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最近の記事

The Golem ~思考の残滓と、それに覚える親愛の情について~

 少し前からこのパズルゲームをプレイしている。今まで私がプレイしてきた中で、おそらく最も難しいパズルの一つである。  どのレベルもよく練り込まれており、常に新しい刺激を提供してくれる。ステージ数は全53面だ。一見物足りないように見えるかもしれないが、プレイしてみればこれでも十分に納得のいくボリュームである。それほどまでに一問一問の満足感が高い。ステージに含まれる要素が多く、始めこそどこから手をつけるべきか躊躇うものの、糸口が見つかればだんだんとひらめきが誘発されていく。極めて

    • Antichamber ~フェアネスとアンフェアネス~

       パズルはフェアでなくてはならない。これは大前提であり、全てのパズルが守るべき規則である。フェアネス無くしてパズルは無い。たとえどれほど面白い論理が介在しようと、そこにアンフェアネスが一欠片でも混ざればその瞬間にパズルではなくなる。  というのはまるきりの嘘である。パズルというものが娯楽である以上、面白ければなんでもよい。逆立ちすると軽くなる動物とは何か。答えはイルカだ。物理法則に反した話をするな、そもそもイルカが逆立ちをするのか、などと託つのは無粋極まりない話である。  嘘

      • 生きていた五十嵐ワタル ~読みづらい文章を書くために~

         先日パソコンを触っていたらフォルダーがあってそのフォルダーは忘れてたから何があったか思い出そうとしたのに思い出せなかったから仕方なく思い出すためにフォルダーを開いた。それでそのフォルダーには色々なファイルが入っていてそのファイルにはテクストファイルが多くてでもpngファイルとかPDFもあってpngファイルとかPDFは見ればすぐ分かるからテクストファイルは読まないと何が入っているのか分からないしだったら先にテクストファイルを見ようと思ってテクストファイルを見ることにした。それ

        • ポイントクリック式のパズルはパズルなのか?

           ポイントクリック式と呼ばれるゲームがある。怪しい箇所をクリックし、アイテムを拾ったり、パスワードを入力したりしながら進める謎解きゲームのことだ。何らかの空間から脱出することに主眼を置いたものは脱出ゲームと呼ばれる。こちらの方が親しみがある、という人も多いかもしれない。 このジャンルには名作と呼ばれるものが多数ある。The RoomやGorogoa、未プレイのゲームの名前を出すことを許せばMystやRusty Lakeシリーズが挙げられるだろう。  それほどこのジャンルを遊

        The Golem ~思考の残滓と、それに覚える親愛の情について~

          PuzzleScriptの簡単な紹介、ギミックアイデアのストック

           PuzzleScriptというものがあります。簡単にパズルが作れるゲームエンジンです。  こちらのサイトに行き、とりあえずFirst Stepsをひととおり読みましょう。ものの数分で読み終わる分量です。あとはMake A Gameを押すだけで簡単にパズルが作れます。ブラウザ上で動くので、特に何かをインストールするなどの手間はありません。  ブラウザで開くと、最低限プレイ可能なサンプルゲームが完成しています。タイトル画面はすでに用意されていますし、クリア条件を満たせば次

          PuzzleScriptの簡単な紹介、ギミックアイデアのストック

          Lisztomania ~アイコニックなスイングとイントロ~

           イントロが鳴るなり強烈なピアノをぶつけられる。五度の跳躍をスイングしながら痙攣的に繰り返すだけのフレーズだが、その単純さゆえに非常に印象的だ。一度頭に入れば最後、決して振りほどくことはできない。挨拶としてこれ以上ない出来栄えである。  この時点ですでに理解できるが、この曲はこのスイングが一つの基本になって進行していく。ドラムを聞くと分かりやすい。フレーズのはじめはかなりストレートだが、フレーズの終わりはピアノに沿ったスイングをしている。ギターやボーカルも程度の差こそあれ、ス

          Lisztomania ~アイコニックなスイングとイントロ~

          The Witness ~いつの間にか視線は上へ上へ上へ~

           Portalのコメンタリーに、プレイヤーに上を見せるための工夫を語る場面がある。  テストチェンバー10でのコメントである。プレイヤーの上にはポータルが開いたプレートがあり、そこからフリング(落下の勢いを利用し、ポータルから勢いよく飛び出すテクニック)を使って対岸に渡るのだが、テスト段階ではこのプレートはなかなかプレイヤーに気づかれなかった。そこでプレートを壁からせり出すように動かし、プレイヤーの注意を引くことにしたようだ。単純ながら効果的な方法である。  一人称視点をフル

          The Witness ~いつの間にか視線は上へ上へ上へ~

          The Looker チャレンジ攻略

           The Witnessのパロディゲーム、The Lookerのチャレンジを攻略し、“On Rails”の実績を解除しました。  配信などを見ると、初見でクリアしている人も見かけるので、相性のようなものがあるのかもしれません。精密な操作のおぼつかない人間でも、こうすればクリアできるという道標として、自分が意識した部分を書いておきます。 左クリックは押したままにする。(毎回クリックする手間を省くというより、右クリックの暴発を防ぐ側面が大きい) 右クリックは絶対に押さない。間

          The Looker チャレンジ攻略

          SquishCraft ~そのグリッドを撃ち抜いて~

           倉庫番はグリッドに支配され続けてきたし、これからも支配され続けるだろう。  事実、倉庫番というジャンルがここまでジャンルとして浸透したのは、グリッドに従属したシンプルなゲーム性によるところが多いだろう。上下左右に移動するだけというフォーマットが確立しており、プレイする際はその思考の枠内に当てはめれば簡単に手を付けることができる。ルールの抜け道のような解法も存在しない。開発をする際も、行列を使ってマスを管理する方法が基本形として存在し、まだ制作を始めたばかりの初心者も参入しや

          SquishCraft ~そのグリッドを撃ち抜いて~

          Alephant ~なぜ象はパズルを解くのか?~

           ゲームを起動すると、“Aleph is the first letter of the Hebrew alphabet, and it is generally silent. However, it can be combined with the niqqud (vowels) to make a sound.”という全体を貫く主題が紹介される。あとは若干のシステム上の表示を除き、言葉は使われない。ルールの把握もプレイヤーの実践にゆだねられる。“A word-less

          Alephant ~なぜ象はパズルを解くのか?~

          「一夜」~書き出しの組み立て~

           一人の男がふとつぶやく。もう一人の男がそれに続ける。最後に女が後を継ぐ。登場人物はこれで全てだ。  かねてよりこれを超える書き出しを知らない。などと言うと言いすぎではあるのだが、それでも特に印象的な書き出しとして私の心に残っている。一人、また一人と言葉をつなぐ。おなじ個人ではないのだから、そこには前の人間の意図せざる文脈が加わる。各々が思い思いにつぶやきながら、しかし紡がれる言葉にはよどみがない。この淀みのなさのうちに登場人物はすべて出揃い、出揃ったあとにはおおよそ各々の特

          「一夜」~書き出しの組み立て~