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結局、「盗(とう)」は何が凄かったのか?
※出演者敬称略とさせていただきます。
2024年3月16日(土)〜17日(日)にTBS赤坂BLITZスタジオで開店されたTBSラジオ『脳盗』から生まれた、音を立てなければ“盗んでもいい”ショップ『盗(とう)』について書きたい。
TBSラジオ「脳盗」とは?
そもそもTBSラジオ「脳盗」とは、大人気Podcast、「奇奇怪怪」のTaiTan(Dos Monos)と玉置周啓(MONO NO AWARE)がパーソナリティの「リスナーの大切な可処分時間を盗むような味わい深い珍品を紹介する“可処分時間猫糞ラジオ”。
このラジオが、まあ面白い。
パーソナリティのトークが普通に面白い
まず、TaiTanと玉置周啓の掛け合いが普通に面白い。TaiTanがボケるとすぐさま玉置がツッコみ、それに対してTaiTanが笑う。引き笑いだったり、「カッカッカッ」と笑うその笑い方もまた耳心地が良い。掛け合いのテンポも早い。
番組企画が面白い
番組の企画も面白い。例えば、「脳盗王」という企画では、リスナーから「リスナーの大切な可処分時間を盗む音声=脳盗」を募集し、最も脳を盗んだ人を脳盗王とするという企画。自分も聴いていたのだが、脳を盗まれる投稿ばかりだった。そして、R-1グランプリで優勝を果たす前の「街裏ぴんく」が漫談で「初代脳盗王」に輝いた。
しかし、これは芸人のようなラジオではなく、毎回、ヒットしているコンテンツや何気なく世の中で起きている事象について感じたことを持ってきて、それをテーマに掘り下げていく。「それがなぜ起きているのか?」「その事象は他にどんなことに影響があるか?」「抽象化してその事象から学べることは何か?」などを二人の視点で深く考えていく。
毎回、何かしら気づきや学びがあり、単純なお笑い的な面白さだけではない、まさに耳を思わず傾け自然に思考を巡らせてしまう(=「脳をコンテンツに盗まれてしまう」)面白さがそのラジオにはある。
番組コンセプトがしっかりと練られているからこそ、一本の軸があり、面白く、企画の幅が広がるのかもしれない。
高いデザイン性のビジュアルアートワーク
また、ジングルや番組のロゴやビジュアルも他のラジオとは違う高いデザイン性やアート性がある。
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私の感覚に過ぎないが、ラジオ局の人は見た目にこだわることがすくないと感じることが多い。その中で、ロゴやアートワークに至るまで考えられていることにも深く関心する。ラジオ番組の予算が限られる中で、ここまでできるのは、TaiTanのクリエイティブディレクターの経歴や人脈に起因するものなのだろうか。
イベント「盗(とう)」
そのTBSラジオ「脳盗」がやったイベントが「盗(とう」である。
どんなイベントかというと、一言で言うと
「音を立てなければ“盗んでもいい”ショップ」
TBS赤坂BLITZスタジオ内に「ショップ」のセットを組み、そのセット内に、パーカーやTシャツ、靴下などの番組オリジナルグッズが散りばめられており、参加者は制限時間内に音を立てることなく盗んで帰って来れたら、そのグッズはタダで手に入るというもの。
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周りに設置されたマイクがその鈴の音を容赦無く拾う。
このイベント、4時間待ち。
盗めたらタダでグッズがもらえるとはいえ、時は金なりというように、4時間かけてこの体験をしたいという人がめちゃめちゃいたのだ。
並んでいる時には、「こんだけ並んだんだから盗めなかったら何をしてきたんだ!」と気分は泥棒の緊張感そのもの。(泥棒したことないから知らんけども)
私はしっかりとロングTシャツを盗んだ。
大体、盗めた人は半分半分くらいだったと思う。
今日の知見
通常のラジオイベントからはズラした企画性
一般的なラジオイベントといえば、公開収録やニッポン放送のイベントのように番組の「究極の内輪ネタ」をぶち撒けるイベントのようなものが多い。
正直、ニッポン放送のイベントのようなものがラジオイベントの最終着地点だと思っていた。もちろんオードリーのオールナイトニッポンの東京ドームはものすごかったけど。
だが、この「盗(とう)」は新しいラジオイベントの形を見せてくれた。ラジオの音声という特徴と番組のタイトル「脳盗」にかけた体験型のイベントは今までなく、また「盗む」という視点も新しい。何もかもが新しい。
また、窃盗という犯罪がなくならないように「盗みたい」という欲求は人間の隠れたインサイトである。
それを見事に捉え、ラジオ番組と繋ぎ合わせて合法の場で解放させた。
イベントという点でも新しいし、それがラジオのイベントだったという点でも、こんなやり方があるのかと非常に勉強になったし、ラジオにもやりようがあるなと深く関心した。
また「盗」終了後の「脳盗」でTaitanが言っていたのは、
「これはSNSで行われるような単純なプレゼントキャンペーンをリアルな場で企画に落とし込んだ形である」(意訳)
(もしかしたらニュアンスが異なるかもしれない)
往々にして、営業案件では社名を広めるためにSNS上でプレゼントキャンペーンを行うことがある。ラジオの広告提案でもプレゼントキャンペーンを行う提案をすることはよくあるが、正直、「はいはい、またこれね」とうんざりしてくる。
少しプレゼントキャンペーンとは異なる気もするが、SNSでのプレゼントキャンペーンはリポストをすると抽選で当たるからみんなが拡散するが、「盗」は抽選などはないが「企画の面白さ」と「盗めたという嬉しさ」で参加した人はこぞって商品をSNSに投稿する。でも、当たる人(=盗めた人)と外れた人(=盗めなかった人)がいる点では同じかもしれない。
今回は、おそらくスポンサーが、
「fruit of the loom」なのだと思うが、ここは確かではない。ただ、オリジナルグッズが「fruit of the loom」のメーカーのもので、そのグッズを盗るのに成功した盗人達がこぞって写真にあげていた。
また、この座組は販促キャンペーンにも使えるのではないか?と思った。
つまり盗めなかった人は、「4時間も並んで盗んで帰れないのはさすがに…」と考えると思うので、購買ショップをイベント後に設置しておくと実は商品が手に入るということにしておけばこぞってみんな買っていくのではとも感じた。
ラジオ番組から派生する企画の上手さ
上記と若干被るところがあるが、やはりラジオ番組がやるイベントとして繋がりがある(=ラジオ番組とリンクしている)のがこの企画の見習うべき点かなと思う。
この「脳盗」というラジオ番組が、このイベントをやる意味、やる理由が分かるし、ラジオには欠かせない「マイク」を使ったイベントということも納得感がある。その納得感がなければ、人は集まらない。このラジオ番組がやるから面白いのだ。
そして、高いクオリティの美術セットに囲まれることで、「脳盗」というラジオ番組の世界観を肌に感じることができる。
そして、これは多分、最初のラジオ番組としてのコンセプトがしっかりしているからこそ、さまざまな展開に広げることができるのだろう。
クリエイティブへの力のかけ方
何より驚いたのが、美術やセットのクオリティだ。
TBSテレビがあるだけに、美術セットのクオリティは非常に高く、それはキー局の中で唯一、テレビ局があるTBSラジオにしかできない。
前述した通り、ラジオは今、潤沢に予算があるわけではない。
そのため、ディレクターや作家、タレントギャラだけの最低限の予算でしかできない番組も多い中で、このイベントを実現し、しかも外見(=世界観づくり)に力をいれるのは凄いことだ。
細かな作り込みを見ても、単純にバラバラとダンボールが置かれていたりするだけでなく、その段ボールにはしっかりとロゴが入っているし、自動販売機のセットなんかも細々見ているとおもしろい。
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一方で一つ一つの小道具はお金のかからないものも多いように思える。
もちろん、イベントとしての予算があるのかもしれないが、それでも通常なら公開収録という短絡的なイベントにしてしまうこともある中で、ラジオ番組がやるイベントとしては稀に見る企画性の高さとアートワークの作り込み、そしてゲーム性の高さだったと思うのだ。
最後に
盗むから「タダ」で商材がもらえるわけで、このイベントの参加者はお金を払わない。このイベントの収支は一体どうなっているのだろうか?というのが僕の疑問だ。やはりスポンサーからの協賛なのだろうか?