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うつを疑うきっかけの患者さんの訴えとPHQ-9

※こちらは医療に従事する方、医療系の学生向けの記事です。
うつを疑うきっかけとなる患者さんの訴えを聞き逃さないことが重要です。抑うつに対して早期介入することで、少しでも多くの方がよい方向にように願っています。
本記事では、うつ病の早期発見のためのポイントと、2質問法のあとのPHQ-9ついて解説していきます。

うつを疑う症状


前回の記事では、2質問法を行う動機となる症状です。
うつ病は様々な症状を引き起こします。主な症状には以下のようなものがあります。このような発言を患者さんがされたときには2質問法をします。

睡眠障害(不眠または過眠):

  • 「寝つきが悪くて、床に就いてから2時間以上眠れないことがあります。」(入眠困難)

  • 「夜中に何度も目が覚めてしまって、朝まで眠れません。」(中途覚醒)

  • 「朝早く目が覚めてしまい、それ以降眠れません。」(早期覚醒)

  • 「いくら寝ても疲れが取れず、1日中眠い感じがします。」

  • 「休日は1日中寝ていることがあります。」(過眠)

食欲の変化(食欲不振または過食):

  • 「最近、何を食べても美味しく感じません。」

  • 「食事の時間が来ても全く食べる気がしません。」

  • 「逆に、食べ始めるとやめられなくなることがあります。」

  • 「ストレスを感じると無性に甘いものが欲しくなります。」

疲労感や気力の低下:

  • 「朝起きるのがとてもつらくて、布団から出られません。」

  • 「何をするにも体が重く感じます。」

  • 「いつも疲れているような感じがして、何もする気が起きません。」

  • 「簡単な家事をするのも大変で、溜まる一方です。」

集中力の低下:

  • 「仕事中、集中できずに同じミスを繰り返してしまいます。」

  • 「本を読んでも内容が頭に入ってこないんです。」

  • 「会話の最中に相手の話を聞き逃してしまうことが増えました。」

  • 「テレビを見ていても内容が頭に入ってこないんです。」

持続的な悲しみや空虚感:

  • 「理由もなく悲しくなることがあります。」

  • 「何をしても楽しいと感じられません。」

  • 「心の中が空っぽになったような感じがします。」

  • 「涙もろくなって、些細なことで泣いてしまいます。」

自責感や無価値感:

  • 「自分はダメな人間だと思ってしまいます。」

  • 「周りの人に迷惑をかけているような気がして申し訳ない気持ちです。」

  • 「自分には価値がないと感じます。」

  • 「何をしても上手くいかないので、自分はもう必要とされていないのではないかと思います。」

身体的な不調(頭痛、腰痛など):

  • 「毎日のように頭が重く感じます。」

  • 「首や肩がいつも凝っていて、痛みがあります。」

  • 「胃が重く感じたり、お腹の調子が悪かったりします。」

  • 「体のあちこちが痛むのですが、検査しても異常が見つかりません。」

自殺念慮:

  • 「生きていても仕方がないと思うことがあります。」

  • 「眠ってそのまま目覚めないほうがいいのにと思います。」

  • 「周りの人は自分がいなくなったほうが幸せだと思います。」

  • 「死んでしまいたいと思うことがあります。」


2質問法に当てはまったら重症度評価(PHQ-9)

2質問法で「はい」と答えた場合、より詳細な評価が必要です。その際に用いられるのが、Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9)です。

PHQ-9は9項目からなる質問票で、うつ症状の重症度を評価します。各質問に0(全くない)から3(ほぼ毎日)の4段階で回答し、合計点数によってうつ病の重症度を判断します。

PHQ-9の結果に基づいて、適切な治療方針を検討することができます。

特に重要な問診は「希死念慮」です
「死のうとおもっていませんか。」
「具体的な方法をかんがえていますか。」
「具体的に行動を起こしたことがありますか。」

当てはまる場合には、精神科へ緊急で紹介します。そして、精神科受診までの間に行動を起こさないことを必ず約束してもらいます。付き添いの方がいたら、その方に見ていてもらうようお話します。

・日本語版のPHQ-9
https://jpsad.jp/other_work/research-2012/files/jpsad_phq9.pdf

・緩和ケア病棟入院時、うつ病スクリーニングとしてのPHQ-9の有用性の報告

・Web上でクリックしてPHQ-9を評価(英語)

うつ病と診断したら原因を探る

うつ病の原因は複雑で、単一の要因ではなく、複数の要因が絡み合っていることが多いです。主な要因には以下のようなものがあります:

  • 慢性的な身体疾患

  • ストレスフルな生活環境

  • 脳内の神経伝達物質の不均衡

  • ホルモンバランスの乱れ

  • トラウマ体験

  • 薬物やアルコールの乱用

  • 遺伝的要因

内科の外来であれば2次性のうつ病を考慮して以下の疾患について問診します。内科でのスクリーニングをしつつ精神科へのコンサルテーション、紹介を考慮します。もしも、自殺企図などの発言があるようでしたら、緊急で精神科に紹介することもあります。

これらの要因が複雑に絡み合って、うつ病の発症に関与していると考えられています。うつ病をきたす疾患がないか確認します。


「まもろうよ こころ」 厚生労働省

ご自身の症状が心配でこちらの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。悩みがある方・困っている方は「まもろうよ こころ」という電話でお話、SNSでお話できることができます。


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