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The Cambridge Modern History (1902-1912) ~パブリックドメインで読める八十年戦争の良質な英語版概説

History of Holland

著者: George Edmundson
ページ数: 440p
発行年月: 1922年

読書メモ

過去にKindleを購入したとき、試しに無償で読めるものをいくつかダウンロードしたうちのひとつ。想像以上に良書だったためご紹介。

おそらくもともとは通史のシリーズとして書かれたもので、20世紀初頭にイギリスで刊行された "The Cambridge Modern History (1902-1912)" のうち、著者による担当箇所を後に加筆のうえ「オランダ史」の名で集大成したもの、といえると思います。(一字一句検証してないので断言できませんが)。 なにが良いかというといくつか理由がありますが、

  • ジェネラルな通史として書かれているため、平易な表現が多く、辞書をあまり引かず読める

  • 視点がニュートラルに徹してあり、イデオロギー色の少ないプレーンな記述である

  • 多すぎず少なすぎずのボリュームのバランスが絶妙

  • 外国人による外国人のための作であることがこの場合は幸いしている

といったところ。

オランダ史にはもちろん他に何冊も基本文献があり、とくに古典としてはGeyl、最近のものではIsraelが挙げられますが、これらはいずれもオランダ人がオランダ語で書いた「研究書」の英訳版であり、「概説」とするには若干詳細すぎるところがあります。逆に日本語で読める概説書は、やはりどうしてもページ数の制限により情報不足です。その中庸をいく、枝葉末節を省きつつ丁寧に順を追った記述は、因果関係がわかりやすい適度な分量を保っています。

ただしあくまでこの評価は、八十年戦争期間の記述に限ります。イギリス人著者ということで、当事者の一方である英蘭戦争から名誉革命にかけての記述は、オランダ人による著作との併読が必須でしょう。

それでも、ウィルヘルミナ女王の時代まで網羅しながら、ウェストファリア条約までで全体のページ数の半分が費やされており、紛れもなく八十年戦争期がメインコンテンツです。

また、パブリックドメインなので入手が容易且つ安価なのも魅力です。

Project Gutenbergでも読めます。PDFダウンロードも可。


The Eighty Years' War

Kindle版用に"The Cambridge Modern History (1902-1912)"の該当箇所を抜き出したもの…と思われます。(こちらも一字一句検証してないので断言できませんが)。表紙のように章の冒頭に当時の関連絵画がついています。そのためかPDではありながら無料ではありませんが、100円前後でDLできます。

ウェストファリア以降はとくに必要ない、という場合にはこの版を使用しても良いかも。

Google Booksの限定表示をつぎはぎすると、この箇所の分量になります。

マウリッツとフレデリク=ヘンドリクの伝記に準じる箇所について、別記事で詳述しました。


GeylとIsraelについてもリンクのみ。1000ページ軽く超えてきます。


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