恐怖の愉悦「ファンタスマゴリア」と「ペッパーズ・ゴースト」|ホラーエンタメの系譜
葉が色づき木々の隙間から空が見え、肌には乾燥した風が当たるようになってきた。
そう、秋である。
秋といえば、ハロウィンだ。
そんなハロウィンの時期にぴったりなホラーエンタメ、その元祖とも言える「ファンタスマゴリア」と「ペッパーズ・ゴースト」を今回は紹介いたそう。
「ファンタスマゴリア」(Fantasmagoria)
「ファンタスマゴリア」(Fantasmagoria)は、19世紀のフランスで誕生した幻想的なエンタメショーのことだ。
幻影や幻想的なイメージを意味し、幻想エンタメとして使用された。
闇の中に置かれた物体やスクリーンにプロジェクターやランタンに当てられた光は、奇妙な影や幻影を映し出す。
髑髏や幽霊や怪物などの幻影を通した死者の舞に観衆は魅了されたようだ。
ファンタスマゴリアは多くの光学的効果の進歩によって利用可能となった。
ガラススライドや透明なキャンバスに描かれたおどろおどろしいイメージを幻灯機と呼ばれる機械で投影する。
今でいうプロジェクションマッピングの元祖みたいなものである。
ファンタスマゴリアは、19世紀末から20世紀初頭にかけて人気を博し、幻想的なエンターテインメントの一部として一世を風靡した。
「ペッパーズ・ゴースト」(Pepper's Ghost)
「ペッパーズ・ゴースト」(Pepper's Ghost)は、19世紀に発明された視覚的な幻影効果を生み出すための光学技術だ。
主に舞台演出として発展してきた。
ステージの前に巨大なガラス板が配置され、観客からはガラスがないように見えるよう調整してある。
光源はステージの後ろにあり、ガラス板に向けて光を投影する。
すると、ステージの背後に配置された物体や人物は、ガラス板を通して反射され、視覚的に捉えることができるのだ。
シェイクスピア劇の「ハムレット」でハムレットが父親の幽霊と対峙するシーンにはよくペッパーズゴーストが登場していたようだ。
鋭い読者諸君であれば、この原理がホーンテッドマンションの幽霊にも応用されていることに気づくはずだ。
ホラーエンタメにおけるテクノロジー
19世紀半ば、メディア史における革命が起きた。
カメラの登場である。
カメラは我々人間の姿を生き写し、肉眼では見ることのできない一瞬を切り取り、視覚的革命を起こした。
奇しくも、当時のテクノロジーの象徴であったカメラはしばしば魂を抜かれる装置として恐れられた。
それと同時に流行したのが「心霊写真」(Spirit photography)だ。
当時のカメラは、露光時間が長くレンズの前でしばらく静止している必要があった。
そんな原理を応用して二重露出によって生み出されたのが心霊写真だ。
19世紀は科学の世紀だ。そしてスピリチュアリズムの時代でもある。
最先端の光学テクノロジーを使った心霊エンタメ手法が流行したのは果たして偶然なのだろうか?
ハロウィンのシーズンはホーンテッドマンションに並ばれる方も多いと思う。
その際にはぜひ、「ファンタスマゴリア」と「ペッパーズ・ゴースト」を思い出してはいかがだろう。
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