指についた「みたらし団子のたれ」は舐めましょう。
出生から学童期の半ばまで、大阪十三に住んでいました。至近距離に新北野中学校、かの有名な北野高等学校がありました。十三公園を通って阪急十三駅までは徒歩10数分で行ける距離だったと思います。
ただ、記憶低下につき当時の暮らしぶりは思い出せないのですが、食の記憶はかすかにあります。
子どもだからか、味の評価よりもシチュエーションのインパクトが強かったようです。
◽️阪急百貨店大食堂
メニューはまったく思い出せません。
ときめいたのは、お子様ランチ?オムライス?
クリームソーダを初めて飲んだ気もします。
母に連れられて姉とよく行きました。
阪急百貨店ならではの厳かな空間は非日常感と高揚感をもたらして、幼児にまで「大人びる」意味を教えてくれました。
今でも電車の色「阪急マルーン」には心が躍ります。品格と重厚さが歴史の重みを物語っていますね。
有川浩著『阪急電車』は、また読みたい大好きな小説の1つで、構成のすばらしさにうなりました。
◽️U食堂
当時住んでいた借家の近くにあった食堂。北野高校から淀川方面に200mほど歩いたところだったでしょうか。
店舗で食事をした記憶はなくて、よく出前をお願いしていました。出前という食のシステムを知ったのです。だしのきいた親子丼や熱々の鍋焼きうどん。
湯気、お兄さんの和帽子、岡持ち。
ああ、幸せな記憶。
現代ではUber eatsですか。
未経験でわかりません。岡持ち使ってる?
◽️某レストラン
店名は忘れましたが、十三バイパス?から降りた辺りにあったレストランのメニュー。
ハンバーグにスパゲティやサラダが添えられた、今思えば特にスペシャル感はないベーシックな料理。ただただ家族で出かけた帰りに食事をする非日常に、幸せを噛みしめていました。ここでナイフやフォークの使い方を学んだ記憶があります。
食事機会を与えてくれた両親には、今さらながら感謝感激。父には晩年食事を楽しませてあげられなかったのが心残りです。
◽️喜八洲総本舗「みたらし団子」
食の記憶in大阪のスペシャリテ。
強めの焼き色がついた俵形の美しい串だんごがタレに沈む瞬間を見逃すまいと、固唾を飲みました。軽く握りこぶしを作って緊張していたかもしれません。
箱詰めされたそれを包む従業員のお姉さんの手際のよさといったら!上から引っ張ってカラカラと音を立てながら箱に紐をかける職人技に、多分口が開いたまま見惚れていました。
最後に食べたのは15年以上も前。
箱詰め紐がけのパフォーマンスを見てから、5本入りを購入して大切にホテルへ持ち帰りました。1人で全部食べ切ったことは誰も知りません。
賞味期限1日、地方発送不可を貫く高貴な姿勢に悔しさと尊敬を覚えつつ、指についた「みたらしのたれ」とおいしい記憶をきれいに舐め取りました。
室内でも35℃超えの猛暑日に、こうして幸せな食の記憶をたどることで現実逃避を試みました。
しかしながら今一番おいしいのは食堂の記憶ではなくて、食道を通過する氷水でした。
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