呉島貴虎と戦極凌馬について書く

※このnoteは仮面ライダー鎧武のネタバレを含んでいるのでご注意を。

仮面ライダー鎧武。それは2013年10月から2014年9月まで日曜朝に放送されていた特撮テレビドラマである。

鎧武はめちゃくちゃ魅力的なキャラが多い。

主人公の葛葉紘汰、彼のライバルである駆紋戒斗。そして、紘汰がかつて所属していたダンスチーム鎧武のメンバーである呉島光実、同じくチーム鎧武のメンバーでありヒロインの高司舞など。

1人1人に対して書いていけばキリが無い。ということで、個人的に刺さりまくったキャラについて書く。

それは、呉島貴虎と戦極凌馬の2人。

呉島貴虎について

呉島貴虎は、ユグドラシルコーポレーションの若き御曹司であり、ヘルヘイム対策の責任者だ。また、チーム鎧武に所属する呉島光実の兄である。

彼は「ノブレス・オブリージュ」を非常に大切にしている人だ。やんごとなき家に生まれ、己の立場と背負うべき責任があることを幼い頃からたたき込まれてきた。

彼は劇中で、大義を果たすためならば多少の犠牲が出てもかまわない、仕方が無い、という考えを示すが、それも「ノブレス・オブリージュ」から来ているもの。

人類を守ること、それに伴って犠牲が出てしまうこと、それらの功罪すべてを自分が背負わなければならない、背負うべきだ、そう考えている人だった。

鎧武外伝 仮面ライダー斬月では、本編の20話前後に起こっていた事件について描かれている。この物語では、彼が幼い時に仕えていた使用人の朱月藤果という女性が現れる。少年時代の懐かしい思い出が呼び起こされ、2人の恋に発展するかと思いきや、事態は思わぬ方向へ。

ここでもやはり、彼の口から出てくるのは「ノブレス・オブリージュ」。

そのどこまでも一貫しているところ、誰よりも気高いところが好きなキャラクターだった。

戦極凌馬について

戦極凌馬。彼はユグドラシルコーポレーションの研究者で、今作に登場する戦極ドライバーやゲネシスドライバー、ロックシードなど、アーマードライダーに変身するための諸々のシステムを開発した男。天才。

そもそも自分が開発したベルトに自分の名字をつけていたり、自分が変身するアーマードライダーにデューク(公爵:最上位とされる貴族の位)と名付けていたりする時点で察することはできるが、自分の才能と研究をこの上なく自負しており、独善的なところがある人だ。

彼が独善的な性格の人間になったのは、生い立ちが関係していると思っている。

彼はユグドラシルが運営していた孤児院の出身で、孤児院の中の様子については鎧武外伝 仮面ライダー斬月で描かれていたが、幼い頃から科学の才能で身を立てるしかないという状況だったことが考えられる。そして、主のお眼鏡にかなわなければどんな目に遭わされるかどうかも、彼は知っていたのだろう。

科学の研究に没頭し続け、己の才能のみを信じて生きてきた結果が、今の彼の姿。

彼の面白いところは、仮面ライダー図鑑に書かれている言葉を引用すると、「自身の創り上げたドライバーで人間を神の高みへと引き上げる」ことを目的としているところだ。

あくまで自分ではない(当初は)。そこが興味深かった。こういうタイプの人って「私こそが神にふさわしい!」とか言いそうなのに。(そういえば別作品にこういう人いたな)

そして2人の関係性

そんな彼が認めた、神になるのにふさわしい人呉島貴虎だった。

どうして貴虎のことを認めたのだろうかと考える中で外せないのは、鎧武外伝 仮面ライダーデューク。

この映画では、2人の出会いが描かれている。凌馬は貴虎と出会う以前、他の研究者から陰口をたたかれ、怪しげな研究をやっている奴と社内で噂されていたようだ。

そんな彼の研究をすごい、素晴らしいと語ったのが貴虎だった。

凌馬にとって、非常に嬉しいことで、やっと自分の素晴らしい研究を理解してくれる人が現れた!という感動があったのではないか。

貴虎と凌馬は上司と部下という関係でありながらも、1つの夢を一緒に見ていた仲間のような関係だったのだと思う。

しかし、その夢が違うことが分かった途端、彼らの関係は大きく変化してしまう。

凌馬の貴虎に、「そこまで身を捧げて世界を救うなら、世界は君に捧げられていいはずだ」「僕は君のためのドライバーを作っているんだ!」というような台詞を語りかける。この「世界は君に捧げられていいはず」「君のため」という言葉に凌馬から貴虎に向けられていた特大矢印の気配を感じたが、矢印はポキッと折れてしまい、凌馬は貴虎を完全に見限ってしまった。貴虎は自分の理想を理解しておらず、目指そうとしない人だから。

これは凌馬の一方的なもので、貴虎の方は彼に裏切られるなんてありえない!といったそぶりを見せており、心底信頼していたことが分かる。

テレビシリーズを見ている際も、「貴虎よ、あなたのその思い一方通行でしかないから!」と思って見ていて、前述した「僕は君のための〜」の病室のシーンを見ていると、「2人にも絆が深かった時期があったけれど今はもう無いのか」と勝手に1人で寂しくなっていた。

しかし、貴虎の一方通行だけでは終わらない。それが分かるのは鎧武外伝。

ここで凌馬は貴虎に対し、見限っていることを匂わせる発言をしているが、敵である供道狗界に対しては「貴虎は私が認めた男だ」と断言するシーンが出てくる。

この時「うぉぉぉぉぉぉ!!よくぞ言った!!!!!!」とペンライトを振り回したくなっている自分がいた。失望してはいるものの、認めていることに変わりはないのだ。これが分かったことで、多少なりとも貴虎の思いが報われたのではないだろうか。

一方で、貴虎から凌馬に対しての思いについて、貴虎は裏切られるその瞬間まで凌馬やその他の部下たちの思惑に全く気づいていない様子だった。

全ての続編である小説版にて、貴虎は凌馬のことを「他者の命を奪うことに何の躊躇もない邪悪な人間だ」と評しているが、それと同時に、出会った頃の瞳を輝かせながら遙か未来を夢見る純粋な科学者だった彼に思いを馳せていた。

貴虎は凌馬に裏切られ、殺されかけている。そして、それ以外のことを含めても、戦極凌馬は邪悪な人間、マッドサイエンティストと言われるのは仕方のない人間だ。

それでも、彼の邪悪な面だけではなく、出会った頃のキラキラした凌馬の姿も思い出すのが、なんとも貴虎らしい。やはりどこまでも高潔な人だ。

きっと貴虎が「私こそが神になるのだ!」という野心家だったら凌馬は彼を見限ることはなかっただろうし、あの貴虎と凌馬の戦闘力の高さを持っていたら、黄金の果実だって手に入ったかもしれない。

ただ、1つだけ疑問が残る。

他者を顧みず、己の野心を燃やしひたすら上を目指すだけの男に、凌馬は神になる資格があると認めるのだろうか。

凌馬は、貴虎のあの人柄に惹かれて、彼が神となるにふさわしい人だと思ったのではないか。そんなことを考えていた。

もしそうだとしたら、2人の思いは決して交わらず、平行線のままどう足掻いても道を違える結果になっただろう。

あくまでこれは筆者の想像に過ぎないが。


貴虎と凌馬の一筋縄ではいかない関係。

2人は、上司と部下として出会い、仲間や同志のような関係になり、その後離反し、敵対するようになっていく。

どんなに関係性が変化しても、互いに認め合っているという事実だけは決して変わらない。

そんな呉島貴虎と戦極凌馬の2人が好きだ。




















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