![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157209968/rectangle_large_type_2_63e96b6cc41e586279f58d13f757b809.png?width=1200)
「オリジナルドリブン」を体現するコーヒーショップ「HICARU COFFEE ROASTER」
皆様、こんにちは。広報担当の村山です。
私たちORCaは、「誰もが自分らしく活躍できる社会」の実現を目指し、現在は、大阪の谷町にてダウン症の方と共創するコーヒーショップ「HICARU COFFEE ROASTER」の運営などをしています。
今回は、ORCaの代表・山中にHICARU COFFEE ROASTERの誕生秘話やダウン症バリスタが活躍するための仕組みについてインタビューをしました。
前回のインタビュー「起業という選択と、自分らしい人生 ~コンプレックスを強みに変える旅~」は、HICARU COFFEE ROASTER開業までの物語を書いております。そちらを踏まえて読んでいただけるとより楽しんでいただけると思います!
ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです!
プロフィール
![](https://assets.st-note.com/img/1728363194-q9hFyHCNLlAs176cDfx3VQjE.jpg?width=1200)
山中 英偉人
CEO
1998年生まれ。2021年11月 株式会社ORCaを設立
弟の光(ひかる)がダウン症とその合併症を持って生まれ、わずか一歳という若さでこの世を去っている。その経験から、命輝くようにという意味をこめて名付けられた「ひかる」への想いをこめて、2022年5月にHICARU COFFEE ROASTER ブランドを設立。現在もダウン症の方々が一般就労として参画するカフェを経営する。
村山:前回は、起業という選択をしたきっかけや起業当初の苦悩などについてお伺いしましたが、今回は、そこから生まれ、今も大阪の谷町にて運営しているダウン症の方と共創するコーヒーショップHICARU COFFEE ROASTERについて詳しく教えてください。
山中:はい、ぜひ!よろしくお願いします!
HICARU COFFEE ROASTER誕生のきっかけ
村山: まずは、HICARU COFFEE ROASTERが誕生したきっかけを教えてください。
山中:欠点豆のカッピング会がきっかけなんです。
村山:欠点豆のカッピング会…?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157561016/picture_pc_2dfaa4af55725a0a83c5a8243af77787.jpg?width=1200)
山中:欠点豆っていうのは、コーヒー豆の中でも形が悪かったり、傷がついていたりする豆のことなのですが、通常は「欠点豆=おいしくない」とされており、自然と取り除かれてしまうものなんです。でも、「本当に価値のないものなのだろうか?活用できないかな?」と疑問に思って、実際に欠点豆を集めてカッピング会を開催してみたんです。
村山: なるほど。コーヒー豆でもオリジナルドリブン※1している…!
山中:そしたら、意外にもちゃんと味がして、美味しいコーヒーになったんです。そこで、「自然と捨てるものだと認識されて弾かれているものにも命はある。これを活用できないかな。」っていう話になって。そこから、人にも同じことが言えるのではないかという話に広がっていったんです。
村山:人間関係においても無意識のうちに偏見を持ってしまっていることってありますもんね。
山中:そうです。そこから、僕の弟がダウン症で生まれて1歳で亡くなってしまったという経験もあり、障害者とコーヒーの関係性について考えるようになりました。
実際に話を聞きに行ったり活動をしている中で、障害者の方々にとって、コーヒー業界やバリスタという仕事が生きる道のひとつになるんじゃないかと思いました。コーヒーを淹れることで、人と繋がり、社会と繋がり、自分らしく輝けるんじゃないかと。そういう想いもあり、HICARU COFFEE ROASTERができました。
村山:ダウン症の弟が亡くなってしまったいう過去の経験と、欠点豆のカッピング会の経験と、コーヒーやバリスタ業界への想いと、オリジナルドリブンという根本にある考え方が繋がってHICARU COFFEE ROASTERを生んだんですね。
※1 オリジナルドリブン・・・自分の強みだけではなく弱みまでも武器にしてしまう考え方やそれに基づいた行動のこと
ダウン症の従業員との取り組み
![](https://assets.st-note.com/img/1728381003-AXmHMFQfS21UWNhrJC78lcoD.jpg?width=1200)
村山:HICARU COFFEE ROASTERでは、現在もダウン症のバリスタが活躍していますが、活躍できるまでに苦労することはありましたか?
山中:コミュニケーションを取ることが、最初は一番苦労しました。理解するのに時間がかかったりすることもあるので、同じことを何度も言ってあげたり、彼女のできることを最大限に引き出すために工夫を重ねてきました。あとは、導入すれば解決する道具などがあれば、そこは割り切ってその道具の力に頼って導入するようにしています。
障害があるからできないのではなくて、経験することができる環境に今までいなかっただけなんじゃないかと思っています。だから、できなかったことは、苦手なことであったりとか経験がないことなんだなと思っています。できないと決めつけるのではなく、可能性を信じること、そして諦めないことは大切ですね。
村山:できることを最大限に引き出すため工夫は、具体的にどのような工夫をしているんですか?
山中:例えば、ノートにその日のやった事やコミュニケーションを書くようにしていて、周りのスタッフや親御さんにも社内でのコミュニケーションを視覚的に見えるようにしています。そうすることで、1体1にならずにチームでサポートするという態勢がとれるようにしています。
村山:確かに、視覚的に見えていると周りのスタッフも親御さんも安心ですね。
山中:あとは、僕は偏見があるっていうことを自覚しようと常にしています。
村山:偏見があると自覚する…?
山中:はい。無意識のうちにしてしまっている偏見のことをアンコンシャスバイアスというのですが、自分自身にアンコンシャスバイアスがないと思わず、1個1個のことに対して無意識で過ごすことをなくそうと意識しています。気づけなくなるのが1番良くないと思うので、批判的思考をひとつ持っておくことで、まだ見えてない部分を理解できるようになるんじゃないかなと。
村山:確かに、障害の有無に関わらず、人に対して無意識にこういう人なんじゃないか思い込んでしまうことってある気がします。HICARU COFFEE ROASTERの場合は、ダウン症のバリスタだけに関わらず、どの従業員に対してもその意識で関わっているように感じます。
山中:そうですね、おっしゃる通り。全員に対して同じ考え方をしていると思います。実際に、HICARU COFFEE ROASTERでは、ダウン症のバリスタだけでなく、全員が重要な戦力として活躍してくれています。
![](https://assets.st-note.com/img/1728380802-fsF1aBGcqgdwOMrz25omjbt4.jpg?width=1200)
HICARU COFFEE ROASTERのこだわり
村山:HICARU COFFEE ROASTERのこだわりを教えてください。
山中: まず、HICARU COFFEE ROASTERの鉄則というのは8つあります。
1. 他のスタッフとダウン症スタッフを区別しない
2. PDCAサイクルではなく、DCAPサイクル
3. 失敗と挑戦の許容
4. 提供のクオリティは徹底する
5. 武器を一つ作ることでアイデンティティを確立する
6. 親御さん(ご家族)とのコミュニケーションの徹底
7. 障害者ありきのビジネスにしない
8. ダウン症にこだわり続ける
その中でも、コーヒーショップとしての機能でいうと、カスタマーエクスペリエンス※2には凄くこだわっています。お客様がお店に来てから帰るまでの時間、会話、食べるもの、雰囲気、お客さんが体験するもの全ての価値が最高の状態を目指し、こだわっています。
福祉ビジネスは、提供クオリティというよりは、ルールにどれだけ従えるかというところが評価基準になっているような気がしますし、そのやり方を従っていくのが社会のため、会社のためになっていると思います。
ただ、僕らの場合は、福祉事業所ではなくカフェ事業として活動に取り組み、すべてのスタッフは一般雇用として業務に携わっているので、お客さまが良いと感じてくれたら、感じてくれた分だけ対価が支払われるっていう商いの基本原理に則ってビジネスしているので、質を求めることが1番大切だと考えています。
村山: なるほど。それが、障害ありきのビジネスにしないという部分に通ずるんですね。
山中: あと、もう一つは、従業員一人ひとりの個性と成長を大切にしていることです。全員が同じことができる必要はないと思っていて、それぞれが得意なことを活かせるように、個性を伸ばせるようにオリジナルドリブンの考え方を社内に浸透するように心がけています。
※2カスタマーエクスペリエンス・・・ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験価値
HICARU COFFEE ROASTERの商品へのこだわり
村山:商品へのこだわりについても教えてください。
山中:僕たちは、スペシャルティコーヒーにこだわって、日本に10%しか流通していない、最高品質のスペシャルティコーヒーを使用しています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157562496/picture_pc_7a873cd69c7d2893392616cb1b3fe068.png?width=1200)
村山:ここが、提供のクオリティは徹底するという部分になるんですね。
山中:福祉事業者がコーヒー事業を始めることはよくあるのですが、僕たちはコーヒー屋です。バリスタ側の視点だからこそ、品質にこだわっています。
村山:品質へのこだわりが、お客様への最高の体験にも繋がっているんですね。
山中:あ、あと僕の性格上一方通行の矢印は苦手で…。
共創しているという言い方をよくするんですが、この言い方をしてるのも理由があって。
コーヒー業界は、まだまだステークホルダー全員に正当な対価が支払われていないケースがあります。そのために消費者や国からリスペクトをしてもらって正当なお金でコーヒーを飲みたいと思ってもらえるかが凄く大事だと思っています。質の高いコーヒーは高い値段で取引されやすいのです。質の高いコーヒーでこの活動を続けていくことが、コーヒーの市場をもっと広げる可能性があると思っているのもあります。
HICARU COFFEE ROASTERを訪れるお客様への想い
村山:HICARU COFFEE ROASTERを利用してくださっているお客様への想いを聞かせてください。
山中:お客様には、今日この店に来てよかったって思ってもらえる体験をしてほしいと思っています。そして、僕たちの世界観に自然に触れてほしいと思っています。
村山:僕たちの世界観に自然と触れる…?
山中:はい。強制的に押し付けるのではなく、自然と感じてもらえるような空間にしたいと思っています。その人にとって必要なときに、その必要なことを自然と見つめてもらえれば良いかなと。
僕らのお店でコーヒーが飲めて幸せとか、 ここに来たらなんか自分の背中を押してもらえたとか、元気になったから明日も頑張ろうとか、こんだけ頑張ってる人がいるんだから自分も頑張ろうとか、社会を諦めてしまいそうになっている人が自分のことをもっと考えてくれる人がいるかもしれないと思うとか…誰にとっても自然と気づきを与えられるような、そんな居場所となるような空間にしたいですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1728640730-QHw9aGrEPSy8p5mZxfCUDlq7.jpg?width=1200)
最後に、noteを読んでくださった方へ
村山:最後に、このnoteを読んでHICARU COFFEE ROASTERに訪れてみたいなって思ってくれた人がいるかもしれないので、メッセージをお願いします。
山中:えーっ、全商品食べてほしいですね(笑)
村山:それは、たしかに(笑)
山中:というのは冗談で。僕たちは、仲間探しの旅だと思っていて、仲間作りをするためにHICARU COFFEE ROASTERを運営しています。仲間っていうのは、自分の価値観に共感して、共鳴してくれる人のことです。
例えば、お店に来て知ったことをsnsで発信したりとか、何か一緒にやってみませんか?と提案をしてくれたりとか、想いに共感してくださった方は寄付をしてくださったりとか、そんな人たちが僕たちの周りにはいて支えられているので、共創の方法はなんでも良いので、なにか気づきから行動に起こして仲間になってもらえると、僕としては嬉しいです。
村山:HICARU COFFEE ROASTERの商品が美味しいのは勿論のこと、サービスも本当に心がこもっていているなと思いますし、スタッフの皆さんやお客様の雰囲気も本当に素敵ななので、このnoteを読んで気になった下さった方は、是非も立ち寄っていただけると嬉しいですね。
今週も貴重なお話をありがとうございました!
山中:こちらこそ、ありがとうございました!
広報担当:村山の【編集後記】
![](https://assets.st-note.com/img/1728371112-TpyroF6BH4btdvak81e3JqCj.jpg?width=1200)
今回のインタビュー、いかがでしたでしょうか? 欠点豆の話からHICARU COFFEE ROASTERの誕生秘話、そしてオリジナルドリブンという考え方まで、山中の熱い想いが伝わってきました。 HICARU COFFEE ROASTERは、単なるコーヒーショップではなく、沢山の方の居場所となり、その方々が繋がり、そして自分らしく輝ける場所だと感じました。ぜひ一度、足を運んでみてください。(村山)