立ち止まっているところをただメモ書きする
1.貧困についてのイメージ
「貧困」と聞いてあなたはどのようなことをイメージするだろうか。
それは”貧乏”か”不健康”か、あるいは”低所得”だろうか、はたまた”アフリカの人たちのような明日生きていくための食料を得られることができない人たち”だろうか?
もう一つ質問を投げかけるとすると、この「貧困」という問題は日本にはあるだろうか?
率直に申し上げると、答えは”Yes”だ。日本には貧困問題が存在するのだ。
2.データで見る貧困問題
2006年の7月に出されているOECDの「対日経済審査報告書」において、2000年時点での母子家庭、父子家庭のうち半数以上がこの貧困という環境下の中で生活することを強いられているということを報告している。続けて、2002年時点での日本全体の子どものうち約14%の子どもたちが貧困の環境下で生活しているということも報告している。
3.貧困とは?
このデータを聞いたときに読者の人が疑問に思うであろうことは、「”貧困”ってどうやって測られているの?」「”貧困”ってどんなことを指すの?」ということではないだろうか。
それは、日本においては、相対的貧困という概念で貧困が捉えられている。この相対的貧困という概念は、人々がある社会の中で生活するためには、その社会の中の「通常」の生活レベルから一定の距離以内の生活レベルが必要であるという考えに基づくものである。つまり、周りの人々の平均的な生活からどれほど離れた生活を送っているのか、周りの人々と比べて貧困なのか否か、ということである。
少しわかりにくい表現であるが、これをもっとわかりやすく表現しているのが、阿部(2012)である。そこでは「人は生まれながらにして、社会の一員として機能する社会的な存在である」とする考えに基づく概念であるということが述べられている。続けて、「人は働いたり、結婚したり、友人や親戚と交流したりすることが可能でなければならない。そのためには、単に寒さをしのぐだけでの衣服ではなく、人前に出て恥ずかしくない程度の衣服が必要であろうし、電話などの通信手段や職場に行くための交通費なども必要である。」と述べられている。つまりは、人と比べて貧困なのか、そうではないのか、ということなのである。そして、この相対的貧困は、世帯の所得をベースとして算出されているデータであるため、貧困の内実までは把握することはできない。どのくらいの人が貧困の環境で生活していて、貧困下で生活しているのは、どの年代、どちら性別に集中しているのか、ということを把握することしかできないのである。
なるほど!めちゃくちゃ万能な指標じゃん!わかっているなら対策を講じてしまって貧困を解消しよう!となるかもしれない。
4.貧困問題における問題点
しかし、物事はそう簡単には済まないのである。
それは貧困を形成している要因は一つではないからである。このことについてはまたの機会としたいが、それよりも問題なのは、相対的貧困という指標が日本政府の公式の指標ではないということである。どういうことかというと、相対的貧困というのはOECD(経済協力開発機構)やEU(欧州連合)などの国際機関で先進諸国の貧困を議論するときに使われる貧困基準である。
先にも述べたが、相対的貧困とは、人と比べて貧困かどうかということである。それは何を基準にそう述べるのかというと、所得をベースとしたデータであり、つまり、経済的側面のみでしか貧困を捉えることしかできないということである。そして、日本はこの貧困を捉える日本独自の指標を持ち合わせていないということである。
そこで、近年、一定数の研究者の間で注目されているのが、「社会的排除理論」である。次回は、ここから述べていく。
と、まあ、ここまでは考えが整理できているけど、論文化するには研究への着想として薄いみたいだ。