【創作】ピザまん

最後に中華まんを食べたのはいつだろう。コンビニの会計待ちの列に並びながらふと考える。でも上京したての私にとって、コンビニの肉まんもピザまんも高級品だったから、レジで「あと肉まんも」の一言が出なかった。そもそもコンビニで1000円以上買い物をするなんて、煙草を吸う人くらいだと思っていた。そんな私が払った会計は1200円だった。

コンビニは不思議だ。同じチェーンでも店舗によって品揃えは同じではない。東京には、半径200メートルくらいに同じチェーンの店舗がいくつもあったりする場所があることにも驚いた。その店舗展開の戦略を尋ねたいと常々思う。東京のコンビニには駐車場もない。

特別中華まんが好きだったわけでもないし、食べたかったわけでもない。ただ、部活帰りに友人とコンビニに寄ってコンビニの前で熱い中華まんを食べながら話したことのことを思い出していた。あの時は月いくらだったかも覚えていないお小遣いで中華まんを買えたんだな。

いや、私は中華まんが好きだった。しかも、肉まんより少し高価な豚まんのほうが好きという贅沢な舌の持ち主であった。どこかのコンビニにごまあんのあんまんがあり、それも好きだった。普通のあんまんも、ピザまんも好きだ。ピザまんは幼少期にはなかった気がする。あの商品を発明した人に感謝したいとともに、とんでもないものをつくってくれたな、という気持ちもある。

ピザと言えば思い出すことがある。私が初めてサブウェイに行ったのはオーストラリアのことだった。日本にもあったはずだが、日本にそんな店があるとは知らず、アメリカのことなんてもっと知らず、その時はオーストラリア発祥の店だと思っていた。
サブウェイに初めて行った時、英語が全然わからない状態でメニューが豊富だった私は圧倒され、しかも野菜も選べるし、どうしたものかと思った。そんな時、見慣れて味も想像が容易い「Pizza」という文字列を見つけ、それを注文したのだった。
その時オーストラリアで食べたサブウェイのPizzaはとても美味しかった。
帰国してからしばらくして、日本にもサブウェイがあることを知る。少しがっくりしたが、まあいい、私はPizzaが美味しいことを知っているから、それを頼もうと決めて店に入った。しかし――日本にはPizza、ピザというサンドイッチはなかったのだった。

だから日本ではピザまんを食べる。
コンビニで中華まんを買って食べたい。一人じゃなくて、誰かと話しながら、行儀が悪いかもしれないけど熱々のうちに店の前で食べたい。
サブウェイのピザ味が日本にはないように、熱々のピザまんもレストランにもファストフードにもスーパーにもないのだ。コンビニのピザまん。コンビニにしかピザまんってないのに。肉まんもあんまんも中華街に行けばあるだろう。ピザまんは中華じゃない、イタリア料理でもアメリカ料理でもオーストラリア料理でもない、日本料理だ!

それから数年後、私はピザまん専門店を開いたのであった。


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