ゲーム感想|【大神 絶景版】地を駆け、筆を走らす神話活劇
知らざぁ言って聞かせやしょう
(ネタバレあり)
今回は名作和風アクション『大神』のリマスター版『大神 絶景版』を語ります。やっぱ新年一本目はめでたいゲームがいいなあ!ということできっかけをいただけたので手を出しました。
…という時期はとうに過ぎてしまったのですが、当初イメージしていたよりもかなり骨太でした。年明けから少しずつ進めてようやくクリア。"名作"と言ってもその響きに劣らないほど、ギュギュっと魅力がつまった作品です。
プレイヤーは、白いオオカミ「アマテラス」となり、相棒の「イッスン」を頭に乗せ、日本のような「ナカツクニ」に巣食う悪鬼羅刹をビシバシしばき倒して回ります。
1|グラフィック:一筆入魂
<動く動かす絵巻物>
いきなり見た目の話かよ!ってところですが、この作品のテーマである"和"がふんだんに画面から伝わってきます。色彩が日本の伝統色ベースだったり、黒は作品のキーである「墨」。ポリゴンからは、日本神話などの武骨さを感じるかもしれません。
現在から数えるとそれなりに発売から年数がたっているのですが、それでも「絶景版」の名に恥じない、どこを切り取っても画になるゲーム画面が、「大神」の魅力の一つでしょう。
ところどころでアマテラス行く手を阻む敵が出てきた時、絵巻の一片が、どこからともなくシャッと表示される演出があります。ここもスキなポイント。
この時の絵と文字。絵巻物なんて美術館ぐらいでしか見たことがありませんが、間違いなく「ゲーム演出が表示される」じゃなくて「絵巻物を見ている」という表現がしっくりとくるほど書き込まれています。
今もどこかの蔵に眠っていて、頼めば広げて見せてくれそうな、現実にありそうな感覚。
おぽのは昔っから妖怪とか、物の怪とか怪異とか、そっち方面の話もスキなので、これだけでもテンションが上がります。いやはや、風流さすらある。
場面場面でしっかりと色の雰囲気が変わるんですよね。アマテラスの奥義である筆しらべの水墨画感、それぞれの力をつかさどる十ニの神との対話の神々しさ、タタリ場という敵の領域に踏み入れた時の灰色。
美麗なグラフィックがとずっと推し出されるのではなく、場面やエフェクトの出し方が切り替えられる、ただの絵巻物ではないゲームならではの演出です。
<必殺の筆跡>
さらさらっと書いてしまいましたが、特徴的にしてこのゲームを象徴するアクション、「筆しらべ」についても語りたい。
オープニングからして筆がキーなのは明らかで、たびたびプレイヤーは攻略のため、この「筆しらべ」をすることになります。
敵の防御を崩したい!
敵がひるんだから追い打ちしたい!
あそこに橋を駆けたい!
そんな時、ほんのちょっとの時を止めて、ささっと筆を走らせる。
時には繊細に、時には大胆に、思うままに筆で書き起こすと、止まっていた世界が動き出した時、アマテラスの神力によって敵は真っ二つだわ、水は湧き上がるわ、隣のおじさんが燃えてるわで爽快です。
要所要所でこの筆しらべによるQTE(クイックタイムイベント)もあるのですが、普段煩わしさを感じるQTEも、このアマテラス様の筆しらべにかかれば、気持ちよくこなすことができます。
シャッシャッと筆で書きなぐる瞬間がたまりません。
2|世界観:筆舌に尽くし難く
<十重二十重の和の世界>
何考えてるのかわからない主人公の白いオオカミの名前が「アマテラス」で、相棒の玉虫の笠をかぶった一尺に満たない小人が「イッスン」。
見ての通り『大神』は、日本神話や御伽噺、歴史上の伝説をモチーフにした世界とキャラクターが織りなす物語です。封印より復活した「ヤマタノオロチ」や大妖怪どもを倒すため、一匹と一人が北の極寒から南の大海原までかけていきます。
アマテラスと一緒にいるイッスンが、だれとも会話ができない白いオオカミの代わりに会話をしてくれます。
江戸っ子気質で、生意気。美人に弱くて、へそ曲がり。けれどアマテラスと一緒にいてくれる心強い相棒、兼ツッコミ役。
いいところゼロの書き方をしちゃってますが、な~んもわかっていない"駄犬"プレイヤーの導き手であり、背中を押してくれる存在なのです。
アマテラスは、オオカミといえど割と自由気ままな犬のようで、プレイヤーが動かしてないときはあくびして寝っ転がったり、画面の端でゴロゴロしてたり、真剣な話をよそ見して聞いていたり、どうも気の抜けたところがあるので、イッスンが「ポアッとすんじゃねぇ」と喝を入れてくれて動けているところもあるでしょう。
それどころか、道行く人を手あたり次第咥えたり、岩でもなんでも頭突きしてじたばたする始末。
いやぁ、アマテラス、唸り声や、雄たけびはカッコいいんですけどね…。
グラフィックの所でまじめな話に見せかけたのですが、緩急が激しい世界。基本ゆるゆる、大舞台ではビシッと決めるそんな世界観です。そうそう渋格好良すぎない和風ってこの雰囲気だよなぁ!
アマテラスとイッスンは水魚、金石、断金、肉まんとタレ。
この世界を織りなすほかのキャラクターたちにも触れたいところですが、それは別の折に。
3|BGM:乱筆乱文ご容赦願う
<和楽器の遺伝子>
たとえゲーム楽曲に明るくなく、作曲者に詳しくなくとも、『大神』から奏でられる音楽は語らずにはいられません。それぐらい良いBGMがそろっています。
和楽器ベースで、和の音楽…だけではなく、そこからガラッと切り替わる壮大な音や、場面の昼なら昼の宵なら宵の場面に合わせた曲がナカツクニに鳴り響きます。
ここぞというときに、ビシッと決めると世界観の項で書きましたが、それは音楽にも言えます。ゲームがお好きなら一度は聞いたことがあるかもしれない『太陽は昇る』…が展開と合わせて名曲なのは言わずもがなであります。絶対負けないってこういうことだなぁ。
短いながらもこれもっと聴いていたい!と思ったのは『大神降ろし』でしょう。聴ける回数が限られていますが、大地が復活する瞬間と言いましょうか、その時の演出、色彩も相まって、心躍る一曲です。聴きたかったのに両島原北の賽の芽の件は許さんぞ…。
少し他と毛色が違うのが『待ち構える大妖怪』。流れるのは大ボス直前の場面なんですが、琵琶の音色が格好いいんですよ。「ベベン…」と静かな中に弦の音が響いて、戦いの前の緊張感を味わえるのと、妖怪が来るぞと身がしまる思いになれます。
お話が一区切りし神木村で流れる『神木祭り』がスキです。そこまでの道中の苦労や辛い思いがどこかへ吹き飛ぶような祭囃子の清々しさ。御伽噺風に言うならまさに、「めでたし、めでたし」。ずっと聞いていたくて意味なく村中を駆け回りました。
細部までのこの世界にのめりこんでしまうぐらい、良い世界、良いアクションゲームでした。さる方の記事を読んでから、そういえば遊んでなかったなと実際遊んでみましたが…どっぷり楽しめました。
ここまでは遅筆で困ったもんですが、一度書き始めてしまえば、意到筆随てぇもんで、スルスルと進みました。
かずもん さん、『大神』を遊ぶきっかけをありがとうございます!