ゲーム感想|【FE無双 風花雪月】②二つのバランスを保つには
両雄、並び立たせる
(ネタバレあり)
無双アクション✕シミュレーションが色濃く現れた『FE無双 風花雪月』。前回ではそのスピンオフたる世界観の話や追加キャラクターたちに対して言及しました。せっかくのコラボ無双ですからそのゲーム性について今回は良いトコ悪いトコ書いていきます。
前回はこちら:
1|ゲーム性-タクティカルアクションの両輪
無双シリーズを遊んだことがある方はイメージできるかと思いますが、コラボでも一番の特徴になるのは簡単操作で群がる敵を一掃する、俗に言う「無双アクション」です。
敵がわらわらと現れる性質上、戦争をテーマにした作品と相性がよく、コーエーテクモゲームスと手を組んだ本編『風花雪月』は、まるでこのコラボを作ることまで見越していたかのような大河ドラマでした。
雑兵共をバッサバッサとなぎ倒し、プレイヤーだけに許された圧倒的パワーで戦場を駆け巡る爽快感は本筋のFEシリーズではまず得られない経験です。
(正確に言うと風花雪月の二つ前、ifが出たときにも無双とのコラボ自体はしてるんですけどね。今作は一つの世界でまとめられているということが大事。)
まずアクション面について、遊びやすさ、わかりやすさに特化した操作性を実現するために攻撃に関するコマンド入力は極力無双シリーズに沿うように作られています。
これは良い面もあり悪い面もあり。ユーザーにとって動かしやすさは良いことしかないのですが、ではそれがゲームとして面白くなるかというと…場合によります。
アクションゲーム界隈では侮られがちの無双タイトルですが、よくよく考えると他のアクションゲームだって大体の攻撃はボタン連打です。なのになぜ?
それはコマンド入力による駆け引きの少なさだと考えています。
「攻撃のミス≒こちらのダメージ」がバトルアクションの基本であり、ミスした際のリスクに対してプレイヤーは取るべきアクションを判断しながら遊びます。
しかし無双ではミスしたとてそれきっかけでプレイヤーを止めることのできる敵がまずいません。それは敵を倒す爽快感とのトレードオフによるものです。だからこそ、面白いのに物足りないという矛盾めいた気持ちが湧きやすいと考えます。
ですが。
言われっぱなしではないのが無双のいいところ。ことコラボ無双に至っては、コラボ先の素材の良さを活かしつつ無双の楽しさをこれでもかと表現してきます。
『無双風花雪月』では、それがSRPG風のマップ画面に現れてきます。
画面上の味方ユニットに対し行動指示を与えると、リアルタイムストラテジーのごとく味方が攻撃、防衛、援護、工作なんでもやってくれます。
プレイヤーは戦場の複数のキャラクターを切り替えながら遊ぶので、北側の戦線を押しあげつつ、中央の砦を防衛し、その隙に手薄になった南から一部隊に裏取りをさせる…なんて軍師ごっこを楽しむことができます。
難しいことをやっている気になる。盤面を自分の思い通りに動かす。FE本編のゲーム感想でよくこの言葉を使用していますが、この「軍師ごっこ」こそがFEの本質かなと感じています。
マップ画面と戦闘画面は両作の強みを全面に打ち出した、良いゲームルールですよ。
2|UI/UX-二律背反
味方ユニットに事細かな指示を与えなくてもある程度ゲームは進みます。しかし、指示を与える場合はある程度の煩わしさと向き合わねばなりません。
指示のためアクションゲーム中にちょいちょい中断が挟まるわけです。それはインターバルにもなりますが、爽快感の途切れにもなります。
FEよろしく彼我の装備武器の相性が存在しており、剣は斧に斧は槍に槍は剣に強い、というお馴染みの三すくみを意識して動かすと自分が操作してないときでも味方は十分に実力を発揮してくれます。(弓篭手魔法の三すくみもあります。)
遊び方はある程度自由であるものの、こまめな指示出しをしたほうが、指示を出さないよりもストレスが少なく遊ぶことができる作りのため、人によってポーズをかける頻度が増えていきます。
前述の軍師ごっこのゲーム体験を得るには、このようなキャラの切り替え、そして指示出しが大きなウェイトを占めていると言ってもいいでしょう。
せめて戦闘画面で使用できる大雑把な全軍指示のような機能が備わっていれば、キャラを絞って遊ぶ人含めてほとんどの人がその体験ができるかもしれません。
ただそうするにはコントローラーのボタンが足りませんね…。そしてそれを克服しようとこれ以上使用するボタンやその組み合わせが増えると、その煩雑さが今度はアクション側に、ノイズを混ぜることになりかねません。
結論として「シミュレーションができるポーズ画面と、アクションができる戦闘画面を行き来する」というデザインは、双方の楽しさを少しずつ削ぎつつ両立させるための設計だと考えられます。悩ましいなあ…。
3|スピンオフ-風花雪月と無双風花雪月と
原作への配慮ともとれるような、スピンオフだからこそできるif展開が三つのルートそれぞれでしこりが残る終わり方をします。
これについてはよくわかります。仮に無双のルートが、全てが良い方に転ぶというシナリオだった場合、じゃあ先生は何だったんだ…となりかねません。
どちらの道でも一長一短、というのが落としどころだったのだと思います。
スッキリしないというか謎が残るというか歯に物が詰まったような結末というか…ゲームの爽快感に相反してシナリオでは一応の決着、といったところまでしか描かれませんでしたね。
原作を知ってるからこその虚しさもあり、そのギャップの面白さもあり。本編と無双で表裏一体となる印象でした。そのため、これ単体で完結しているシナリオとはいえ、どちらも持っていることが重要な作品だと言えます。
もう一つのフォドラ戦記である本作。ただのファンディスクにはとどまらないほど、様々な視点が取り込まれている作品でしょう。
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