過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問62
みなさん、こんにちは。
公認心理師受験生Kidです。
さて、掲題の通り、問62です。
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問62
17歳の男子A、工業高校2年生。実習に入ってから機械の単純な操作ミスが頻回になり、発達障害を疑った担任教師の勧めで精神科を受診した。小中学校までは忘れ物は多いが、成績は中程度で大きな問題は生じていなかった。Aは、「実習に入ってから先生の説明がよく理解できずに、ミスが多くなり困っている。自分は発達障害なんですか。どうしたら卒業できるか知りたい」と切迫した表情で話した。主治医の指示により公認心理師Bが WAIS-Ⅳを施行した。検査結果は FSIQ 103、VCI 113、PRI 112、WMI 71、PSI 102 であった。
BのAへの心理アセスメントのフィードバックとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 検査記録用紙をAに提示し、全ての結果を詳しく説明する。
② 平均を下回る指数に焦点を絞り、問題点を重点的に説明する。
③ 知的機能のばらつきがあり、発達障害に該当することを伝える。
④ 情報の聴き取りが苦手な可能性を伝え、その対処について話し合う。
⑤ IQは平均域であり、学校生活や実習に問題はないことを強調する。
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正解、 ④です。
④ 情報の聴き取りが苦手な可能性を伝え、その対処について話し合う。
これは解釈の中身に関する理解です。
具体的には「FSIQ 103、VCI 113、PRI 112、WMI 71、PSI 102」という箇所についての理解が問われています。
各下位検査の分類について記述していきます。
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言語理解指標
(VCI) 知覚推理指標
(PRI) ワーキングメモリ指標
(WMI) 処理速度指標
(PSI)
基本検査 類似
単語
知識 積木模様
行列推理
パズル 数唱
算数 記号探し
符号
補助検査 理解 バランス:16~69歳のみ
絵の完成 語音整列:16~69歳のみ 絵の末梢:16~69歳のみ
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WAIS-Ⅳでは、全体的な認知能力を表す全検査IQ(FSIQ)と、4つの指標得点を算出します。
以下では、各項目の内容を解説を試みます。
群指数の概要と、下位検査の簡単な実施方法および検出する能力を記載していきます。
(引用URL:https://public-psychologist.systems/17-心理状態の観察及び結果の分析/公認心理師%E3%80%802023-62/)
【言語理解:言語的なことに対する理解や把握の能力】
↓
類似:2つの言葉の共通点や類似点を答える;概念を理解し、推理する能力
単語:単語の意味を答える;単語の知識や言語概念の形成について
知識:一般的な知識に関する質問に答える;一般的な事実に関する知識の量や学習について
理解:一般原則や社会的状況についての質問に答える;社会性や一般常識を理解する能力
【知覚推理:目で見て物事を理解したり操作したりする能力】
↓
積木模様:モデルと同じ模様を積木を使って作成する;抽象的な視覚刺激を分析して統合する能力
行列推理:不完全な行列を完成させるのにもっとも適切なものを選ぶ;流動性知能や視覚性知能、空間に関する能力
パズル:組み合わせると見本と同じになるものを選ぶ;視覚刺激の分析に関する能力
バランス:天秤が釣り合うために適切な重りを選ぶ;量的な推理、類比的な推理の能力
絵の完成:提示された絵の中で欠けているものを答える;重要なところとそうではないところの見分けの能力
【ワーキングメモリー:記憶や注意集中に関する能力】
↓
数唱:耳で聞いた数字を復唱する;特に聴覚的な記憶力や注意力に関する能力
算数:算数の文章題を暗算で答える;計算能力や記憶力に関する能力
語音整列:かなと数字を順番に並べる;記憶力、継次処理、注意力に関する能力
【処理速度:手先の器用さやスピードに関する能力】
↓
記号探し:刺激となる記号があるかどうかを探す;作業効率や集中力に関する能力
符号:見本となる記号を書き写す;視覚的な認知やスピードに関する能力
絵の抹消:さまざまな図形の中から特定の図形を探す;選択的な注意や運動に関する能力
これらを踏まえて、各群指数の特徴を挙げると以下のようになります。
【言語理解】
↓
養育不全、教育不備、長期の不登校があるとここが落ち込みやすい。
早口で長い説明は苦手。
作文や発表が苦手になりがち。
語彙があれば音読は大丈夫。
【知覚推理】
↓
眼の動きに問題があると板書が苦手になる。
図形の認知に問題があると、グラフ認知が難しくなる。
美術系の授業で特徴が見えることも多い。
知識の活用、すなわち応用問題が苦手になる。
【ワーキングメモリ】
↓
会話の聞き忘れ、脱線が多くなる。聞き間違い、聞き漏らしも多くなる。
同時に複数の処理、並行作業が苦手になる。
メモが有効だけど、メモを取ること自体が苦手というパラドックス。
騒音、雑音に弱い。
聴覚的な丸暗記が苦手(百人一首など)
暗算苦手。
【処理速度】
↓
他者と同じスピードで作業ができない(課題、給食、着替えなど)。
急がせるとミスが多くなる。
同じことでも手順が変わったり、効率が悪いやり方だったり、やり方にこだわりが強いなど。
これらを踏まえて「FSIQ 103、VCI 113、PRI 112、WMI 71、PSI 102」という結果を見てみると、ワーキングメモリだけが極端に低くなっていることがわかります。
聴覚的な記憶力や計算力などに関して難しい面があることが示唆されています。
そして、こうしたワーキングメモリの低さは、本人が学校で感じている「実習に入ってから先生の説明がよく理解できずに、ミスが多くなり困っている」という苦慮感の訴えとも重なるものですから、この点についてどう対応するかを話し合っていくことは、支援上有効なものであると考えられます。
以上より、④が適切と判断できます。
引用URL:https://public-psychologist.systems/17-心理状態の観察及び結果の分析/公認心理師%E3%80%802023-62/