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歪め!ストリングス

執筆者: つつつ

「私もバイオリンを歪ませたい!でも方法が分からない!!!」

誰しも一度はそう思ったことはあるでしょう。
本記事ではそんな皆さまに向けて、オーケストラの弦楽器の音を歪ませるために必要なものと使い方を紹介します。

「なんのこっちゃ?」という方はひとまず次の動画をご覧ください。

エレキギターのようにギュインギュインと鳴っていますね。これが歪 (ひず) ませた音です。
歪ませた弦楽器の音からしか摂取できない栄養素がこの世にはあります。
対象読者が100%になったところで早速紹介開始です!

はじめに


本記事の目標

機材知識ゼロの方でも、自宅で弦楽器を歪ませられるようになる

結論

エレキバイオリン、歪み系エフェクター、アンプをシールドケーブルで繋ぎましょう。
そして各機材を後述のように設定して演奏すればバッチリバキバキに歪みます。

筆者紹介

2cellos (冒頭の動画) のコピーバンドをやっていたOrchestra Fontanaチェロ奏者

断り書き

  • 記事にはバイオリンと書いていますが、ビオラ、チェロ、コントラバスも同様の方法でOKです

  • 補足箇所は読み飛ばしてOKです。気になる項目があれば読んでみてください

  • 紹介機材は写真を載せるためにAmazonのリンクを掲載していますが、楽器や音響機器の専門通販サイトであるSOUND HOUSEさんが個人的にはおすすめです

1. まず、機材を揃える


楽器、エフェクター、アンプ、ケーブルが必要です。それぞれを紹介します。

楽器

エレクトリックバイオリン (エレキバイオリン) という、音を電気信号で出力する楽器を使います。
箱部分が無く、生音が出なくなっているものが多いです。

詳細は以下の記事にて分かりやすく紹介されていました。
「エレキバイオリンってなんだろう?」(サウンドハウススタッフブログより)

本当はおすすめ楽器を書きたいのですが、私は弾き比べた経験がないので書けません…。
「エレキバイオリン おすすめ」などで検索して探してみてください。私はヤマハのサイレントチェロの一番安いものを使っています。
実店舗だとクロサワバイオリン池袋店さんがエレキバイオリンを豊富に取り扱っているそうです。

弦、弓、松脂などは普通のバイオリンと同じものでOKです。肩当ては専用のものが付いている or いらないことが多いです。

なお、構造上アコースティックバイオリンとは結構違う音色がします。
あの空気感や艶感をイメージしていると違いに驚くと思うので、店舗や動画で実際の音を確かめてから購入することをおすすめします。

補足: 普通のバイオリンは歪ませられない?
ピエゾピックアップという箱の振動を電気信号に変える装置を使えば、この記事の方法で可能です。が、バイオリン本体から出る音とアンプから出る歪んだ音が両方とも鳴ることにはなります。
マイクタイプのバイオリン用ピックアップもありますが、こちらはケーブルの種類が異なるためボーカル用のエフェクターを使うことになります。この場合は使用するアンプやケーブルも異なってくるため本記事の方法そのままは使えませんが、大まかな考え方は同じです。

エフェクター

バイオリンを歪ませるためには「歪み系」という種類のエフェクターを使います。
大きく分けると以下の3種類で、私の今回のおすすめはディストーションです。歪み有り or 無しの差をしっかり表現できます。

  • オーバードライブ: 比較的軽めで暖かい歪み

  • ディストーション: バリバリと激しい歪み

  • ファズ: 音が潰れるくらいの極度な歪み

Youtubeに聴き比べのショート動画がありました。実際に聴いてみたい方はどうぞ!

ディストーションにも色々な製品がありますが、BOSSのDS-1はスタンダードかつお手頃だと思います。
ちょっとお金をかけてもよい方はマルチエフェクターという多機能版だと歪み以外のエフェクトも楽しめます。同じくBOSSのGT-1がコンパクトかつ多機能でおすすめです。

なお、コントラバスの方は低い音が出せるエレキベース用のエフェクターを選んでください。
バイオリン、ビオラ、チェロはギター用でOKです!

補足: 歪み以外のエフェクターはどんなものがある?
ありすぎて紹介しきれません!
エレキバイオリニストの方による音色紹介動画のリンクを貼ってお茶を濁します。
この他にも山彦を付けるディレイ、勝手にハモってくれるハーモナイザー、録音したフレーズを繰り返すルーパー、など色々あります。
ちなみに本文で紹介したマルチエフェクターGT-1には全部入っています。凄すぎ。


アンプ

エレキバイオリンの音を出すためにはアンプが必要です。電気信号を増幅してスピーカーで鳴らす機械です。
自宅用なら卓上型かヘッドフォン型のアンプがコンパクトでおすすめです。

また、残念ながらエレキバイオリン用のアンプはおそらく売られていません。
代わりに何を使うかは好みですが、私のおすすめはベース用アンプです。
再生できる帯域が広いため、バイオリンからコントラバスまでいずれの用途でも元の楽器に近い音が出ると思っています。

卓上型とヘッドフォン型アンプのおすすめ入門機は以下です。
・卓上型 Blackstar FLY3 BASS
・ヘッドフォン型 VOX VGH-BASS

補足: 他の種類のアンプは使えない?
問題なく使えます。音がそれぞれ異なり、どれを選ぶかは好みです。
可能ならお店やスタジオで色々試してみるのが一番です。以下は私の感覚です。
ギターアンプではベースの低い音は出ないので、コントラバスの方はベースアンプかDIを使ってください。

・ギターアンプ
歪みの音だけ考えるとこれが一番好き。輪郭がはっきりして太い歪みになる。
歪ませない音 (クリーントーン) も若干 (機種によってはかなり) 歪む。クリーントーンを使わないならエフェクターを使わずギターアンプだけで歪ませるのも手。
実はベースアンプに比べて再生帯域が狭めなため、ストリングスのきらびやかさが減ってしまう印象。
私はスタジオではRolandのJazz Chorus-120に繋ぐこともあります。これはかなりクリーンかつ再生帯域が広めなので。

・エレクトリックアコースティックギターアンプ
エレキストリングス用にエレアコアンプを使う方もいる。クリーントーンはベースアンプよりもさらに歪みが小さい音が出る。
歪みエフェクターをかけた音はベースアンプのほうが太くていいかなと思っているけど正直好み次第。

・DI (ダイレクトインジェクションボックス)
アンプを使わずミキサーから音を出すための機材。最も楽器そのままの音になるが、DIだけでは音は出せないので今回の記事では紹介対象外。
スタジオやライブハウスではこれを使うことになりがち。ベースやギターのアンプはバンドメンバーが使っているため。
行くことになったらお店の人に使い方や借りられるかを聞いてみてください。

ケーブル

ギターとエフェクター、エフェクターとアンプを繋ぐためにケーブルが必要です。
エレキギターなどで使う「シールドケーブル」というものを使えばOK。楽器用のノイズが乗りにくいケーブルです。
とりあえず最初は長さが足りれば安いものでも構わないと思います。

私はちょっとだけお金を出して、CUSTOM AUDIO JAPAN (CAJ) というメーカーのケーブルを使っています。
実はケーブルでも音がちょっと変わるのですが、CAJは極力元の楽器の音を変えないことを意識されているそう。

ヘッドフォンタイプのアンプを使う場合は、エフェクターとアンプ間のケーブルはヘッドフォンに付いているので不要です。
もしエフェクターを2つ以上使いたい場合は、エフェクター間はパッチケーブルという短いシールドケーブルを使うとコンパクトになります。

2. 接続する


機材の準備ができたらケーブルで楽器のOutputとエフェクターのInput、エフェクターのOutputとアンプのInputを繋ぎましょう。
エフェクターのOutputが複数ある場合はMONO、もしくは単にOutputとだけ書かれている方に繋いでください。

このとき1つだけ注意点があります!
ケーブルの抜き差しやエフェクターの電源接続、楽器・アンプの電源ON/OFFはアンプのボリュームつまみが0になっていることを確認してから行ってください。
そうしないと「バツッ!」と大きな音が出て最悪の場合は機材が壊れます。
各機材のつまみの操作やエフェクトの切替はアンプから音が出ている時に行っても大丈夫です。

3. 鳴らす


無事接続が済んだら電源を付け、以下のように各機材のつまみを設定してみましょう。ギャンギャンの歪みサウンドが鳴るはずです!
もしも鳴らない場合は私が想定していないつまみがあると思うので調べてみてください。

  • 楽器 LEVELはMax、EQは真ん中に。もし何も無ければ単にケーブルを挿せばOK

  • 歪みエフェクター とりあえず全部真ん中にしてON

  • アンプ とりあえずGAIN、EQは真ん中に、他は0に。最後に音を聞きながらLEVELをちょうどよい程度まで上げる

歪みの程度はエフェクターやアンプのGAINとLEVELのバランスで調整できます。GAINで歪みの程度を決めて、LEVELで音量を決めるイメージです。
他の色々な設定も、とりあえず音を出しながらつまみを回してみたり、ネットで調べてみたりすると分かっていくと思います!

補足: 各つまみの役割は何?
主なつまみの役割は以下です。つまみの名前や種類は機材によって様々なので、以下にない場合は調べてみてください。
・GAIN (INPUT, DIST, DRIVE, VOLUME): 上げると音量と歪みが増す
・LEVEL (OUTPUT, MASTER, VOLUME): 上げると音量が上がる
・TONE (FILTER): 上げ下げすると音色が変わる。お好みで調整。
・EQ (BASS, MIDDLE, TREBLE): 回すと低、中、高音域の音量が変わる。
VOLUMEは機材によってGAINのこともLEVELのこともあります…。
その他、アンプにREVERBなどのエフェクトが付いていることや、エフェクターに細かな音色調整のつまみが付いていることもあります。

4. 楽譜どうすんねん問題


無事に音が出た後に困ることは「バイオリンを歪ませた曲の楽譜がねぇ!そもそもバイオリンを歪ませた曲がねぇ!」だと思います。
楽譜を使いながら楽しむならば、以下のような方法がおすすめです。

  • クラシックの楽譜を歪ませて弾いてみる
    普通に楽しいです。特にバロックは親和性が高いと思います。

  • ポップスやロックの曲を弾いてみる
    この世界は耳コピが主流なのですが、有名曲は「バンドスコア」という楽譜もあります。
    その名の通り全パートが載っている総譜で、五線譜もあるのでこれを弾くのも楽しいです。ギターやベースパートも弾けます。

慣れてきたら既存曲の耳コピやアレンジ、作曲にチャレンジしてみるのも楽しいですよ!

おわりに


お疲れさまでした!これであなたも夢のバキバキ歪みストリングスデイズを満喫できます!
きっとこの先バンドを組んでみたり録音して動画を作ってみたりすることと思います。
やってみたいことや初めて使う機材に出会ったときにはネットで調べたり友達やお店の人に聞いたりしながら、ぜひあなただけのグッド歪みライフを開拓してみてください!!

なお、Orchestra Fontanaの演奏会では弦楽器は歪まない予定です。あらかじめご承知おきください。

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