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月刊ショスタコーヴィチ 番外編 バレエ鑑賞のすゝめ【中級】🩰

執筆者:141
Orchestra Fontana といえば、ショス10!、そう、ショスタコーヴィチ!!
本記事では、ショスタコーヴィチをバレエという点から覗き見ていきます。


ショスタコーヴィチのバレエ作品

みなさんはショスタコーヴィチのバレエ作品をご存じですか?
先日の バレエ鑑賞のすゝめ【初級】の記事では、三大バレエについて紹介されていました。バレエといえば、やっぱりチャイコフスキーという方も多いのではないでしょうか。
本題に戻ります。
ショスタコーヴィチも三作のバレエ作品に携わっています。
それが、《黄金時代》、《ボルト》、《明るい小川》 の三作品です。
「あれ、なんかこの文字列どっかでみた気がする…」そんなFontana note愛読者のあなた、素晴らしい!!!
実は、《黄金時代》は 音楽とスポーツにて、《明るい小川》は 月刊ショスタコーヴィチ vol.2 続入門編にて既に登場しています。
バレエ有識者であっても、なかなかショスタコーヴィチのバレエ作品を鑑賞したことがある方は少ないかもしれません。というのも、この三作品はどれも社会主義的なテーマによるものであったにもかかわらず、西欧の当時の潮流の影響を受けたものであり、ショスタコーヴィチの存命中にはなかなかその価値は評価されず、上演機会も設けられませんでした。スターリンの死後になって、再評価されるようになってきました。
現代になってどの作品も再演されるようにはなったものの、振付が改定されたり、大幅に物語の時代設定が変更されたりと初演時の三作品を見る機会は限りなく少ないと言えます。
《黄金時代》については、2016年の復元再演時(グリゴローヴィチ改訂版)のプロモーション動画がYouTubeにて公開されていますので、興味ある方は是非こちらをご覧ください。


ショスタコーヴィチとバレエ

バレエ《黄金時代》では、サッカーチームが登場し、ショスタコーヴィチ自身もサッカー狂であったことはよく知られています。
では、バレエとの付き合い方はどうだったのでしょうか。
三大バレエでおなじみのチャイコフスキーは大のバレエ好きでよく劇場にも足を運んでいました。ショスタコーヴィチもチャイコフスキーと同じく、バレエ愛好家でバレリーナに恋をしていたとまで言われています。ショスタコーヴィチの母親が大のバレエ愛好家であったことから、一家でバレエに関心を抱いていたようです。妹のゾーヤはバレエを学んでいたことからもこのことをより理解することができます。
ショスタコーヴィチとバレエの関係については、これまた紹介し始めるとキリがないのですが、『驚くべきショスタコーヴィチ』にてより詳しく紹介されています。


ショスタコーヴィチの音楽が使用されているバレエ作品

ショスタコーヴィチの手がけたバレエ音楽は先述した三作品ですが、ショスタコーヴィチの音楽に魅了された後世の振付家によって、本来はバレエのために作曲されたわけではないショスタコーヴィチの音楽を基に数々のバレエ作品が生まれています。ここではその一部を紹介します。
バレエ《赤と黒》
(小説『赤と黒』を基とした同名バレエ作品とは異なる作品です。)

音楽:ショスタコーヴィチ 作曲 交響曲第1番
バレエ・リュス・ド・モンテカルロのレパートリーの一つで、バレエ・リュスを牽引したディアギレフに見出されたレオニード・マシーンによって制作が進められた作品です。
このレオニード・マシーンという方、 "交響曲を用いてバレエをつくる" ということを本格的に行った最初の人物ともいえる人物です。この作品の前にはチャイコフスキー作曲 交響曲第5番やブラームス作曲 交響曲第4番をもとにバレエ作品を産み出しています。
今日、世界中の多くのプロ・バレエカンパニーのレパートリーとなっている《Symphony in C》や《ジュエルズ》などの作品が生まれたのもマシーンによるブレイクスルーがあったからかもしれません。もちろん例示したこれらの作品はジョージ・バランシンというマシーンと共にバレエ・リュスで活躍した振付家による作品ではありますが。
この作品の美術はアンリ・マティスが手がけており、ショスタコーヴィチの音楽を色に置き換えて考えてみると白・黒・赤・青・黄の5色になるというマティスの解釈からこのような作品名がついています。 作品の構成は1幕4場で、1楽章1場という対応関係で展開されています。
「興味がある!」という方は、是非以下の論文をご一読ください!
森美樹. (2010). アンリ・マティスによる, バレエ 「赤と黒」 のための舞台装飾について. 研究紀要= Bulletin of Aichi Prefectural Museum of Art/愛知県美術館 編, (16), 5-39.

《Concerto DSCH》
音楽:ショスタコーヴィチ 作曲 ピアノ協奏曲第2番
振付家アレクセイ・ラトマンスキーがニューヨーク・シティ・バレエ団のために制作した作品の一つです。ニューヨーク・シティ・バレエ団は先ほど少し登場したバランシンによって設立され、バランシン作品を大切なレパートリーとして上演を続けているバレエ団です。
1幕3場からなり、《赤と黒》と同じく、1楽章1場で作品は進んでいきます。
振付家のラトマンスキーはこの《Concerto DSCH》の制作前には、ボリショイ・バレエ団にて《ボルト》、および《明るい小川》の再構成・再演に携わっていた人物です。本作品以外にも 交響曲第9番、室内交響曲、ピアノ協奏曲第1番のそれぞれに対して振り付けをした ショスタコーヴィチ三部作 と呼ばれる作品群を残しています。
YouTubeにてニューヨーク・シティ・バレエ団によるプロモーション動画を視聴することができます。

《ニジンスキー》
音楽:ショスタコーヴィチ 作曲 交響曲第11番、
   ヴィオラとピアノのためのソナタ より 第3楽章 など
バレエの変革者でありバレエ・リュスのダンサーであった、ヴァスラフ・ニジンスキーの生涯を描いた作品です。ハンブルク・バレエ団の芸術監督であるジョン・ノンマイヤーによって振付・演出が行われました。ジョン・ノンマイヤーはイプセンの戯曲に基づく《ペール・ギュント》という作品も残しています。(音楽はグリーグによるものではありませんが)
2幕構成の本作品の音楽は、1幕はリムスキー=コルサコフ 作曲 交響組曲《シェヘラザード》が中心に、2幕はショスタコーヴィチ 作曲 交響曲第11番が中心に据えられています。第2楽章に合わせてヴァスラフ・ニジンスキーの兄であるスタニスラフのソロは圧巻で、国際的なバレエコンクールの一つであるローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリー部門の課題になったこともあるほどです。
(2017年の優勝者であるミケーレ・エスポジートはこの作品をファイナルで踊っています。)
芸術と戦争という二つの間で揺れ動いたニジンスキーとショスタコーヴィチがこの作品のなかで交錯しています。
YouTubeにてハンブルク・バレエ団によるプロモーション動画を視聴することができます。



いかがでしたでしょうか…?
少しショスタコーヴィチとバレエ、ショスタコーヴィチの音楽とバレエの関係について知っていただけましたでしょうか…?
これからもっとバレエを楽しみたいというみなさん、この記事ではバレエの中の主に音楽と振付家という点に着目しました。
音楽や筋書きが同じでも振付家が異なると全く別の作品のように感じられることもしばしば。
振付家の名前に少し注目してみたり、同じ作品の振付家が違う公演を見比べたりするという楽しみ方もあります。是非、たくさんの作品を見てお気に入りの振付家を見つけてみてください。
ショスタコーヴィチ好きのみなさん、バレエとショスタコーヴィチを紐づけることで新たなショスタコーヴィチの魅力に気づいていただけたのではないでしょうか。
ここで紹介したバレエ作品も興味が湧いた方は是非ご鑑賞ください。
この記事を読んでくださったみなさん、是非10月9日は福岡市民会館へ!!!!!

[参考記事]


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