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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 63
金曜日。早めに起きて朝食会場へ。見知った顔は誰もいない。まだ寝てるんだろうな。チェックアウトして、1人で荷物をガラガラ引いて最寄りの駅へ向かう。ちょうどホームに電車が滑り込んできて、これがプラハ中央駅に行くのか逆方向なのか、咄嗟におじさんに訊いたけど無視される。チェコ語以外は俺の耳に入らないし目にも留まらない、とでも言わんばかりの徹底的な無視の仕方にショックを受けたけど、驚いている暇もないので、若い女性に訊いて、あたし英語話せないんだけど、と英語で言われつつもチェコ語の駅名を見せて、この電車で合ってるよ、と親切に教えてもらう。
プラハ中央駅のコインロッカーに荷物を置き、後で焦らないために空港行きのバスのチケットを買って乗り場も確かめたのち、電車でチェスケー・ブジェヨビツェ(Budwise)に向かう。3月末に東京の欧州文化首都イベントで出会ったカロリーナさんに再会するためだったけど、彼女がちょっと体調を崩していて会えるかどうか頑張ってはみるけど微妙とのこと。でもいずれにしても紹介したい人がいるとのことで、とにかく行ってみることにしたのだった。アメリカの有名なそれとは違う「本物の」バドワイザーも飲んでみたかったし。ルートについては、この電車に乗るといいよ、と時間やアプリについて、ラボのチェコ在住メンバーであるクリストフが教えてくれた。
結局カロリーナさんは来られなかったけど、彼女が紹介してくれたシモンは若い詩人で、最初は探り探りだったけどすぐに打ち解けて、どうせならうまいビールを飲みにいこう!と、伝統的なバドワイザーを出す店や、別の醸造所レストラン、さらには彼が朗読会をするアートスペースにも案内してくれる。歩きながら、この地下の店はね、前に夜中の2時過ぎに友達がどうしてもビールもう一杯飲みたいっていうから入ったんだけどさ、なんとXXXの衣装を来た人たちの秘密の集会みたいなのが開かれていて怖くなって逃げた……とか、そのほかにも、牧歌的なチェスケー・ブジェヨビツェの風景からは到底塑像できない、この町の夜の顔について聞く。そうかあ、もしもこの町でリサーチすることになったら一緒に行ってもらえる、お、おう、いいよ……みたいなことを話しながら、あっという間に時間が過ぎていく。こちらに住んでいる日本人もいるとのことで、シモンが書いた短歌とそれを彼女が日本語訳した本もプレゼントしてもらった。結局、プラハに戻る電車の時間ギリギリまで、付き合ってくれたのだった。
フライトを経て、デュッセルドルフ空港に着いた頃には、すでにEURO2024の開幕戦が始まっていて、でも空港周辺で試合が見られそうな場所はない。電車の中で、たぶんどこかの代表チームのファンなのだろう、だいぶガラの悪い酔っ払いの若者たちが、リアルタイムで点数を英語でつぶやくので、試合が5対1で終わったのはわかった。中央駅に着いて歩いていくと、勝利に酔った、あるいは勝利に便乗した、ドイツ国旗を掲げた車が、クラクションを鳴らしまくって走っていく。お世話になる滞在施設に荷物を置いたあと、料理をする元気はなかったので、近所の韓国居酒屋へ。ウェイターの人(もしかしたら店主?)は、日本語を話せる人だった。