手裏剣戦隊ニンニンジャーについて書く
ニンニンジャー、それは家族の物語。
祖父、父、そして子どもたち。三世代にわたる戦いの物語だった。
ニンニンジャーの珍しいところは、初期メンバーが兄妹とそのいとこたちであること。
冒頭、ラストニンジャの異名を持つ伊賀崎好天の孫たちは、一応伊賀崎流の手裏剣忍法を学んではいるものの実戦の訓練はあまり積んでいないよう。
伊賀崎天晴/アカニンジャーは祖父の跡を継ぎラストニンジャになることを夢見ているが、他の4人たちはそうではない。
それに牙鬼幻月が甦るという言い伝えも、天晴以外の4人はあまり信じていない様子。
だが、予言の通り牙鬼軍団は人間への侵攻を始めた。
そして、ラストニンジャの孫たちである手裏剣戦隊ニンニンジャーの戦いが幕を開ける。
天晴は典型的な脳筋タイプで、戦闘能力に関しては誰よりも高い。おそらく修行を重ねていたこともあると思う。しかし、戦略などを立てるのは苦手だ。
そんな天晴と他の4人は戦闘面では差がついているのだが、回を重ねるごとにそれぞれの壁を乗り越え強くなっていった。
そして、追加戦士のキンジ・タキガワ/スターニンジャーの登場や牙鬼幻月の小姓である十六夜九衛門の動向はニンニンジャーの物語を彩った。
特に、キンジと初期メンバーたちの関わりは印象深い。
ラストニンジャの孫たち5人は道場で一緒に暮らしている。伊賀崎旋風の子どもである天晴と風花/シロニンジャー、そして旋風のきょうだいの子どもである加藤・クラウド・八雲/アオニンジャー、百地霞/モモニンジャー、松尾凪/キニンジャーみんながいとこ同士で、きょうだいとも違うけれど、小さい頃からの気心の知れた仲であり、家族であるという深いつながりがある。
この家族特有の空気感に新しい風となるのがキンジだ。
キンジは紆余曲折を経て正式に好天の弟子として認められる。
キンジは正真正銘、手裏剣戦隊ニンニンジャーの仲間となるのだが、最初の頃は遠慮しているように見えた。
自分は家族じゃないという引け目を感じているようで、そんなキンジを見ていると切ない気持ちになった。
そして、5人とキンジの大きな違いは家族を失っていることだ。
キンジは幼い頃に父と兄が狼男に襲われ殺されている。
キンジから見て、伊賀崎の人々は眩しかったのだと思う。
そんなキンジと5人の関係性が徐々に変化していき、キンジも5人に溶け込み、「5人とキンジ」ではなく「6人で1つ」になっていくのは素直に嬉しかった。
そしてもう1人、ニンニンジャーのメンバー以外でこの物語語る上では外せない重要キャラが十六夜九衛門だ。
牙鬼幻月の小姓なのだが、かつて伊賀崎好天の弟子だったという衝撃の事実が明かされる。
そして、旋風から忍タリティを奪い、旋風が忍法を使えなくなってしまったことも彼が原因だった。
九衛門は好天が持つ「終わりの手裏剣」という世界を終わらせ新しく作り変える力を持つ手裏剣を狙っていた。
そんな彼はとにかく好天にこだわっている。
そして、好天が、自分を息子の旋風が成長するための道具にすぎない存在だと思っていると信じ、好天を恨んでいた。
だからこそ、血縁者ではないがラストニンジャを目指すキンジに事あるごとに近づき、揺さぶりをかけていたのだ。
「僕たちは似たもの同士なんだ」この九衛門のセリフ、キンジを惑わすための甘い囁きに過ぎないものだと思っていたが、あながち間違いではなかったことがラストでわかる。
キンジと九衛門。2人とも好天の血縁者ではない弟子。
そして彼らは、大切な家族を失っている。
家族を取り戻したいという願い、そして孤独であった彼らはいつしか伊賀崎の家に居場所求めていた。
九衛門は牙鬼の血を引く者であり、彼が天下統一を目指すのは宿命であるが、キンジと九衛門の明暗を分けたのは、己の弱さを受け入れられたかどうかだったのだと思う。
キンジは仲間と出会い、己の心の弱さを受け入れたことでさらに強くなった。しかし、九衛門は心を許せる仲間という仲間はおらず、心の弱さから闇の力を求めた。
九衛門は、最期になってようやく自分の本心に気付かされる。
九衛門に対する見方がガラリと変わる瞬間だった。
これまで見てきたスーパー戦隊シリーズのヴィランの中でも、忘れられないキャラクターになった。
そして、ニンニンジャーの6人は、好天の跡をつぐラストニンジャになるのではなく、自分たちにしか切り開くことのできない忍び、新たなラストニンジャを目指す、というラストも素敵だった。
手裏剣戦隊ニンニンジャーは、家族の絆、仲間の絆、忍者を継承するということ、そして父や祖父を越え、新たな忍びを目指すという自分の道を進む覚悟を決めるまでの強き忍びたちの物語だ。