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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問25
公認心理師受験生Kidです。
さて、掲題の通り、問25です。
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問25
アルコール依存症者の支援において、最初から断酒を目指すのではなく、飲酒がもたらす心身や社会生活への悪影響の緩和を目的とする方法として、最も適切なものを1つ選べ。
① ゼロトレランス
② セルフコントロール
③ ハームリダクション
④ リスクマネジメント
⑤ リスクコミュニケーション
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正解、 ③です。
完全にやめられなくても、周囲におよぼす害(ハーム)を減らせればいい」という「ハーム・リダクション」という考え方が生まれてきました。
そもそもハーム・リダクション(harm reduction)とは、個人が健康被害や危険をもたらす行動習慣(合法・違法を問わない)をただちにやめることができないとき、その行動に伴う害や危険をできるかぎり少なくすることを目的としてとられる、公衆衛生上の実践、指針、政策を指します。
主に嗜癖・依存症に対するものを指すことが多く、直訳すれば「害 (harm)の低減 (reduction)」となり、そもそもはオランダの薬物乱用者らが、自分たちの健康と安全を維持するために始めた活動に由来しています。
国際ハーム・リダクション協会が提唱するハームリダクションの定義は以下の通りです。
合法・違法にかかわらず、精神作用性のある薬物(広義ではアルコールやたばこも含まれる)について、必ずしもその使用量は減ることがなくとも、その使用により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを主たる目的とする政策・プログラム実践。
ハームリダクションは、薬物使用者やその家族、そしてそのコミュニティに対して寛容さをもって問題を軽減する、現実直視の低減政策・プログラム。
ただし、これは上記NGOが採用する定義であり、各国や各地域の政府によってこの用語の使用法には幅があって、国によっては薬物使用の予防や、薬物依存のリハビリテーションを意味する場合もあります。
ハームリダクションの実施が多い欧州では、「飲酒問題を起こさないようにする」「やめさせることよりも、治療につながり続けることが大切」「その人の健康を守ることを基本に接していくことが大切」という観点から、血液検査の肝臓の数値を指標にしたり、対象者が大量飲酒できなくなる環境を作るなどの「節酒」ハームリダクションが実施されています。
こうしたハームリダクションに対する批判として、ハイリスク行動や違法行為について断罪せず認めることは、その目的が害の低減のための第一ステップであるにせよ、その行動や行為が「肯定的に認められている」という誤ったメッセージを送ることになるという意見があり、これは先述のゼロトレランスの批判を裏返したものであるともいえます。
重要なのは、どちらのやり方が「正しい」ということではなく、その人や状況によって刻々と適切な対応が「変化する」という認識であり、どのようなやり方も好き嫌いせずに納め、活用できるようにしていくことだと考えられます。
本問では「最初から断酒を目指すのではなく、飲酒がもたらす心身や社会生活への悪影響の緩和を目的とする方法」を選択するわけですから、上記ではハームリダクションが合致していることがわかります。
以上より、③が適切と判断できます。
引用URL:https://public-psychologist.systems/10-精神疾患とその治療/公認心理師%E3%80%802023-25/