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『身分制国家とネーデルランドの反乱』 序章 予備的考察 ~入手の困難さにめげずアクセスしてほしい、オランダ近世史研究にはマストの序章

著者: 川口博
出版社: 彩流社
サイズ: 単行本
ページ数: 342p
発行年月: 1995年11月
定価: 5097円

目次

序章 予備的考察
第1章 「ヘントの和平」400年
第2章 ネーデルランドの反乱と唯物史観
第3章 15・16世紀のネーデルランド全国議会について
第4章 ヘントのカルヴァン派独裁(1577‐1584)
第5章 議会と主権―オランダ共和国の成立
第6章 「即位大典」とネーデルランドの反乱
第7章 「即位大典」をめぐる諸問題
第8章 ヨハンナとウェンセスラスの「即位大典」(1356)
第9章 「17州」考
第10章 近世初期における産業の自由と規則―ホントスホーテのセー工業を中心に

読書メモ

論文集です。けれど各論文がどうこうというより正直、最も重要なのは「序章 予備的考察」。とくに、オランダ史で卒論等を書く場合には、ここに述べてある先行研究とオランダ史の記述についての提言を理解したうえで、自分なりに用語の統一をはかるべきと思われます。『金獅子亭』でも、「序章 予備的考察」を踏まえてカナ表記をしたり訳語をあてたりしています。

逆に、とくに研究にまで興味のない人には、「序章」や「予備」という単語からは想像がつかないほど、初っ端からいきなり難解かもしれません。管理人も現役時代から何度も繰り返し読み返していますが、未だ理解の及ばない部分はたくさんあります。

本当にオランダ史の初学者には、「序章」はマストで読んでほしいのですが、この本のいかにも難しそうで一般受けしないタイトルに加え、論文集であるというお得感の無さ、そして専門書の通例に違わず学生にとっては高額な部類に入るため、普及は難しいのかもしれません。この序章だけ、もっと噛み砕いた状態で 「研究入門」などとして編集されてくれると、後学者のためにとても役立つと思うのですが、なんせ近世史自体が「西洋中世史研究入門」「西洋近現代史研究入門」のどちらからも置いていかれている状態です。

もっとも、オランダ史のマイナーさも昨今は解消されつつあり、各国史の枠内で概説書は複数出てきています。かつ、現在の大学教育で、出版から30年且つ入手の難しいこのような研究書の参照を推奨しているかはわかりません。逆にだからこそ、この序章の存在を発信し続けていく意義はあるのかなと思っています。

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