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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 84

金曜日。久しぶりの快晴。そして久しぶりに朝の用事がない日。どうも眠りが足りてないみたいで、しかも明日も忙しくなることがわかってるから、わたしは一日寝て過ごしたい気分。しかし実里さんから、AZからせっかくチケットもらったしどうしてもグッゲンハイム美術館に行きたい、一緒に行かないか、と誘われて、つい、行こうかな、と答えてしまった。わたしも学習しないといけないのだが、生返事で「行く」なんて今後絶対に言わないほうがいい。オスロでそう学んだはずだったのにもう忘れてしまっていた。


トラムに乗ってグッゲンハイム美術館へ。奈良美智展が開催されている。そういえば奈良美智の個人史を実はほとんど知らなかった。東京大学出版会が2000年頃に出版した『越境する知』のシリーズに、うちの大学の恩師が関わっていて、その表紙が奈良美智だったのを覚えている。この展示で示されている個人史によると、あれは彼がドイツから日本に帰国した直後の仕事だったんだな……と思う。


3階までの展示をたっぷり観る。この美術館の建設費用と維持費はかなりの部分をバスク州政府が出資しているみたいで、「グッゲンハイム美術館の建設がビルバオの再建に大きく貢献した」というストーリーが敷かれてはいるみたいだけど、長い目で見て採算がとれると判断したのだろうか。誰がそれを決めたのだろうか。そしてその決定は今後も有効なのだろうか。と気になってしまう。常設展ではリチャード・セラの鉄の迷宮、草間彌生のミュージック・ビデオ、そしておそらく企画展のAnthony McCallの光の空間、Martha Jungwirthの絵画などが印象に残る。


トラムに乗り、カスコ・ビエホのバルまで行って、EUROのスペイン対ドイツを観戦。熱い戦いだった。店長ぽいあんちゃんは今日は非番の服装だったけど店の手伝いに来ていて、熱心に試合のゆくえを見守っている。もちろんほとんどの客がスペインを応援している中、ひとりドイツを応援している娘さんがいて、彼女はドイツが同点に追いついた時にこれみよがしに手を叩きまくっておおはしゃぎをして、勇気があるというのかなんなのか、周囲の人たちが苦笑いしている中、急に彼氏を連れてどこかへ走り去っていく。たとえば映画で、望まない結婚をさせられる花嫁のもとに、恋人がやってきて手をとって逃げ去っていく、あんなような感じで。え、最後まで試合を観ないんかい!とその場にいたほぼ全員が心の中でツッコんだはずだ。新婚旅行かな。ま、お幸せに。


その後のポルトガル対フランスの試合も気になるけど、近所のケバブ屋で観始めて、こりゃ疲労が溜まりすぎてる……と実感し、途中で帰宅。続きをテレビで観る気力もなく、そしてシャワーが使えないタイミングだったけど、もうそれが空くのを待つ気力も残っていなかったので、コロナ禍になってからたぶん初めて、身体を洗わないままベットで眠りに落ちる。もちろんその夜、重大事件が発生するとは夢にも思っていなかった。

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