タイプ別噴水のすゝめ
執筆者:Tmg
公園の広場、学校の中、街の広場など、「噴水」は意外と身近に存在し、ある人はくつろぎ、またある人は待ち合わせをして思い思いの時間を過ごす。
水辺に人が集まるのは動物的本能を刺激するからという説もあるが、壮大な滝やせせらぐ川、波打ち際に見入るように、無形な水がある意志に従い移ろう様子は見ていて飽きないからという理由もあるだろう。
噴水の起源は古代メソポタミア文明まで遡ると言われ、古代ローマの都では技術の象徴として、ルネサンス期には富の象徴として歴史を刻んできた。
日本で最初に設置された噴水は石川県「兼六園」(1861年)と比較的歴史は浅めではあるが、1960年頃より全国各地にユニークな噴水が数多く設置されてきた。
(ちなみに"西洋式"噴水が日本で初めて設置されたのは1877年の第1回内国勧業博覧会会場中央の人工池中という説もあり、開催日の8月21日は「噴水の日」となっている(噴水落成は9月8日))
あなたにも「噴水」と聞いて思い浮かぶ風景がいくつかあるのではないだろうか?
ふんすい
読んで字の如く噴き出す水であった。
しかしながら、偏にふき出ると言っても色々な噴き出方がある。
また、噴水のイタリア語である"fontana"には給水所や泉といった意味も含まれ、日本語においても水辺をセットでイメージされた方も多いだろう。
今回は日本国内を例に噴水を分類する試みを実施した。
●超巨大噴き出し型
月山湖大噴水 @山形県西村山郡西川町
まずは、噴き出すことに重きを置こう。
噴射高は112m。
高さもさることながら、泉もダムであるというからその壮大さは観るものを圧倒するだろう。冬季(12月~3月)は休業しているため要注意だ。
日本各地にダムという地形を活かした噴水は見られる。
中央に一本超巨大噴き出し型を据え、後述の多数吹き出し型や噴霧型などで周りを彩るパターンも多い。
ちなみに、世界1の高さを誇る噴水はのキング・ファハドの噴水@サウジアラビア(約260m)だそうだ。
●装飾型
ふれあいの泉 @岡山県岡山駅前
特徴ある形のモニュメントから噴出しているタイプである。後述の銅像垂れ流し型とは異なり、個性的かつ多数種類があり、分類が困難である。(ハバロフスク噴水@ロシア、エルアラメイン噴水@シドニーに似た噴水が出てくる)
これに近い噴水として、
つつじが岡公園大徒渉池(おおとしょういけ)@群馬県
などが該当すると考えられる。
また、福岡市海浜公園@福岡県もこのタイプに分類されると考えられ、モニュメントに対し水が沿って美しい情景を演出している。
このタイプの噴水は水が出ていない時は、どこかもの寂しげで存在に違和感を感じる。
●銅像から垂れ流し型
上野恩賜公園 正面口@東京都 など
小便小僧やマーライオン@シンガポールなどもこれに分類される。
先ほどの装飾型とは異なり、生物やオブジェクトのある程度水が出るべき場所から垂れ流されている。
水が流れていなくても銅像と泉で成立しており、いわゆる遊び心である。
●銅像びしょ濡れ型
岐阜公園@岐阜県
山下公園・水の守護神像@神奈川県 など
オブジェクトはあるが、そこからは水が噴出していない。
オブジェクトを装飾するための(時にはオブジェクトに向けて水が放たれているものもある)噴水。
冬は寒そう。
●オブジェクトメイン型
東京ディズニーランド・リゾート@千葉県
ユニバーサルスタジオ・ジャパン@大阪府
のエントランスに設置されているものなどが挙げられる。
銅像びしょ濡れ型に近いが、もっとオブジェクトに重きが置かれている噴水。
「あ。噴水か!」という感じのものが多い。装飾型と比較して、水が噴出してなくても成立する。
●多数吹き出し型
テーマパークや複合商業施設、リゾートホテルなどでよく見られる。
噴出する高さや角度、タイミングを音楽や照明などと組み合わせ「噴水ショー」として演出されているものもある。
円形に並ぶものもあれば、直線上に並ぶものもある。
●噴霧型
井の頭恩賜公園@東京都 など
噴水の分類というよりは、噴出し方の分類に近いが、霧状やシャワー状に水を噴出し、演出効果を得ている。
これまであげてきた噴水例で組み合わせて使用されることが多い。
●地上噴出し型
門司港駅広場@福岡県 など
こちらも各地に多数存在する。
夏は子供で賑わうが、トラップ的要素もある。
規模や勢いは様々。
●情報投影型
福岡市中央区役所前@福岡県
大阪駅の噴水時計@大阪府
金沢駅前@石川県 など
水の噴出により、時間や地名、絵などを投影する噴水で公共施設などに設置されていることが多い。
常設されていれば、水へのプロジェクションマッピングもこのタイプに当てはまるかもしれない。
●番外編:チョコレートファウンテン
発祥はアメリカだが、ビュッフェスタイルの広がりに伴い国内で大流行。れっきとした噴水である。昨今の情勢で自粛の傾向にある。段数や規模は装置によって異なるが、食材に塗り易いからか後述の溢れ型がそのほとんどである。
●溢れ型
段数や溢れ方には様々あるものの、「噴水」と言われてイメージし易い形ではないだろうか。
冒頭の写真の噴水もこれに該当するだろう。
小規模でも成立し、全国に多数存在する。
●王道噴出型
兼六園@石川県
モネの庭@高知県 など
いわゆる、水が湧き出る「泉」のイメージである。
1本のものもあれば複数本のものや、噴出角度が垂直ではないものもある。
また、噴霧型と組み合わされていることも多い。
噴出し広場などに設置する以上、ある程度の泉の大きさが必要となる。
あなたが思い浮かべた噴水はあっただろうか。
今回調べる中で、自分が見てきた噴水はごく一握りであると痛感した。
ざっと噴水を分類してみたが多くの種類や形式があり、奥深い世界である。
Fontana
集まったからには何かが始まるのである。