毎日、メガネ屋 2021.09.12~秋の展示会に想ゥこと~
かつては"アジア最大の眼鏡見本市"だった「iOFT」
メガネ業界は秋に「iOFT」という大きな展示会が行われます。「メガネベストドレッサー賞」なるアワードが発表されるので、テレビのワイドショーなどでご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。
私が"メガネ業界"に入った20数年前の「iOFT」は、それはそれは活況でした。平成の大不況の最中であるにも関わらず、見まごうばかりの出展社と来場者で、バイヤーもアポイントなしでは買付が出来ないほどでした。
90年代後半は、日本発のメガネブランドが注目され、「コンセプトショップ」なる値引きをしないオシャレブランドを取り扱う店が大流行したのです。00年代になると少し勢いは衰えるのですが、90年代半ばからの10年間で莫大な財産を築かれた個人メガネ店のオーナーが続出しました。
そんなムーブメントなかで「展示会」はブランドの新作発表の場であり、地方の豪族メガネ店が大手を振って東京に仕入れに来れる機会でもあったので、大いに盛り上がりました。
残念ながら私はそんなバブル期に、新入り若造で下積み中。やっと少し仕事を覚えた頃には、好景気は過ぎ去っていました。
泣き言はさておき、2010年くらいからバイヤーであるメガネ店の方々が「iOFT行かない」「行っても面白くない」「行く意味が無い」と言った声が聞かれるようになり、今日に至るまで徐々に規模が小さくなっていきます。かつては「アジア最大の眼鏡見本市」と謳われていましたが、いつしかそのコピーは外されていました。香港や上海の展示会は随分前に「iOFT」を抜き去っていたように思います。
私達が育ってきたメガネ業界を、私達はもう"メガネ業界"と呼んではいけない
皆さんが「メガネを買う」と考えた時に、"ジンズ"や"ゾフ"、"眼鏡市場"を思い浮かべる方が多いと思います。この三社はメガネ業界の”新御三家”と呼ばれることもあり、かつての大手チェーンの上位三社を”旧御三家”と呼びます。何が言いたいかというと、この20年で「メガネ業界」の勢力図が一変したという事です。
そんなメガネ業界の"新御三家”の商品はPBブランドで、SPAですから仕入れのための展示会は必要ありません。展示会が衰退していく理由は明らかですね。
国内メガネ業界の市場規模は一貫して縮小していますから、"ジンズ"や"ゾフ"が絶好調な業績になればなるほど、旧メガネ業界勢のシェアは奪われていき、展示会の買付額が減っていくのです。そりゃ売れなきゃ展示会へ出展しても意味がありませんので、出展社や来場者が減り縮小していくわけです。
だからもう、私達のような弱小メガネ店が自分事のように「メガネ業界」と軽々しく言ってはいけないのです。「今のメガネ業界」は”新御三家”のものなのです。偉そうに「メガネ業界はさぁ、、、」と言っていましたが、そう言えるのは”新御三家”の人たちであり、メガネの市場規模に数字として関われている人だけのものです。自虐的ですが、”新御三家+上場上位"の人の世界が「メガネ業界」なのです。完全に旧メガネ業界とは違う世界を、ジンズやゾフに創り上げられてしまったのです。
ジンズやゾフは、既存のメガネ業界に低価格で殴り込みをかけて来たわけです。「視力測定をちゃんとやろう」とか「フィッティングをしっかりする」みたいな事は省きます。アルバイトが視力測定し、フィッティングが最初から合うような、軽量で弾性のある素材で商品開発をしています。それらの超大量生産は、中国生産との相性が非常に良かった事も成功の要因で、低価格化を物凄いスピードで実現しました。
既存のメガネ屋さんが何を言ったところで、お客様からの支持をしっかり得ており、全く新しい販路や流通を作り出し新世界を作り上げたのです。旧メガネ業界勢への配慮など微塵も感じなかったですし、してやったりと嘲笑われているような20年でした。
まずはそこを認識するところから
そんな現状に指を咥えて潰れていくわけにもいかないので、私のような零細メガネ店は何か企まなくてはなりません。なので色々とやってるわけです。そしてあわよくば、ジンズやゾフに次ぐ新しい世界を作るべくチャレンジしているのです。
私はメガネ屋ドップリの仕事人生なので、お客様のニーズを汲み上げてサービス向上を考えたり、あったら良いなと思うサービスを創り出すことを考えています。それを実現しているものもありますし、これからやろうとしているものもあります。
ジンズやゾフをやっつけてやろう!なんて気概は無いのですが、"そこそこやれるんじゃないか!"って勘違いしちゃうくらいのプロジェクトが進んでいます。
展示会の衰退とともに、私達自身のお店の新しサービス・プロダクトのあり方も考えていかないとと想ゥ秋です。
中島正貴 1978.04.10生 神奈川県在住
有限会社スクランブル 代表取締役
note.「有限会社スクランブルがやっていること」