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ゲーム感想|【Terra Nil】自然開発シミュは「考える」がキーワード

からっぽになった地球で


(ネタバレあり)
環境汚染が進みすべての生命が息絶えた地球が舞台の、サンドボックス系自然開発シミュレーションです。寒帯、熱帯などステージがあり、その土地の気候に合わせた様々な動植物を蘇らせることで次のエリアに進むことができます。ボリュームはそこまで多くはないですが、プレイヤーの考えることは多く、その触りやすさから時間を忘れて遊び続けてしまう魅力があります。


1|ゲーム性

自然を再生させるためのプロセスはわかりやすく三段階に分けられています。大地や海から毒素を取り除き、植物を復活させ、動物たちが帰ってくればクリアとなります。クォータービューのマップを見下ろして、多種多様な機械を配置していくのですが、それぞれにシミュレーションゲームらしくコストが設定されています。(コストは難易度によって増減します。)

何をすればよいのかは全部ガイドブックに。

面白いのは、自然の再生プロセスの中でわざと破壊をする必要性があるという部分です。都市開発系のゲームはおおよそ街づくりができれば、そこをベースとして発展させていけばよいのですが、『Terra Nil』はせっかく広げた花畑などを燃やす操作が存在しています。なんでそんなことをするのかというと、それは灰を作り、土地に養分を与え、さらに大きな植物を育てるためです。より良い環境がより多くの動物を呼び戻すのです。

オーバーテクノロジー装置がいっぱい。ソーラービーム発生装置。

広範囲にわたり水を撒いて草原を作り出してくれる装置など、便利な設置物が用意されています。しかし舞台となる大地はランダム生成の上、当然平地凸凹で海岸はガタガタなので、端っこの土地タイルが再生できなかったり、ところどころ歯抜けになったりしてしまい、景観を整えたい人にとってはもどかしい部分があるかもしれないです。おぽのは神経質なので、ちょびっと残ったタイルなどすごく気になってしまうタイプです。

しかし、うまいこと環境を発展させるとその問題が解決します。そのカギは「温度」と「湿度」、「土壌汚染度」にあり、プレイヤーはこれについてもコストの許す限り干渉することができます。熱帯であれば高温多湿、寒帯は低温低湿のようにその土地にあった温度と湿度に近づけていく流れで、いくつものイベントが発生するようになっています。渡り鳥が戻ってきたり、岩に苔がむしたり、オーロラが見えるようになったりします。

まばらな茶色タイルは全部自然にお任せ。

そして上の問題を解決するため目指すべきは「雨」や「雪」を降らせることです。降り始めるとマップ全体に良い影響を与え、どうしても再生できなかった場所の毒素が取り除かれ草原へと姿を変えます。最後は自然の力がプレイヤーのできなかったことを達成させてくれるのです。

もっともこのゲームが良いところも紹介します。

そんなところに残ってたの…?

とんでもない機材の数々を大地に並べて環境の復活を進めていくのですが、最後に立ち去るとき、自分が配置した装置すべてを回収してようやくクリアとなるようになっています。この回収作業がなかなか面白い。便利だからと言って遠めに置いた装置が回収困難な場所だったなんてこともしばしば。立つ鳥跡を濁さず、でもないですが自然を取り戻すゲームで人工物を回収するという特徴は、テーマと非常にマッチしていてゲーム性に優しさを感じました。


2|BGM

ゲーム全体にピアノを基調とした穏やかなBGMが流れています。リラックスできますが、それが単調にならないような工夫が存在しています。

こちらが自然に対して、森を生み出したり、火入れを行って草原を焼き払ったり、何かしらのアクションを行うと、BGMがそれに合わせて変化するようになっています。全体的にまったりとしていて夜中にやっていると眠気を誘われますが、BGMはずっと聞いていても心地が良い。

心地が良いといえば、SE周りも良いです。土地が再生したとき、ただの草原が森や湿地に変化したとき、雨によって大地の毒素が取り除かれたときなど、ポコポコとSEが蘇るタイルの分だけ発生します。このSEはぜひ遊んでみて感じてもらいたい部分です。


3|メッセージ性

あまり深くは語られませんが、破滅した地球にも間違いなく人間が住んでいた形跡があります。このゲームは現状4面(+裏面4面の計8面)ですが、一番対処に困るのが最後に到達する「大陸」エリアです。

水没したビル群らしきものがあり、土を掘り起こすと地震が発生します。地震発生後に待っているのは、旧人類が残した科学研究施設から漏れ出た放射能汚染です。この汚染が最も厄介で取り除きにくい。

BGMも不穏な感じになる…。

コンクリートの建物を土台にして放射性物質除去装置を配置していくのですが、当然毒が広がる空間には、置くことができないので外側から少しずつ切り崩して発生源に近づく必要があります。

この作品にはゲームとしての試行錯誤と、作品全体のテーマを加味した自分の環境に対する考えを今一度改めて考えさせてくれる側面があるかもしれません。とはいえ今を否定しているわけではないので、現実については一切を気にせず、ヒーリングゲームだと思って遊ぶのももちろんありです。


何よりもこの作品からのメッセージを感じる部分が、利益の一部が実在する自然保護団体『Endangered Wildlife Trust』へ寄付されることになっているという点。こういった現実への取り組みも面白いですね。

この作品はサクッと遊べる手軽さと奥深さが両方あります。

これGW始まる前に感想書きたかったな…。

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