職人たちが守るもの
生産は、「人」と、道具や機械など「手段」の密接な関わり合いによって成り立っている。
道具は人の力を拡張するために生まれ、人の手だけでは辿り着けなかった色んな景色を見せてくれる。一方で、人の知識や技術、経験の集積によって、道具はその真価を発揮する。
江戸時代中期創業、田中製粉。
福岡県八女市亀甲にある工場には、全部で14台のロール式製粉機がずらりと並ぶ。重厚な佇まいと、小麦を挽く豪快な音の響きに包まれた工場内の熱気。昭和20年代に機械を導入してから、既に70年以上が経過している。
古い機械を維持するには、それだけで多くの時間と手間がかかる。それでも彼らは理想のものづくりを追い求めて、代々伝わる製粉機を大切に守り抜いてきた。
「機械ひとつ変われば、粉はまったく違うものになる。うちの粉が好きだと言ってくださる方がいる限り、求められる限りはできるだけ応えていきたいと思っています」
田中製粉の八代目社長を務める田中宏輔さんはそう語る。
「父も祖父も、機械のことに関してはとにかくストイックな人でした。初代も水車の仕立人だったと聞きますし、そういう血筋なのかもしれないですね。
それに最近は、近くの地域でも新しいことにチャレンジする若い農家さんたちが増えてきました。彼らの小麦を少量でも引き受けて、少しでも多くの人に食べてもらえる形にすることで彼らを応援したい。
これは地域の繁栄にもつながる話ですし、私たちのような小規模の製粉工場だからこそ実現できること。この機械を大事に守っていくことで、そのつとめを果たしていきたいと思います」
田中製粉
〒834-0065 福岡県八女市亀甲405ー1
https://www.tanakamill.com/
https://www.instagram.com/tanaka_mill/