市星野村生まれ。「星野製茶園」専務取締役。
2010年、2011年の「全国茶審査技術競技大会」で史上初となる2年連続・3度目の優勝を飾り話題に。その後当時史上最年少となる32歳で茶審査技術の最高位「茶師十段」を取得。

「何よりも茶葉の特性を知ることが大事だと思います。いわゆる製菓用、業務用と言われる抹茶は、茶道用の抹茶の下のグレードと位置付けられていますが、品質が劣るかというとそういうわけではありません。
茶道の世界における抹茶は香味のバランスが何より重視されるため、一番茶と二番茶であればよりふくよかで香り高い一番茶が、一番茶のなかでも特に上品な旨みのある茶葉や選別された部位が上質とされます。一方、二番茶や製菓用の抹茶は風味や色味といった点で一番茶には劣りますが、その分しっかりとした苦味の主張があります。お菓子に混ぜ込む上では、その苦味が良い働きをすることも多いのではないでしょうか」

香りか、味か、色味か。抹茶の「何」をお菓子で表現したいのかを考え、それに適した抹茶を選ぶことが重要なのだといいます。

さらに、調理の際の注意点についても伺いました。

「抹茶特有の風味は高温になると飛んでしまい、独特の嫌味が出てきます。なので実は加熱するお菓子とそもそもあまり相性が良くないんです。ですがそれを踏まえた上で、できる限り品質を落とさない工夫は可能です。

たとえば、クッキーを焼く時。一般的には160〜180℃程度で焼成するレシピが多いと思いますが、そうすると香りが飛んで抹茶の焼けた匂いだけが残ってしまう。ですがこれを通常よりも低温で焼き、かつで素早く冷ますと色も風味もある程度保つことができるんです。ただし食感としてはホロホロのいわゆるソフトクッキーになるので、カリッとしたクッキーをつくりたい場合には適しません。抹茶の風味か食感か、どちらを大事にしたいお菓子なのかを考えながら調整していただくと良いと思います。

できたお菓子をショーケースに並べていただく時に気をつけていただきたいのが「光」。抹茶は紫外線に弱いので、そのままショーケースに入れてしまうと早ければ30分から1時間で色も風味も変わってしまいます。なので、できるだけ光に晒さないよう意識を向けていただくことが重要です。

あるパティスリーでは、ロールケーキに抹茶のクリームを使う際、ケーキの両面にアルミ箔を貼って中のクリームを守る工夫をされていました。これはあくまでも一例ですが、有効な手段のひとつだと思います」

一時期の抹茶ブームを経て、「抹茶味」はある種の概念として大きく波及しました。しかし人気が出ると粗悪品も出回るようになるのが世の常で、安価な粗悪品が広まった結果、その味を「これが抹茶だ」と誤認する消費者、作り手は今もなお多いと山口さんは言います。

「丁寧に育てて加工した本物の抹茶は決して安くはありません。それに、適切に扱うためにはある程度の知識と手間がかかります。
ですが、良いものを良い方法で使っていただければ、抹茶本来の香りと旨味にきっと驚いていただけると思います。素材の魅力を知って、それを損なうことなく消費者の口まで届けるにはどうしたら良いかを思い浮かべながら使っていただけたら、私たちとしても嬉しいですね」

星野製茶園(記事監修)
〒834-0201 福岡県八女市星野村8136-1
https://www.hoshitea.com/