雑感|【Return of the Obra Dinn】これでキャラ語りができるとは
幕間をおいしくしゃぶれる
(ネタバレあり)
前回はネタバレを防ぐ目的もあり、あえてストーリーとキャラクターについて触れませんでした。ここでは、ネタバレを解禁しストーリーの所感と魅力的なキャラクターたちを語っていきたいと思います。
全体の感想を述べている前回はこちら:
1|ストーリー
前回の冒頭、「世界観」でも書きましたが、もう商品紹介ページを見ただけで面白くないですか。そもそも保険調査官ですよ、主人公は。刑事でも探偵でも科捜研でもなく、保険調査員。60人一人ひとりの死因を調べていって最終的に遺産分配と罰金の確定をする大変な仕事です。それなのに、帳表となる死因の一覧には「恐ろしい怪物のトゲで殺された。」とかシラフとは思えない報告してしまう人なんです。
『オブラ・ディン号』では悲劇と言うにはあまりにもファンタジーな出来事が次から次へと起こります。その見せ方がサスペンスの展開としてよかったですね。
ゲームシステムのチュートリアル「X 終幕」を終えて、いよいよこの舞台の謎に迫る!と思った矢先、クラーケンが襲ってくるのはいい意味で裏切られました。もっとシリアスな人間同士のイザコザによる破滅だと思って進めてましたから、「そんな物知らん」と言わんばかりの圧倒的な暴力で自分までビンタされた気分になります。
時系列順に開放されないのは、物語として長く楽しめます。過去のシーンが再生され始める度に、次は何が起こるんだ?という期待がこのゲームにのめり込むためのいいスパイスになっています。
謎の貝殻を巡る災厄の物語を瞬間瞬間で切り取っているため、プレイヤーでは見られない、その間の空白期間にあった出来事や、そこに至るまでの変化を追いたくなります。
2|キャラクター
その行間を追いたくなる理由が、この舞台に登場させられる悲劇の60人にあります。最初はパッと見誰が誰だか全くわかりませんでした。このヒゲの人どのヒゲの人よ…とか、この人どっかで見たな…とか、中国の人たちの見分け付けさせる気がないだろ!とか。
でも段々とシーンを進めるごとに、不思議なものでしっかり覚えてしまうんです。特徴的な最期を迎えた人は特に。
そればかりか、「この人がソロマン・サイドでこの人が多分レンフレッドだから残りの二人はさっきのシーンと合わせて…」とおじさんロジックパズルをしている内に段々と愛着すら覚えてしまうキャラすらいます。
この呪われた船では同時多発的に事件が起こることなどザラなので、主人公が過去のシーン降り立った時、歩いてみると意外なほど広い空間だったということもあります。そうなると当然、ワンシーンの登場人物も自ずと増えるわけで、その一人ひとりのリアクションをついつい見て回ってしまいますね。
過去シーンの再生中主人公以外一切動かないですが、人々の表情や動きはよく表現されており、少しずつその人の人となりというか、行動原理が見えてきます。勇敢な人、おっとりした人、臆病な人、乱暴な人、数々の人間臭いリアクションが確かに「そこにいた」ことを伝えてくれます。
窮地に立たされた時に、非戦闘員までもが立ち向かう様は胸を撃たれますね。この少し前に助手をやられているからこその一撃。細部にドラマ性を感じます。
ストーリーははっきりしない部分や謎は残されたまま、幕が下ります。ここまで人間の描写にこだわっている作品なのできっと具体的な設定は決められているでしょう。そういった裏設定についてまだまだ考えたくなるような良作でした。
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