ゲーム感想|【TOEM】鮮やかなモノクロ写真アドベンチャーにどっぷりと
はじめてのだいぼうけん
(ネタバレあり)
『TOEM』は、おばあちゃんから譲り受けたカメラを片手に、リュックを背負ってバスに揺られて小さな冒険に出かけるアドベンチャーゲームです。手書きのイラストレーションとモノクロの世界ですが、それはもう、優しくて鮮やかな世界が広がっていました。
おばあちゃんがその昔に体験した、「トーエム」を探すためプレイヤーは森や海や都会や山に向かいます。
この作品を包むやさしい空気にあてられて、おぽのの毒気は抜けました。
1|ゲーム性 − あの子の目線になって
ジャンルとしてはアドベンチャーで、「トーエム」を探す道すがら、プレイヤーと出会う登場人物たちの悩みやお困りごとをカメラを使って解決していきます。
見下ろし視点のマップを練り歩きながら、手に持ったカメラを構えると主観視点の世界に切り替わります。システムに合った俯瞰⇔主観の切り替わりが面白い。
俯瞰視点でマップをぐりぐり動かして、建物の陰に隠れているものを見つけたり、主観視点からでしか見えないところをのぞき込むことで、謎解きのヒントが得られたりします。
やってることは「頼まれごと→写真を撮ったりして解決」という単純なのですが、世界全体にちりばめられた小ネタ…というか遊び心が、好奇心を刺激してきます。
「トーエム」を探すのが主目的なのですが、まっすぐとしたストレートではなく、あっちフラフラこっちフラフラとちょっかいかけながら気の向くままに練り歩けるのが、まだ幼そうな主人公とマッチしていて本当にいい。世界が優しさでできてます。
2|世界観 − 瞬間を切り取る
冒頭にも書いた通り世界はすべて白と黒、モノクロなのですが、材質とか温度とかがしっかり伝わってきます。色すらも脳内で保管してしまうかも。
各エリアでお悩みを解決した数が一定量に到達すると次に進める、というのですが、その判定がスタンプラリー風なんです。解決したらスタンプ一個。所定のページの好きなところにポン、と自分で押せるのです。
冒険、といったものの所詮バスで行って帰れる距離。乗り継ぎながらも目的地の山頂までそんなに時間はかかりません。カメラを向けると手を振ってくれるサル、特に何かに追われるでもなく、やられてもせいぜいちょっとした意地悪レベル。こっちだってちょっとしたイタズラができます。
この感覚、サマーキャンプとかオリエンテーリングとかにそっくりです。
カメラのシャッターを切るのがたまりません。
カメラの機能はこの「冒険」を経ていくことでどんどんと増えていきます。はじめはミッションをこなすためと思ってたのに、気が付いた時には、なんとなく撮りたいと思ったものに向かって撮影ボタンを押すようなっているんですよ。
登場するのも擬人化された動物だけではなく、ロボットや、怒鳴り散らしてくる新聞社の社長や、ミニゲームを仕掛けてくるお化け、普通の人間、それからタト、などシュールなキャラクターが大勢出てきます。
3|音楽 − 一瞬へのこだわり
SEもいい。
(BGMから話したいと思ったのですが、そちらはPVで視聴したり、購入いただいてですね…。)
SEもいいんですよ。椅子に座る時の音、ベッドに腰かけた時の音、ペットを撫でた時の音、サンダルを履いた時の足音、絞ってる時の音、シャッター音、口笛、キラキラ、トーエム。
聴きなれた音が聞こえるときもあれば、そんな音が出るの?といった不思議な音まで。
このゲーム基本的にBGMは無音なので、こういったSE周りがとても印象に強く残ります。足音なんかは特にずっと聞くことになります。しかも靴の種類によって音を変えてくるこだわり。
コスチュームシステムがあって、靴だけでなく防止や服装もちょっとずつ変更できます。ちょっとした能力付きのものから完全に用途不明のものまでさまざま。ものによってはゴムの音とかそれに合った音に変化するんです。
BGMだって世界観を壊さないよう、「ハイキングレディ」から好きなBGMを再生するという設定。ステージが進むごとにBGMの種類は増えていき、こっちから再生する音楽を指定しなくても、遊んでいるとたまーに主人公が勝手にBGMを再生してくれるので安心。
一時間ぐらい遊んでると、「休憩も必要だよ!」ってゲームからアラートが来ます。そういえば昔はちゃんと時間を守って遊んでたなあ…。
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