カリフォルニア州の貸主、新たな小規模事業者保護法の影響で数百万ドルの損失を予測
2025年1月から、カリフォルニア州で「商業テナント保護法(Commercial Tenant Protection Act)」が施行された。この法律は、小規模事業者や非営利団体を対象に、賃貸契約における法的保護を提供するものである。しかし、貸主たちはこの新しい規制が不動産市場の成長を阻害し、自身の収益に悪影響を及ぼす可能性があると懸念している。
【主な規制内容】
賃料の増加通知期間の延長 貸主が賃料を10%以上引き上げる場合、テナントに対し90日前の通知が義務付けられた。また、賃貸契約を終了する際には60日前の通知が必要となる。
運営費用の転嫁制限 新法では、貸主が緊急修繕、保険料の値上げ、固定資産税の増加、大規模改修費用などをテナントに転嫁することが制限されている。この規制により、これまでテナントが負担していた一部の費用を貸主が負担する必要が生じる。
契約書の翻訳義務 契約交渉が英語以外の言語で行われた場合、賃貸契約書はその言語に翻訳される必要がある。カリフォルニア州では、スペイン語、中国語、韓国語、ベトナム語、タガログ語などが頻繁に使用されているため、これらの言語での翻訳が必要になる。この翻訳作業には約1万ドルの費用がかかる可能性があり、誤訳が発生すると、テナントに契約解除の権利が与えられる恐れがある。
【貸主側の懸念】
商業不動産市場への影響 法律の施行により、貸主たちは賃貸契約の改訂や新たな手続きの導入に多額の費用を費やす必要が生じる。これにより、商業不動産市場全体の成長が鈍化し、賃料が上昇する可能性が指摘されている。また、貸主が新たな賃貸物件を提供する意欲が減少し、結果的に小規模事業者や非営利団体が不利な状況に陥る可能性もある。
パンデミックからの回復遅延 カリフォルニア州内のオフィス空室率は歴史的な高水準を維持しており、小売施設の空室率も主要都市(ロサンゼルス、サクラメント、サンフランシスコ、サンディエゴなど)で増加している。このような状況下で、貸主が新たな規制に対応するために追加のコストを負担するのは難しいとの見解が示されている。
【提案と今後の影響】 法律の支持者は、長い通知期間がテナントに安定性をもたらし、急な賃料引き上げや強制退去を防ぐと主張している。しかし、貸主たちはこの法案が、テナント保護を目的としているものの、実際には賃料の上昇や賃貸スペースの減少を引き起こすリスクがあると警告している。