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診療情報管理士として働いていた難病当事者が考える、カルテの在り方と診察でのコミュニケーション

私は以前、病院の診療情報管理士として働いていました。

「診療情報管理士」とは、医療機関における患者の様々な診療情報を中心に人の健康(health)に関する情報を国際統計分類等に基づいて収集・管理し、データベースを抽出・加工・分析し、様々なニーズに適した情報を提供する専門職種です。

日本病院会 診療情報管理士通信教育

「診療情報管理士でした」と言っても、だいたい相手の反応がピンときていないことが多いのですが、とにかく毎日ひたすら患者さんのカルテを読んでチェックして、時には医師などにカルテの書き方をちょこっと指摘したりする場面もありました。

現在は病院を退職し、医療従事者を卒業した私ですが、今でも『患者』という立場として、病院には定期的に通っています。
自分の診察の時でも、職業病なのか、ついカルテ画面をちらちら見ては「それ、もっと違う書き方にしてほしいな・・・」とか思ってしまったりして。何ならたまに、それがポロッと口から出てしまったりして、先生に「出た、診療情報管理士~!」とか言われてしまったりして。

みんなを守るカルテ

カルテ(診療情報)というのは、病院の財産であり、医師の財産であり、患者の財産でもあります。なので、私は『いつ誰が見てもわかりやすいカルテを残す』ということを心掛けて仕事をしていました。

今は、「自分のカルテを手元に残しておきたい」という人も増えてきています。患者さんが何かの事件に巻き込まれたときなどは警察が見る場合もあるし、裁判等に関わっているときなどは裁判所や法定代理人が見る場合もあります。あらゆるケースでの『カルテ開示申請』もたくさん対応してきました。

診療情報だから、医療用語がずらずらと並んでいることは仕方ないです。が、院内(仲間内)だけで通じるようなワードが並ぶというのは、カルテとして相応しくないと思っています。
そして、いくら医療者が精いっぱいの力を患者の治療に注いでいたとしても、その『記録』がしっかり残っていなければ、その証明が出来なくなってしまいます。『記録を残す』ということは、医師、病院、そして患者を守るということにも繋がるのです。

モヤモヤしない診察

これは、『診察』という場面でも同じようなことが言えると思っています。

何年病院に通っている患者さんだって、医療用語全てを理解できるわけではないし、自分の病気に関わるもの以外は知らないという人がほとんどだと思います。通い慣れていない病院では『この病院のあるある(言葉の使い方、治療の流れ)』なんて分かりません。

いくらお互いに真剣に向き合っていたとしても、それが相手に伝わらなければ信頼関係は築けません。だから、医療者側は『誰が聞いてもわかりやすい』説明をしなければいけないし、患者である私も、思いや考えをしっかり伝え、納得できる返答を相手から引き出し、モヤモヤが少ないコミュニケーションになるよう心掛けなければいけないと考えています。お互いが目線を合わせて対話ができるといいですね。

病院が混んでいるときは、医師も疲れていたりして丁寧なコミュニケーションが難しいときもあります(本当はいつだって丁寧に接してほしいけど、医師も人間だもの、たまには仕方ない。と思うことにしている)。
なので、効率よく診察を終え、帰り道にモヤモヤを抱えないように、『今日は何を話したいのか(前回の診察後の経過、他に気になっている症状、疑問点、どんな生活を望んでいるのか等)』を予めメモしておいて伝え残しがないようにするなど、こちらも出来るだけの準備をして診察室に向かうのです。

家に帰ったあとは、自分が話したかったことに対して、医師からどんなことが返ってきたのか、必要であればまたメモに残しておきます。こうして、ちょとした『自分だけのミニカルテ』みたいなものをつくっておいたりもします(ちなみに私はお薬手帳に書き込んだりしています)。


書き方、言い方をちょっと工夫すれば、そのちょっとの積み重ねが自分や誰かを守ることに繋がります。
医療者と患者による思い込みとすれ違いで、コミュニケーションに大きな不安を抱えてしまう人も少なくないと思います。
医療者側とより良い信頼関係を築き上げられるよう、これからも自分の経験を活かしながらベストなコミュニケーションを模索していきたいです。

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