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たのしくかけちゃう通知表 「振り返りアンケート作戦」で所見だってたのしく!

●所見を書くのはいつも大変

 僕にとって,学期末というのはとても憂鬱なものでした。それは,通知表を書かなければならない時期だからです。
 各教科の評価は基本的にテストの成績をもとにして決めるのですが,それ以外の活動についての具体的な報告や生活の様子など,数字で現れない部分は所見欄に記すことになっています。そこに何をどう書くかで,いつも苦労するのです。

 けれども最近は,たのしみながらやれるようになりました。

 どうせやらなければならない仕事なのだから,やっつけ仕事ではなく,たのしくできないものか。…そんなテーマを追求し,いまでは定番になっているのが,「振り返りアンケート作戦」です。おかげで最近は,通知表もたのしみながら書けるようになりました。

 「振り返りアンケート作戦」というのは,簡単にいうと,学期末にアンケートを作って子どもに回答してもらい,それをヒントに通知表の所見を書いていく,というものです。

「なあんだ,それなら自分も毎回やってるよ」

という方もいるかもしれませんが,もしかすると,自分のやり方とはちょっと違う発見があるかもしれないので,ぜひ読んでみてください。

 僕はとにかく,以下の3つの点にこだわっています。

・アンケートを作るのもたのしいし,回答するのもたのしい!
・アンケートを読んだら,通知表が書きたくなってしまう!
・通知表がさくさく書けてしまう!

こんな夢のような方法があるのか?なんて思っている方,あるんです!

●アンケートできくことは?

 アンケートの項目は基本的に「通知表を書くのに役立つものだけ」に絞ります。そこで,係の仕事や,学期中に特に頑張ったことの他「学期中にやった授業の内容」をリストアップしておいて,子どもたちが頑張ったこと,たのしかったことに○をつけてもらうのです。
 このアンケート作りの作業は,子どもたちの反応を想像しながらなので,たのしく進めることができます。さらに「今学期の自分の仕事(特に,どんなたのしいことができたか)」を再確認することができます。そうすると,子どもたちの回答を読むのがますます待ち遠しくなるのです。

 子どもたちも,その学期の「たのしかったこと」を思い出して,たくさん書いてくれます。
 アンケートなんて,たいていは答えるのが大変なので,嫌がられることが多いのですが,このアンケートは毎回嫌がらずにやってくれます。

 子どもたちから返ってきたアンケートを読むと,その書き込みをヒントにどんどん所見が書けるようになります。いや,「書きたくなる」のです。

 子どもも,たのしくて思い出に残っていることが通知表に書かれたらうれしいでしょう。そういうがんばったことを,お家の人に伝えるのが通知表の役目なのだから,願ったり叶ったりです。

以下に実例を交えてアンケートのポイントを説明していきます。

ポイント①:係の仕事

 通知表には「係」を書き入れる欄があります。僕は,誰がなんの係をしているのか,いちいちメモしていないので,これを書いておいてもらえると,とても助かります。そして,係の仕事に対する「自己評価」も書いてもらいます。自分で評価する時には,具体的な理由を頭に思い浮かべているものです。そこで次の欄で,「係の仕事でやってくれたこと」を書いてもらいます。それを読めば僕もその子のがんばっていた姿を思い出すことができます。きっかけがないとなかなか思い出せませんが,子どもの姿を思い出せれば,感謝の気持ちを交えながら,所見にそのことを書き加えることができるのです。

ポイント②:生活のようす

 「生活のようす」に関する項目は,通知表に書いてあるまま,子どもに聞いてしまいます。僕が項目を見てまず思うのは「こんなの,どうやって評価すればいいの?」ということ。〈よくやってる子〉はみんな評価してあげたいし,〈世話の焼ける子〉は「どれもあてはまらない……」と悩んでしまいます(^^;) そういう時に,この欄の記入が役に立つのです。
 ポイントは,〈特にがんばったこと〉を〈2つに絞って〉教えてもらうことです。
 子どもたちは通知表で,「がんばったこと」を認めてもらいたいのです。がんばっていないことを毎年同じように評価されても,うれしくありません。
 そこで,よくやっているなぁという子は,その2つを中心に評価してあげます。また,〈世話の焼ける子〉の場合も,「そうか~,本人の中では,これをがんばっていたのか~,気がついてやれなくて,ゴメンな……」と思いながら,2つのうちの1つを選んだりすることができます。

ポイント③:授業のようす

 各教科別に,授業でやったことを書いていきます。子どもはそれを○で囲むだけです。「たのしかったことやがんばったことなら,いくつでも囲んでよい」というのがポイントです。たくさん○がついたら,子どもも教師もうれしくなります。
 また,普通の教科書単元も入れておくのがポイントです。思いがけず教科書単元に○がついていると,「たのしい授業」に○がついているのより,うれしくなったりします。 

 最後に,その中でも特にたのしかった3つを選んでランキングにしてもらいます。子どもはランキングするのがたのしいようで,一生懸命考えてくれます。
 子どもたちの作ってくれたランキングをみると,「そうか~,中でもこれをたのしく学んでくれたんだな-」ということがわかります。
 僕の仕事はその子どもたちの気持ちを大切に書き残してあげることだと思っています。最近は《授業書》の授業のコメントも堂々と書いています。子どもたちの生き生きとした姿,成長している姿を,親に伝えてあげたいのです。

 子どもが書いたランキングと,それをもとに僕が書いた所見の実例を載せておきます。

所見の例

 体育では,ドラクエドッジやシュートボールなど,自分の役割を生かしたチームプレイを楽しみながら,実力を伸ばしました。朝の漢字練習では,丁寧な字でマッキーノに取り組み,たくさんの漢字を覚えることができました。学校で学んだことを,お家でも話してしまうくらい,夢中になれるところ,ステキです。3年生での活躍にも期待しています。


こんなにたのしかったことがある中で,送る会のことを2つも書いているのだから,送る会でがんばったことをかいてあげよう,と思って所見を書いています。


ポイント④:生活科・総合的学習の時間のようす

 「生活科」や「総合的学習の時間」のコメントも同様に子どもに書いてもらい,それを読みながら,所見を書きます。
 特に,具体的な内容が書いてある時には,その例をそのまま残すようにしています。「はじめてキップを買って電車にのりました」なんて書いたあったら,それって子どもにとってすごい記念日ですよね!それを通知表に書いておけば,いつまでも思い出に残しておけると思うのです。

ポイント⑤:担任への一言

 最後のこの欄が,とっても大事です。ここに「僕が担任でよかったこと」を書いてもらうのです。もちろん「強制」ではなく,お願いして,という感じにです。
 所見を考える前にこの部分を読むと,俄然「通知表を書いてあげたい!」という気持ちになります。こういう気持ちになるように自分を仕向けたり,自分を元気にさせたりすることが決定的に大事であり,それができるのが「プロの仕事」なのだと,中一夫さん(東京・中学校)に教わってから,このやり方に自信がもてるようになりました。

●初任の時の失敗談

 僕は,新任の頃,「担任の成績表」なるものも書いてもらったことがあります。「みんなの成績を偉そうに自分がつけるのだから,平等に,自分の成績も子どもたちにつけさせてあげよう」なんて思って,「先生のいいところや,直してほしいところを教えてね」と,ビクビクしながらもきいてみました。

 でも,あれはキツかったです。3人分くらい読んで,心が折れました。子どもはキビシイことを良かれと思ってバシバシ書いてきます。それで反省することができ,よりよい教師になれるかというと,ほとんどなれません。自分の意欲はどんどん下がり,全くの逆効果でした。

 きっと,こういうふうに聞いてしまうのは,若いからこその向上心なのでしょう。でも,その気持ちがあるときには,わざわざ子どもに聞かなくても,自分自身が一番わかっているのです。今は「このクラスのいいところや,先生のいいところを教えてね」と聞いた方がよかったな,と思っています。新任の先生方には同じ過ちを繰り返して欲しくないので,ここに書いておくことにしました。

●おわりに

 このアンケートを作っていると,「今学期も,たのしいことがたくさんできてよかったな~」と思います。そして,「サークルや,研究会で出された資料を,たくさん取り入れてきたんだな~」と,うれしく思います。研究会の財産と,先人の知恵に感謝です。いつも本当にありがとうございます。

出典:月間『たのしい授業』2010年2月号(仮説社)https://www.fujisan.co.jp/product/1567/b/320292/

『たのしい教師生活のすすめ』(仮説社)


※以下に,通知表を渡すときの「定番通信」を添付します。おうちの人にとても好評なので,ダウンロードして,使えるところはマネしてみてください。
※実際に使っている「振り返りアンケート」もダウンロードできるようにしています。参考にしてみてください。

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